ふわふわ、うかぶ。
お昼のあのときから、頭の中、ふわふわしちゃってる。デートっていったって、あんなことしちゃったら、……ドキドキ、止まんないよ。ほっぺ、熱いままになっちゃう。映画になったらそっちに集中できるけど、それまでの時間もまだある。
「まだ時間あるし、もう少し何か観ていく?」
「うーん、それよりは、グッズとか買いにいきたいな」
パンフレットだったり、クリアファイルとかはあるはずだし、そういうのは見ておきたいな。他のとこに夢中になっちゃって遅れちゃうのもいやだし。本屋さんに行かなくても、これの続きとかは置いてるかもだし、それでいいかな。
「そうね、あと、飲み物とかも要るかしら」
「あっ、それもだったね」
映画といえばポップコーンだけど、今はまだお腹いっぱいだし、……でも、やっぱり飲み物は欲しいかも。紗彩さんと加奈子さんとお話したカフェでも、レストランでもすぐ喉カラカラになっちゃったし。ドキドキしっぱなしの体は、どうしても冷やしてくれるものを欲しがっちゃう。
手も、いつの間にか繋げてくるから、頭の中、ずっと爆発しちゃいそう。デートって、こんなふうになっちゃうものなのかな。好きな人といるのって、幸せな気持ちになれるはずなのに、……それだけじゃいられない。
「何か買うんでしょ?私も見てみようかしら」
「そうだね、……一緒がいいな、デートだもん」
「ふふ、そう……ね」
でも、やっぱり近づきたいんだ。ズキズキするのは分かってても。『好き』以上には表せない、おっきくて熱いものでいっぱいになってるから。これから観る映画のはあんまりブースは小さいけど、グッズ自体は結構ある。クリアファイルとかなら……って思ったけど、使うのもったいなくなるんだよね。他の文具もいっぱいになっちゃってるし、ふせんもそんなに使うものじゃないし。……やっぱりクリアファイルかな、一枚だけならそんなにかさばらないし。
「何か決まったかしら?もう」
「やっぱりこれかなぁ、買ってくるから、ちょっと待ってて」
「ええ、わかったわ」
少しだけ、一人でいさせて。ずっと一緒だったらきっと、こころの心の中、どうにかなっちゃうから。ほんのちょっとの時間だけど、深く息をして、体の中の熱を冷まそうとしてみる。……そんなことしても、全然冷えてくれないや。なんとなくはわかってたけど。
レジも、すぐ終わっちゃった。蘭さんのとこに帰ってくるときに、また、きれいな顔にきゅんってしちゃう。……だめだな、こころの中、どうしようもなく『すき』でいっぱいになっちゃってる。




