とけあう、きもち
「……かわいい」
顔が近づいて目を閉じても、ほっぺとか、おでことか、ぷるんってしたくちびるが触ってくれるの、そういうとこばっかり。……そこじゃないのに。さっきまで、いっぱいちゅーしてくれたのに。でも、どうしようもないくらい、ドキドキしちゃう。
「蘭ちゃん……っ」
「ごめんなさいね、つい癖で。……ここがいいのよね」
「……いじわる」
くちびるに、指をふにって当てられる。すらってしてるのにしなやかで、見とれちゃう。そっぽ向きたいのに、目が離せない。だって、こんなきれい。
「拗ねないで頂戴、……初めてなのよ、こういう風に繋がるの」
「……ちゃんとちゅーしてくれなきゃ、許してあげないもん」
ホントに、初めてなのかな、ちゅーとかするの。そんな風に簡単にいじわるしてくるから、ほんのちょっとの仕返し。こういうとこ、まだ子供だなって自分でも思うけど、……しょうがないでしょ。
「もう、しょうがないわね、……力抜いて?」
「……ん」
「そう、いい子ね」
顔、近づけてくれる。思わず、目を閉じちゃう。さっきまでずっとこころからしてたから、……想像だけでドキドキが止まんなくなっちゃいそうなのに、すぐ、現実になってやってくる。
「……ちゅ」
「ん、……ぅ」
ちょっと、ついばむみたいにしてきて。それだけで、さっきみたいなオトナなの、期待しちゃう。近いせいか、蘭さんの顔、ぼやけてよく見えない。
「……ふふっ、こんなのじゃ、足りないって顔してる」
「言わないでよ、……蘭ちゃんも、でしょ?」
「もちろんよ、……おいで?」
されるがままって感じなのに、優しくて、……オトナなエスコートって感じ。ほっぺ、なでなでされるし、……なんか、ずるい。簡単に、とけちゃうから。目を閉じて、くちびるをすぼませて、……はやく、きて。
「……ちゅ、……ちゅっ、ん……っ、はぷぅ、……ちゅぃ……、ぁむ」
「……ん、……ぁ、ぅ、はむぅ、……あっ、はぁ、……んぅ……っ」
さっきみたいなの、まだこなくて、でも、頭のなか、ほわほわしてくる。蘭ちゃんととけて、ひとつになっちゃいそうな。
「ちゅ、……ぺろ、……れる、れろ……、ぴちゅぅ、……んぁあ、んちゅ」
「……ん、はぁ……、んちゅ、れる……、んちゅ、あ……っ、んく、ぅん……っ」
さっきみたいに、なんか、ぺろってしてきて。こころのほうも、気が付いたら同じようにしてて。さっきみたいにとろとろにとろけちゃいそうになっちゃう。はじめてじゃないから、さっきよりもちょっとわかってくる。あまくて、しびれちゃう。……今ならわかる。これが、『きもちいい』っていうんだって。でも、こんなの、おかしくなっちゃいそう。服、思わずにぎっちゃう。
「はぷ、ぅ……、どうかしら?」
「はあ、はぁ、……きもちいい、けど……っ」
まだ、頭の中、ゾクゾクして、ふわふわしてて。その先があるなんて信じられなくなる。これ以上なんて、きっとこころがこわれちゃうよ。
「……怖いかしら?」
「ぅ……ちょっとだけ」
ホントは、ちょっとじゃないけど、でも、怖いって言っちゃったら、終わっちゃいそうで。ほしくなっちゃってるけど、まだ、多分そういう心の準備ができてなくて。
「……初めてだものね、もう少し、ゆっくりがいいかしら?」
「ぅ,うん……、そうかも」
「いいのよ、時間はまだあるし、……そういうとこも、かわいいから」
髪、軽くなでなでされる。そんなんで、ときめいちゃうのがちょっと悔しくって、その何倍も、『すき』でいっぱいになる。……もっとふんわりした恋をしてたはずなのに、いつの間にか、オトナなかおりに導かれるちゃって、……こんな刺激的なの味わったら、もう、前までのこころには戻れないよ。




