表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/43

はじまり、まいご。

 目が回りそうなくらい、新しいことがいっぱいやってきた。教室もだし、教科書もだし、校舎だって、学校だってめちゃくちゃ大きいし、……おねーちゃんって、こんなとこで六年もやってたんだ。ここはいいとこだっておすすめしてくれたから入ったけど、もう落ち込んじゃいそう。

 

「ここ、どこだろ……」


 今日から体験入部で、文化部が集まってる旧校舎に行こうとしてたんだけど、……どこで道まちがっちゃったんだろう。森みたいになってるし、体育館裏かな、でもそれにしたら部活とかやってそうなのに、そういう音もしない。

 一回、建物の回りをまわってみようかな。どこなのかわかれば、まだリュックの中に地図があるはずだし。進もうとした途端に、声をかけられる。


「あら、あなた、道に迷ってるの?よかったら、送ってあげましょうか?」

「あ、うん、……じゃないや、はい……、その、お願いします……」


 もっと奥のほうから、おんなじ制服を来てる人が来る。校章もつけてないから歳はわかんないけど、……オトナって感じの、すっごくキレイな人。おんなじ女の子なのに、なんか見とれちゃいそうなくらい。この学校、アイドルやってる人とかモデルさんとかもいるって聞いたけど、そういう人なのかな。


「無理して敬語とか使わなくていいわ、私まで落ち着かなくなるもの」

「え、……じゃあ、お言葉に甘えて……」


 いつも通りなんて、できそうにないよ。なんでか、よくわかんないけど。がんばって丁寧な言葉にしてるけど、いつもみたいにしゃべるのもがんばんないとできなさそう。


「えぇっと……、何してた、の? その……、あんまり、何もないとこだけど」

「ふふふ、猫ちゃんと遊んでたのよ」

「そっか……、ごめんね、その……、おじゃま、しちゃったみたいで」

「別にいいのよ。……ちょっと待ってなさいね、この子送ってあげたらまた来るから」


 いいなぁ、そんな仲良くなれるって。中庭とかにいる猫ちゃんって誰かが飼ってるとかじゃないから、あんまり仲良くしてくれないんだけど。遠くに声をかける、優しくて透き通った声も、……女の子同士なのに、名前も知らないのに、ひとめぼれしちゃいそう。


「そんな仲良しになってるんだ……、いいなぁ」

「あら、そう?……そういえば、どこに行きたいのかしら?」


 そういえば、そうだった。猫ちゃんも気になるけど、部活に行きたいのに迷っちゃってたんだよね。優しいおねーさんでよかった。そうじゃなかったら、いつまでも迷ってたかも。


「あのね、旧校舎行きたいんだけど……」

「分かったわ、こっち、おいで?」


 差し出してくれる手を、何気なく取る。今更みたいに、少女マンガで見たような展開を思い出しちゃう。つながった手から、ドキドキしちゃってるの、伝わってなきゃいいんだけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ