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心に白き胡蝶蘭を。  作者: しっちぃ


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ちいさな、いっぽ。

 急に抱き留められるシーンに、不意に触られて、……ドキドキ、止まんなくなる。映画よりもずっと。少女漫画で出てくるような触られ方、いきなりされちゃって。指も長くて、細くて、さらってしてて、あこがれても届かないくらいきれい。……こんなふうにされるって、そのうち、ちゅーとかされちゃうのかな。そんなのされちゃったら、こころ、ドキドキしすぎて死んじゃうかも。

 スクリーンの先の子の気持ち、本で読んだときは他人事だったけど、今はおんなじ気持ち。甘いだけじゃないって言ってたの、今ならわかる。


「……知りたくなっちゃうよね、好きになっちゃったんだもん」

 

 こぼれちゃったひとりごと、口に出たとたんにそれ以上の意味になってるって気づいちゃう。すぐそばに、その『すき』な人がいるのに、……もっと知りたいって、言っちゃってるようなものだな、これじゃあ。


「……あなたって、本当に素直でかわいいわね」

「もう……っ、ずるいよ……」


 聞こえちゃったし、また、耳元でささやいてくる声でしびれさせてくる。……でも、また、『かわいい』で、『すき』とは、まだ言ってくれない。もっといろんなこと、知ってそうなのに。先生よりもオトナっぽく見えちゃう見た目とか、よゆーみたいなの感じるような仕草とか。恋なんてしてたら、どこかおかしくてもいいのに。そういう風に見てくれないのかな、こころのこと。もしかして、子供っぽいから?ぐるぐる回る頭を冷やそうと飲み物を飲んでも、全然収まってくれない。

 ドキドキしてるのに、モヤモヤも一緒にふくらんじゃう。映画のなかも、好きって気持ちを自覚しちゃってる。こころも今こうなっちゃってるけど、蘭さんはどうなのかな。スクリーンの向こうとこっちで、おんなじ気持ちを抱えてる。向こうの結末は知ってるけど、こっちの結末は、誰が教えてくれるのかな。


『ねぇ、……わたしのこと、どう思ってるの?』


 ……こんなこと、言えたらよかったのに。まっすぐな言葉、今のこころには熱すぎるよ。本で読んだときは甘かったのに、今は酸っぱさとドキドキでいっぱいになっちゃう。飲み物、大きいのにしたはずなのに、もう氷が見えちゃいそう。

 

「蘭さん……?」

「……どうかした?」

「ああいうこと、憧れたことってある?」


 精一杯の一歩、たぶん、ペンギンさんみたいなよちよちしたのだけど。あんまり恋とかしたことないっていうのは紗彩さんの話で聞いてたけど、もっと、知りたいな。それで、……こころに、恋してくれたらいいのにな。



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