表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

子供向けのお話シリーズ

わかなつみ ひとうらない

作者: 日浦海里

今日は人日。


人日は年の一番最初に迎える五節句の一つです。

五節句とは、人日(じんじつ)上巳(じょうし)端午(たんご)七夕(たなばた)重陽(ちょうよう)を指します。


人の日、と書いて人日。

他の五節句も聞き慣れない言葉が多いですが、不思議な呼び名ですよね。


人日、という節句の名前には意味があります。


そもそも節句は古来中国の陰陽五行思想に由来しています。


1,3,5,7,9といった奇数は「陽」の数字で縁起が良く、

2,4,6,8の偶数は「陰」の数字で縁起が悪い。


ですが、奇数の月と奇数の日で同じ数字が「重なる」ことは、陽の気が強すぎで逆に縁起が悪いと考えられていたようです。


そこで奇数の重なる日に邪気を払う行事を行ったのが「節句」の始まりと言われています。


この考え方で言えば、本来節句の最初は一月一日となるのですが、一月一日は一年の始まりであり特別な日とされて、避けられたと言われています。


その理由は様々あるのかもしれませんが、元日は新しい年と共に神様をお迎えする日であったり、お屠蘇をいただき厄除けを行ったりと特別なお祝いごとをする日でもあったので、節句とすることを避けたのかも知れません。


では、なぜ七日なのか。

これが「人日」の節句の由来と関わってきます。


こちらも古来中国での風習に由来しますが、新年を迎えた際、古来中国では、最初の七日間を使ってその年一年を占う風習がありました。

六日まではその頃の中国で馴染みの多かった獣畜を使って占いました。

この日は、その種の獣畜を敬い、殺してはいけない、という決まりもあったそうです。


一日 鶏

二日 いぬ

三日 羊

四日 猪

五日 牛

六日 馬


そして、七日目に人を使って占ったとのことです。

この日は罪人の刑罰を行わないという決まりがあったとか。


人を占う日、人を敬う日、ということから、人の日となり、この日を「人日」としたのが、人日の節句の始まりと言われています。


節句は、災い(厄)除けや、邪気を払うために行われる行事で、どの行事においても、内と外、両方から厄を払う風習があるように思えます。


外、というのは目に見える祝い事。

内、というのは縁起の良い具材を用いた食事。


節句の食事としては、

三月三日ならちらし寿司

五月五日なら柏餅

がそれにあたると思います。


人日の節句にも、節句に因んだ食事がありますね。

七草がゆです。


古来中国では、人日の食事は七草がゆではなく七種菜羹、「羹」、羊の肉を煮込んだスープをいただく風習がありました。

しかし、節句の風習が伝わった当時の日本では、羊もスープも馴染みのないもの。

代わりに食べるようになったのが七草かゆでした。


もともと日本では年の初めの子の日に新たに芽吹いた草を摘み取る「若菜摘み」という風習がありました。

また、「羹」という字は中国では羊の肉という意味を持ちますが、日本で「羹」は「あつもの」、熱く煮たお吸い物という意味があります。

これを組み合わせて、「若菜摘み」で摘んだ草を熱く煮たお吸い物、これが今の七草かゆの始まり、と言われています。


「若菜摘み」で摘んでいた草と七草は同じではありません。

現在の春の七草、と呼ばれる種類に落ち着くまでは紆余曲折あったようです。

今も、芹「せり」、薺「なずな」、御形「ごぎょう」、繁縷「はこべら」、仏の座「ほとけのざ」、菘「すずな」、蘿蔔「すずしろ」と呼ばれる七種については異論があったりします。


七種の草の内、現在の植物の名前と一致するのは三種類だけで

せり、なずな、はこべ

となっています。

はこべは漢字にすると、繁縷となるので、同じとみなしています。


他は、異なる名前で

御形「ごぎょう」は母子草「ははこぐさ」、

仏の座「ほとけのざ」は小鬼田平子「こおにたびらこ」、

菘「すずな」は蕪「かぶ」、

蘿蔔「すずしろ」は大根「だいこん」

と言われています。


仏の座と呼ばれる草に当てはめられているものが小鬼田平子「こおにたびらこ」とされているのには

縁起担ぎの謂れがあるようです。

仏の座、仏様の下に座する小鬼。

当時の宗教性が垣間見えて面白いですよね。


春の七草には、新たな年を迎えた際の祝い事で疲れた胃を休めてくれる効果を含む草が多いそうです。

祝い事を終え、新たな気持ちで日常を迎えるにあたり、

ゆっくりと七草をいただき、お休みする

そんな一日を過ごせると良いですね。

今回のフィクションは仏の座に関する記述です。

仏の座と子鬼田平子には宗教性のある謂れはありません。


ちなみに、小鬼田平子の名前の由来は、名称あるあるな名付けの由来があります。

田平子という種類の品種がありましたが、

後にこれより大きい田平子の品種が見つかり、鬼田平子、と名付けられました。

その後、鬼田平子よりは小さいが、田平子よりは大きい品種が見つかり、

鬼田平子より小さいから、小鬼田平子、と名付けられたそうです。


田平子に鬼と言う名がついたのは、大きいという意味なので、

仏様とは関係がないのです。


とはいえ、いつものことですが、私の調査不足で

実は関連性があったとしたらすみません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 春の七草、五節句など受験勉強で必死に覚えた気がしますが、空っぽの頭からすっぽり抜けております。言葉の由来を調べると素敵なものだったり、恐いものだったりする場合がございますが、こうして書いて…
[良い点] 人を使って占う、とは人の骨で占ったということでしょうか? 他の動物たちも。 その点がちょっと気になりました。 もしご存知だったら教えてください。
[良い点] 興味深く、すごくわかりやすくて面白かったです。初めて知った気になることも多かったので、調べてみます。ワクワク!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ