欲望、隘路。
あの子と触れ合うたび、かわいさに満たされる。……私のこと、知らないような無垢なとこも、へにゃっていうかふにゃっていうか、そんなあどけない笑みに、どうしようもなく、揺さぶられる。幸せそうにオムライスを頬張る姿も、見初めたときと同じ。……私の本能が熱を持つほどに。それなのに、二人でいることなんて確定して、我慢、きくかしら。二時間も、暗がりで隣にいて。……私の部屋だったら、何回イかせられたかしら。そんなことを考えている時点でもう、できる気がしなくなっているけれど。
「初めて来たけど、なかなかおいしいわね」
「えへへ、前来たことあったけど、おいしくって」
「そうなのね、……あなたに任せてよかったわ」
「そっかな……えへへ」
……そもそも、初めて出会ったときから、私らしくないことばかりして。連絡先の交換なんて、その場で会った子としたことなんてなかったし、デートなんてまどろっこしいこともしたことなかったのに。
毎回、そのまま家に連れ込んで満ち足りるまで抱いて、その後は何もなかったように元通り。連れ込めないなら、とっとと別の子を拾ってくる。それができなかったのは、なぜなのかしら。確かに、放っておくのはもったいないくらいかわいいし、無垢なとこもそそるけれど。それが執着のようなものに対する理由づけになるには、一味も二味も足りないような。探せば他にいそうなものなのに、どうして、こんなに、……この子に執着してしまうのかしら。
「一口交換してみない?」
「え、いいの?」
「なんか、気になってる顔してたから、ほら、どうぞ?」
一口分をすくったスプーンを差し出してみると、しばらく固まって、落ちそうになった頃に、意を決したみたく食べてくる。なんか、雛鳥みたい。
「こっちもおいしいね、……わたしのも、食べてみる?」
「ええ、それじゃあいただくわ」
おずおずと差し出されたスプーンに、かぶりついてみる。あの子らしい、トマトのこんなの、私には今更だけど、きっと初心なあの子にはそうではないはずで。ほら、もう、丸っこい顔がりんごみたいに真っ赤なとことか、どうしたってかわいいって思わされる。
「ぅ……どうだったかな」
「とてもおいしかったわ」
「そっか……」
ほっと胸をなでおろすとこも、わかりやすくてかわいい。それまで通り、また食べ進めはじめる。目の前の顔は、……スプーンを見つめて固まっちゃってる。本当に初心なんだな、……かわいくて、仕方がなくなる。。こんな子が蕩けたら、どんな風になるのかしら。
もっと見せて、……その先ももっと。考えるのなんて、これだけでいいの。それ以上のことを考えても、答えのない道に迷い込んでしまうもの。




