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心に白き胡蝶蘭を。  作者: しっちぃ


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衝動、期待。

 スクリーンには、映画の予告が流れてる。世情にそこまで聡くはない私でも聞いたことのあるタイトルも結構あるのね。……あまり興味は湧かないけれど。あの子は、興味ありげに相槌を打ったり、目を輝かせたりしている。


「……ちょっと、うるさかったかな」

「いいわ、かわいいから」


 そんなとこも、かわいいから。……触れたがる指を、こらえるのが精いっぱいになる。声が聞きたい、蕩けた顔が見たい。気持ちよくさせたい。そうしたら、私も気持ちいいから。ここがいつもと違う空間だというのを、危うく忘れかけるとこだった。

 ストーリーも見させてもらったけど、文芸部の大人しい子と同じ部活の先輩で、割と、どっちも私の趣味に入る人だったわね。俳優さんたちも主人公の女の子は純朴な感じで、相手もかっこいいけど少しなよっとした感じ。……そういえば、小太刀さんたちも文芸部だったわね。それで嵌ったのかしらなんて邪推をしてしまうほどには、映画には意識が向かない。隣にいるこの子に、どうしても食指は動く。時折飲み物に手を伸ばしながら、真剣な目でスクリーンを観てる。照りかえしで見える顔、相変わらずかわいらしい。

 スクリーンの中は、転換点、なのかしら。上から荷物が降ってきたとこを、抱き留められて助けられるシーン。不意にパーソナルラインの内側に来るの、どうしてもその瞬間って意識してしまうのよね。……私にはまどろっこしいほどにゆったりしているけれど。……それでも、はっとしたような声が隣から聞こえる。その声の主のスクリーンに照らされる横顔に、見とれそうになってしまう。少し、体を寄せる。


「……ひゃ、……らん、さん……?」

「かわいい……、こっち、おいで?」


 わずかにこぼれた声、抑えてるせいか、想像よりずっと熱っぽい。……私の奥にまで、伝わってきそうなくらいに。……理性のタガが、ほどけそうになる。いつもの癖で出てきた言葉、反対側の頬のあたり、私に向かせるように触れる。


「……だ、だめだよ……っ」


 こういうのは、ダメじゃないときだって理解できてしまう。アクセルばかり踏ませようとして、……あなたも悪いのよ。まだ、本能は抑えられているけれど、こらえられなくなりそうじゃない。


「……ふふ、分かってるわ」

「もぉ……、いじわる」


 背の違いのせいで、自然に耳元でささやく形になる。むくれたとこも、かわいい。……期待してくれてるような声、もしかして、あなたも欲しがりなのかしら?

 くすりと漏れる笑み、私らしくはない。そういうにはあまりに爛れたものだけど、……これが、恋なのかしら?ウブなあなたに訊いたって分からないわよね、こんなこと。

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