できない、せのび。
「蘭さんは、何か気になるのあるの?」
「そうねぇ……」
なんとなく、はぐらかされてばっかりだな、好きなもの。こころの好きなものばかりになるの、嬉しいけれど、……それだけじゃイヤだなって思っちゃう。教えてほしいな、蘭さんのこと、もうちょっとだけでも。
「……服とかは気になるかしら。そろそろ夏物いいの見ておきたいし」
「見るだけでも楽しいもんね、……わたしもアクセとか気になるなぁ」
「それもいいわね、私も見ようかしら」
そういうとこ、確かに想像できないかも。……でも、やっぱり、こころの気持ち、分かってくれない。蘭さんがそういうオシャレしてるの、すっごくキレイなんだろうなっていうのは分かっても、こころが見るみたいなリボンカチューシャとか、あんまり着けそうなイメージが湧かない。
「うん、蘭さんも、そういうの着けるんだ……」
「ネックレスとかイヤリングとかはたまに……ね」
「なんか、すっごいな……」
「そうでもないわよ、気まぐれにしてるだけだもの」
そういうけど、きっとが似合っちゃうんだろうな。おねーちゃんと年は同じはずなのに、それよりずっとオトナっぽい顔がうらやましくなる。こころは丸っこいから、子供っぽく見られちゃうし、アクセって言ったってリボンとかヘアアクセとか、まだ子供っぽいものばかり。なんか、それだけでも、生きてるとこがちがうっていうか。
「そうじゃなくて、聞いただけで似合いそうだもん」
「そうかしら、……あなたって本当に素直でかわいいわね」
「そうかな……」
嬉しい、……けど、かわいいだけじゃ物足りない。ほわってあったかくなって、ゆるんじゃうほっぺ、今はそんな風になんないでって思っちゃう。
「そうよ、……別に背伸びなんてしてもいいんじゃない、ずっとそうしてたらしんどくなるだけなんだから」
「ぅ……、そうかも」
そんな余裕があるのも、なんとなくオトナって感じ。頭をなでなでしてくれるの、優しいけど、やっぱり、背伸びしたくなっちゃいたくなる。……かわいいだけじゃなくて、となりにいるのが似合うような人になりたいのに。
「自然にしてたほうが、ずっといいわよ、私だって、大人じゃないもの」
「そうなんだ、……わたし、子供っぽいから、大人っぽいってうらやましくなっちゃうんだ」
「私はむしろ、あなたみたいな純粋さが羨ましくなるわ」
本当の気持ちなの、伝わってくるけど、やっぱり、子供っぽいのかな。紗彩さんと加奈子さんも、こころと似てたけど、……なんとなく、もっといろんな事知ってるような感じがして。何すればいいのかな、大人っぽくなるのって。




