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心に白き胡蝶蘭を。  作者: しっちぃ


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かさなる、てとて。

 遠足の前の日は上手く眠れなくなるって言うけど、何とか十分おやすみできた、かな。さらちゃんも早く眠れるように九時くらいには寝る準備してくれたし、……それでも、寝付くまでは大変だったけど。

 今日着る服も一緒に選んでくれたし、今日のことは教えてあげないとだね。どうすればいいかはわかんないけど、とにかくがんばらなきゃ。でも、なんか空回りしちゃいそうな。っていうか、もうしちゃってるかも。待ち合わせの場所には三十分も早く着いちゃったし、普段は着ないオトナっぽい色合いのワンピースも、着崩れてないか何度も確かめちゃう。

 ベンチに座って、通ってくる人をずっと目で追いかけてると、いつ見ても分かっちゃうような、モデルさんみたいな顔。制服じゃないから、学校で見るときよりずっとオトナっぽくて、本当に三つしか違わないのかなって思っちゃう。おんなじベージュ系のワンピースなのに、こころは着られてるかもって思ってるのに、蘭さんはとっても似合ってる。……全然違うのは最初からわかってるけど。


「もういたの?お待たせしちゃったかしら」

「ううん、全然だよ」


 さらっと手を伸ばしてくるとこも、オトナっぽくてうらやましい。慣れてるのかな、こころと違って。手つないでるだけでドキドキが止まんないし、ぎゅって握っちゃうのは、もっと止まんない。改札を通って、電車の中でも。出会ったはじまりが迷子になったとこからだから、気にしてくれてるのかもだけど。


「映画、何がいいか決まった?」

「うん、気になるのはあるんだけど……、気に入ってくれるか不安だし」

「いいのよ、最初から合わせるって言ってるじゃない」

「なら、いいんだけど……」


 優しいんだけど、なんとなく、もやもやする。こころの好きなことばっかりしてもらって、好きなこと、全然教えてくれない。知りたいって思ってくれてるんだったら、それはすっごく嬉しいんだけど、でも、やっぱり、それだけじゃ、ちょっとだけ、さみしい、かも。


「あのさ、映画だけじゃ寂しいから、どこか寄りたいとこある?」

「うーん、そうねぇ、……」


 首をかしげるとこも、絵になっちゃいそうなくらいきれい。メイクでもしてるのかな、学校で会うときよりも、オトナっぽく見える。何度でも、見とれちゃいそう。


「本屋はちょっと気になるわね、あとはスポーツショップかしら」

「そっかぁ……本屋さんはわたしも気になってるなぁ、好きなやつの新刊が出たみたいだし」

「まあ、見てからいろいろ寄ってみましょっか。私もあんまり行かないもの」


 電車で十分くらいの時間すら、もどかしく感じる。ドキドキも熱も、つないだ手から伝わってなかったらいいな。

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