仲間
うぅ・・・
俺はゆっくりと目を開け、体を起こす。
どうやらここは医務室のようだ。
視界はすぐに遮られた。
「ディベル〜!!良かったよぉ〜〜!!」
抱きついてきたのは同じ部隊のヘルミナだろう。
それ以外には思いつかない。
「すまない。心配をかけた。」
ヘルミナは冷静になったようでそっと離れる。
「2日間も寝たきりだったんだよ!初日なんて意識なくて心配したんだから!!」
コンコン
心配が限界突破したようでヘルミナの言葉が止まらない。
するとドアをノックする音が聞こえる。
「どうぞ。」
入ってきたのは全身毛むくじゃらで空中に浮いている獣人アルマだった。
正確には幻獣であり今は人間に近い姿をとっているだけだが・・
「お前が、やられるなんて珍しいな、おい!
ヘマでもしたのか?」
いつもなら売り言葉に買い言葉になっているとこだが、今はわずかな時間でも惜しい。
スルーするとしよう。
ただ、いつも通しで安心した。
「今回ばかりは間違いないな・・実際、本当に危なかった・・」
二人は神妙な顔になる。
いつもなら喧嘩が始まっているはずなのに、あっさりと引いたことに驚いているのだろう。
いつもがいつもなだけになんとも言えない。
ヘルミナが決意して口を開く。
「ディベル、いったい何があったの?
ダンさんによると、傷ついたた少女が出てきて第3騎士団を呼んで戻ると倒れていたって聞いているのだけど。」
レディルに言われたことを思い出す。
信頼できる仲間か・・・
第3隊のみんなしかいないよな。
「ここでは話すことができない。だからあとで俺の部屋に来て欲しい。」
ヘルミナとアルマは無言で頷く。
俺はベッドから降りようとすると、ふとベッドの横の机に視線がいく。
そこには俺の看病に使ったであろう道具がたくさんあった。
「ヘルミナ、アルマ助かった。
おかげで早く回復することができた。」
アルマはフンっと鼻を鳴らすだけで反応は何もない・・
ヘルミナは満面の笑みをこちらに向けている。
思わずドキッとしてしまったのは内緒だ。
「どういたしまして♪」
俺は医務室を出て受付へ向かった。
「203号室のディベルだ。
退院の申請をお願いしたい。」
「はい、確認が取れました。
どこにも不調がなければ退院できます。
あと、第2騎士団団長様よりお手紙が届いております。」
「ああ、ありがとう。」
受付人は団長からの手紙と領収書を手渡してきた。
まず、領収書を見て吹き出した。
なんと、俺の給料3ヶ月分だ。
武器も新調したばかりで、貯金がない。
それもガラハッドに・・・
許さん!!!
次に団長からの手紙を見てみる。
そこには俺の心配とダンから報告は受けているが何か伝えたいことがあれば団長室にくるようにとあった。
レディルの言葉が本当なら、何かしらの影響を受けている可能性が高い。
それにどこに敵の耳があるかもわからない。
とりあえずあのことはヘルミナとアルマ以外には伝えない方がいいだろう。
予想外の治療費に落胆しながらも、自室へと足を運んだ。
3日ぶりの自室。
以前よりも整っていた。
きっとヘルミナが片付けてくれたのだろう。
部屋についてしばらくするとドアをノックする音がした。
「ディベル〜!アルマときたわ!入るわね〜!」
ドアに向けて応答する。
「ああ入ってくれ。」
「お邪魔しまーす!」
「邪魔するぜ!」
ヘルミナはお菓子を片手に、アルマは相変わらずふわふわ浮いて入ってきた。
重力魔法と風魔法の並行という無駄に高度なことをしている。
二人ともマイペースなのはいいことだ・・
とりあえず俺はお茶の用意をする。
「さて、聞いたら後には戻れない。危険も間違いなくあるだろう。それを踏まえて俺はアルマとヘルミナに協力を頼みたい。引き受けてくれるか?」
俺は頭を下げる。
「俺は、拾ってもらった時からどんなことでもお前についていくって決めたんだ。だから当たり前だろ?」
「そうね!
私は、ディベルのことを心から信頼してる!
どんなことでも引き受けさせてもらうわ!」
良い返事をもらえて本当によかった。
今後どんなことがあっても切り抜けることができる。
そんな確信を感じた。
もう一人第3隊には仲間がいるのだがそれは後々合流したいところだ。
「アルマ、音が部屋から漏れないよう、風壁を頼む。」
ヘルミナは息を呑んで俺が話し始めるのを待つ。
「ああ、わかった!」
その後2時間ほどかけて、破壊神ムート、神将、ヴァニタスについてや、聖剣レーヴァテイン、そこに封印されていた剣神レディルのこと、レディルに指示されたことを伝えた。
話し始めた頃は、あまりのスケールの大きさに驚いて理解できていなかったようだが、聖剣レーヴァテインと剣神レディルについて話し始めたところで理解し始めたようで真剣に聞いてくれた。
ふと思い出し、自分が倒れていたとこ周辺に剣が落ちていないかと聞いたところ、そんなものはなかったらしい。
ただ、思いついて心の中で聖剣レーヴァテインを呼んだところ、手におさまっていた。
普段は驚かないアルマもヘルミナと一緒に驚いていた。
俺自身もびっくりだった。
だが、これであの出来事が現実であったと断定されてしまったわけだ。
あまりの情報量にヘルミナは目を回してしまっている。
アルマもややうんざりしていた。
今後の作戦について話すのは休憩を挟んでからということになり、ヘルミナの持ってきてくれたお菓子を味わうことにした。