alia parte:空想、回顧。
あんまり大胆にするわけにもいかないから、物陰でしちゃったけれど、もうちょっと明るいとこで見てみたかったな、あの子の蕩けた顔。素がかわいいのに、髪を撫でるとか、額にキスとか、ちょっとしたスキンシップだけで、声も、すっごくとろんってしてて。きっと知らないオトナの世界、そのまま連れていきたくなるの、抑えるので精一杯。
腰のある髪も触るとふわふわしてるし、握った手も柔らかい。素直で、無垢で。……天使なんて言うのは大袈裟かもしれないけれど、そんなことさえ思わせるくらい。お泊りなんて言葉で隠して、連れ込んでしまうことはできなかったけど。……いや、外泊届なんて理由で断るとこも、純粋でかわいらしい。そんなあの子を、……穢してしまいたい、なんて思うのは、染みついた本能の性。
「あの子、どんな反応するのかしらね」
まだ知らないはずの、最上級の『かわいい』の伝え方をしてみたら。丸っこい頬を赤く染めて、とろんと潤んだ瞳で見つめてきて。……そんなことを想像するだけで、我慢なんてできなくなっていきそうね。そうなったとして、外でいろいろできる場所も、密かに集合知のようになってるし。私がそういうとこを実際に使うことになるかもしれないとは、考えてもみなかったけれど。
「それにしても、……ね」
デート、って、言えるのかしら。あの約束は。そんなことをするような純情なお付き合い、そういえばしたこともなかったかもしれないわね。恋なんてものを知る前に、それよりも熱くて深いもの、知ってしまったもの。……皮肉なものね、爛れきった私と、無垢なあの子と。どっちも、きっと初デートだっていうの。気になる場所とか、訊いておいたほうがいいかしら。訊く手段は、手に持っているけれど。それにしたって、慣れないわね。甘酸っぱい感情なんて、知る前に枯れきってるようなものだっていうのに。家に連れ込んで、体を重ねて、それくらいしかしたことないから。
「私らしくないけれどもね、こんなの」
かわいらしい猫のキャラクターのアイコンが、妙に胸の内で引っかかる。『こころ』なんて、そのまんまなハンドルネームも。あの子らしいとは言えるけれど、ついため息がこぼれる。
後腐れのないように、連絡先の交換なんてしないようにしているのに。あの子が初めてかもしれないわね。こういう繋がりだけの子だと。……少なくとも、覚えている限りでは。あの子が名前を呼んだから、お返しのように呼んだのも。あの子といると、ほんのちょっと、私らしくなくなってく。それがよいことか悪いことか、分からないけれど。
……滾った気持ち、治まらないかもしれないわね。お母さま、今日は誰かかわいい子連れ込んでたりしないかしら。『今日は誰か来るかしら?』なんてメッセージを打って。帰るまでに連絡がなければ、私も愉しませてもらおう。