劣情、微熱。
「……あなたって、いけない子ね」
「ぅ……、ごめん、いきなりは、イヤだったかな……」
「そうじゃなくて、……欲しがりなのね、あなたも」
「ひゃう……っ」
ささやいてみると、甘い吐息だけ漏らして。普段のあどけない姿が、急に色っぽく感じる。……柔らかかったな。燻ってた感情を、焚き付けられるほどに。家に連れ込むどころか、この場で抱きたくなってしまいたくなる。
「二人きりになれるとこ、見繕ってあるわ。……だから、ね?」
我慢して、って言い聞かせないといけないのは、私のほう。今すぐにでも襲いたくてしょうがない。そろそろ、エンドロールが始まるかしら。無粋だけれど、その瞬間に連れ出したくなってしまう。
「うん……」
「ふふっ、……あなたも悪い子ね」
髪を軽く撫でてあげると、また、くすぐったそうな声を漏らしてくる。……本当に、触り甲斐しかない。くすぐったいのよね、この子から触れてくると。吐息交じりにこぼした『好き』も、意を決したように触れさせた唇も。
……それにしても、どうして。今までもさりげなく避けていたし、悟らせない逃げ方も知っていたはずだったのに。……不意打ちともいえないようなあれを、どうして避けられなかったのかしら。いや、そもそもそんな気にならなかったのかしら。そんな大胆なことするなんて思わなかったから?……それとも、ずっと抱えている違和感に、その答えがあるかしら。
……エンドロール、流れはじめた。中身よりも、やっぱり、この子にばかり意識が向かってた。この子も、割とそんな感じだったけれど。
「そろそろ、行く?」
「……終わってからでいいよ、もうちょっと、……いい?」
「ふふ、いいわよ、……本当いけない子ね」
指を頬にかけて、私のほうを向けさせる。薄暗くても分かるほどに真っ赤な顔、あどけなさと、それらしくない色気がない混ざって、ふつふつと欲望をたぎらせてくる。
「ねえ、……」
「……かわいい、……我慢できなくなるでしょ?そんな風にされたら」
口づけ、唇にはしないけど、頬とか、おでことか。……普段は指で触ることが多いけど、今はその気になれなくなる。音を立てないように、でも、その気になってしまえるように。
「だめ、だよ……っ」
「ふふ、しょうがないわね、……後で、……ね?」
漏らしてくる甘い吐息が、私の心に宿る熱ににふいごを吹く。「ダメ」は、ダメじゃないサインなのも分かってしまうから、余計に。
「……うん」
こくん、って首を縦に振るの、かわいい。やっぱり、欲しがりになってる。ちょうど明るくなったシアタールーム、あどけない顔がとろけて、赤らんでるのがよく見える。




