ふれあう、こころ。
「『好き』なんて分からないって言ったでしょ?……今は、少しだけ分かるかもしれないわ」
「そう、なの?」
ドキドキ、服越しに伝わっちゃいそう。その『すき』、こころの方に向いててほしいな。もし、そうだったら、なんて想像しただけで頭がふわふわする。
「一目惚れ、なんて言ったけど、はじめはいつもと同じだったのよ。かわいいから食べちゃいたいしか思ってなかったもの」
「……そうなんだ」
「でも、あなたにはなんか違ったの。いつもの私ならとっくにもういいやって思ってるはずなのに、あたなのことは欲しくて仕方なかったの」
たどたどしい言葉、さっきまで、全部知ってるみたいにリードしてたのがウソみたい。でも、言ってること、頭の中で意味が分かったとたんに、気持ちは上にも下にもぐらぐら動く。
「デートするの、はじめてって聞いた気がするけど」
「ええ、そんなに深く誰かと繋がりたいなんて思わなかったの。……一番おいしいとこだけつまみ食いできれば、それだけでいいと思ってたのに」
「ねえ、それって……、こころのこと、……ぁう」
ちっちゃな背伸び、くずれちゃった。だって、……他の言ってることにはむっとしちゃうけど、……好きな人が、こころのこと、特別だって言いたそうにしてるんだもん。
「もう、……そのほうがかわいいのに」
知ってる風に頭をぽんぽんとされるのは好きじゃないのに、それでもキュンってしちゃって。まっすぐなんて見れなくて、うつむきたくても、蘭さんのほうが今は背が低い。
「むぅ……、わかってよ」
「……もっとかわいいとこが見たいの、……嫌かしら?」
「そうじゃないけど、でも……っ」
背伸びしたいのも、それに気づかれて恥ずかしいのも、こっちの勝手なのに。こんなとこも、まだオトナになんてなれないって気づかされてイヤになる。嫌いになんてならないでね、こんなので。これも、ただのわがままだけど。
「かわいいとこがいいの、……他の人といても、あなたのことばかり考えてるくらいに」
「……もう、ずるいよ」
相変わらず、かわいいって言ってばかりで。そんなんだから、オトナっぽさを求めちゃうのに。……そういう言い方するの、ずるい。どうしたって、蘭さんの『とくべつ』なんだって分かって、嬉しくてしょうがなくなっちゃうから。
「だからね、……こころさん、多分だけど、……」
まっすぐな視線、……射抜かれちゃいそう。心はとっくにそうなってるけど、もっと、違うとこも。
「私も好きよ、あなたのこと」
言葉が頭の中で形になって、ほっぺだけじゃなくて、体の中全部、火がついちゃったんじゃないかってくらい暑くなった。だって、こんなまっすぐて、あったかい。




