偶然、未詳。
あの子が席を外してくれて、ちょうど、訊いてみたいことが訊ける。私が何も知らないこと、知らなそうだもの。
「……小太刀さん、鈴木さん、ちょっといいかしら?」
「いいよ、何?」
「私にも、見つかるかしら、あなたが言ったみたいに、甘いものじゃなくても」
これで、気づくかしら。私の知りたいこと。あの子と同じように純粋な彼女たちと、生きてきた場所は違いすぎるけど。
「欲しいって思ったら、案外見つかるものだよ?私も、……女の子とお付き合いするなんて思わなかったもん」
「一歩踏み出してみるだけで、変わるものだよ。……告白したの、私からだったんだよ、女の子同士が苦手な人だって知ってたけど」
そんな発想、私には甘すぎる。普段だったらそう言って聞かなかったことにしているだろうに、……今は、すがってみたくなる。私のよく知るものと、似ているようで少し違う感情を、持て余しているせい。
「……そうかしら」
それでも、信じきるところまではいかない。私の知っているその先の行為は、実利だけを追い求めているか、快楽に溺れたものか。ただ純粋に誰かを愛するなんて、……そういうものがあるとは頭では理解していても、体は受け付けてくれない。
「まあ、信じてとはいえないけど、……動いてみたら、変わる可能性はゼロじゃないはずだから」
「そうね、……ありがとう、まあ、考えてみるわ」
ちょうどいいとこに、あの子が戻ってくる。目の前にいる二人と同じような、純粋でかわいらしい、けれど、少しだけ、心への刺さり方が違う子。抱きたいけど、なぜだか、それだけじゃないの。
「おかえり、……この後、何か寄りたいところあるかしら?」
「えーっと、本屋さんは寄りたいけど、他もいろいろ見てみたいな」
「あら、そう?……なら、そうしようかしら」
そういえば、真っ当なデートなんてものも、私には縁もゆかりもないと思ってたものね。もどかしいほどにゆるやかな繋がりに、なぜか飽きない。もしかしたら、これがそうなのかも。……なんて、夢みたいなことを想像してしまう。ちょうど飲み終わったレモンティーのカップを片付けて、まだ飲み切ってない二人と分かれる。
「じゃあ、またね」
「二人とも、頑張ってね」
「ありがと、じゃあね」
なんとなく、また、手をつないでみる。ぴくって跳ねる動きとか、かわいいって思わされる。触れたい、それ以上に。いつも通りの劣情だけではない、何かが混ざったような何か。小太刀さんたちと話してみても、まだ、その何かはうまく表せない。




