とまどい、あるく。
「そういえば、旧校舎ってことは部活見学よね、どこに行くか決まっているの?」
「うーんとね、漫研とか気になってるんだけど……」
「あらそう?あそこ、相当アクが強いって聞くけれど大丈夫なの?」
「そーなんだよねぇ、でも、やっぱり気になっちゃうのは気になっちゃうし……」
文化祭で部活で描いてた本があまりにえっちで見せられなくなっちゃったとか、部室で、恋人どうしじゃないとできないようないちゃいちゃしてるとか、信じられないようなウワサは聞くけど、前に文化祭の部誌を見せてもらったとき、すっごくきれいで、こころも描いてみたいって思っちゃったんだよね。学校見学のときに見た時も、そんなハチャメチャなことはしてなかったし。ちょっと不安だけど、やっぱり見てみたいな。
「まあ、体験入部だものね、じっくり見て考えればいいんじゃない?」
「そうだよね、別に今すぐ決めないとってものでもないし……」
本当にウワサがそうだったら、やめたほうがいいのかな。イラスト部とかもあるみたいだし、……でも、美術部みたいに本気でそういうのとかは、あんまり合わないかも?いろいろ考えてみても、それ以上に気になるとこ、見つかりそうにないかも。
「ふふ、懐かしいわね、私も最初は軽い気持ちで入ったから」
「そういえば、おねーさんってどこに入ってるの?」
「あら、気になるの?私はチア部なんだけど……」
「そっかぁ……、なんかかっこいいもんね。でもすごいや、……わたし、動くの苦手だからなぁ」
そこに軽い気持ちで入るとか、よくわかんないや。こころだったら、寮に帰るまでで寝ちゃいそう。確かに、かっこいいし、きらきらって感じもするけど、……おねーさんみたいにキレイな人ならともかく、こころには背伸びしすぎてるかも。
「そうね、……モテたくて入ったのだけど、今じゃ普通に楽しくなっちゃって」
「そうなの?……おねーさん、きれいだから、ちょっと意外かも」
そんなことしなくたって、充分にモテちゃいそうなくらいなのに。オトナっぽいのに、なんか急に近づいたような感じ。……そうだよね、どんなに年上だって、五年しか違わないもんね。
「そうかしら?……って、そろそろ着いちゃうわね」
「あ、ホントだ、これなんだぁ」
校庭をちょうどまっすぐ行ってたんだ。これくらい雰囲気のある建物だったら、気づきそうなのに。
……でも、そのおかげでおねーさんに会えたのは、嬉しい、かも。
「それで、ここが入口なんだけど、もう、大丈夫そう?」
「うん、ありがと、おねーさん、……あっ、そうだ!」
「どうかしたの?」
「あのね、後でちゃんとお礼したいから、名前教えてもらえるかな……?」
……もう一回、会ってみたいな。ふと気づいた気持ちに、心の中、いつの間にか引っ張られてる。
「ふふ、いいわよ、……四年二組の朝陰蘭よ」
「わたしは一の三の高根こころだよ、……今日は、ほんとにありがとうっ」
「いいのよ、……どういたしまして、じゃあ、待ってるから」
「うん、待っててねっ」
繋いだ手が離れて、……最後に、頭、ぽんぽんって優しくなでなでされる。想像してなくて、変にドキっとしちゃう。ちょっと名残惜しそうなのも、もう一回会ってくれるのも、期待してくれてるのも。……そんなこと思っちゃうなんて、ホントに、ひとめぼれしちゃったかな。