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心に白き胡蝶蘭を。  作者: しっちぃ


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31/43

純粋、剥離。

 初めて見た、真剣な目。普段とは反対で、心臓を射抜かれるような感覚。見下ろしてくる視線は、蕩けた顔とは違う意味で、あどけなさが無くなっていて、……どうすればいいか、分からない。こんな風に見つめられたことないから。


「……分からないのよ、そういうこと」


 『抱きたい』という欲求を『すき』と呼ぶのであれば、……いや、そういうものではないはずだ。そういうことに無縁だった私にだってうっすらと分かるのだから、純粋に憧れているあなたならなおさら。


「どういうこと?」

「恋なんて知らないとこにいたの、……その先のことは、いくらでも分かっているのに」

「むぅ……、それじゃあ、もっと分かんないよ」


 そう答えるのは、最初から分かっていたけれど。……そんなもの、他の人に教えたことなんてなかったのにな。そんなものを教える機会も、理由も必要なかったもの。ただ欲しがってくれる人と一度だけの契りをして、それだけ。欲望を埋めるのに、体以外のつながりなんて余計だもの。


「そうよね、……分からなくても仕方ないわ」

「知りたい、……っていうのは、ダメ、かな」


 なのに、どうして。あなたは、かわそうとしてもまっすぐにぶつかってくるの。こういうときの避け方、私は知らない。そういう風にならないような子とばかり繋がってきたから。

 それでも、もう本能が先に行きたがっていたんだ、この子には。今更引けない、私が私じゃなくなってしまいそうでも、熱を知りたくて、教えたくて仕方がない。


「……話せば、長くなるわよ」


 まだ、気が乗らない。最後の一歩みたいなもの、どうせ、止まってはくれないんだろうな。純粋に私に恋していることは、今まで触れ合っただけで分かってしまっているから。

 

「いいよ、……教えて、ほしいな、時間、いっぱいあるでしょ?」


 観念するしかないみたい、真っ直ぐな瞳に射抜かれる。……それにしても、どうしてこの子には、今までの自分ではいられなくなるのかしら。分からないや、同じくらいかわいい子に会えてないってわけでもないのに。


「しょうがないわね、……じゃあ、いくわよ」

「うん」

 

 触れたくないとこには触れないように、でも、純粋すぎるこの子が諦めてくれてもいいように。恋を知る前に、体はその延長線上にあるはずだった快楽を知って、火照った体を満たす方法でしかなくなった。刹那的に求めて、それ以上にはなりたくなくて、……つくづく、今の私は矛盾してる。


「幻滅したでしょ?……私のこと」


 欲しがっている体とは裏腹に、ここまで知ったこの子が、そのまま私を向いてくれるとは思えない。……そのはずなのに。


「ん〜……、ううん」


 困ったような顔をして、……それから、首を横に振る。そのことよりも、心臓に熱を持ったような気がすることに戸惑ってしまう。

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