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心に白き胡蝶蘭を。  作者: しっちぃ


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空想、微熱。

 奪いたい。ショッキングピンクの欲望は、無垢な反応に当てられる度に熱を帯びる。不意に喰らわされたお預けのせいかしら。それだけにしては、未練のようなものが多すぎるような。

 あの子が関わると、なぜか、そのままの私とは少しずれてしまう。……成り行きで、デートの約束をしてしまったあの時から。連れ込めないと分かったら、興味もかなり失せるものなのだけど。何故か、そんなに変わらない。むしろ、そんな所も純情でかわいいと、火がついてしまう感じ。


『分かった、映画、何か観たいのある?』


 かわいらしいアイコンから届く、かわいらしいメッセージ。だけど、デートのお作法なんてものは、何一つ知らない。真っ当なお付き合いとか、そういうことも全く分からない。純情なお付き合いなんてものは、ままごと遊びのような恋も知らない私には無縁なものだったから。裏なんて何もない、まんまるの笑顔が見えてきそうなメッセージ。生きてきた場所も、きっと全然違う。後腐れのないように、メッセージなんて使ってこなかったから、上手い返し方だって知らない。

 上手く二人きりになれる場所に連れ込めるか、頭の中はそれしか考えてない。スタパレに行くなら私の家は反対方向だし、前に聞いた人目を気にしなくてすむような場所で、ちょうどいいところはあったかしら。映画館だって行ったこともないし、特に気になるものもない。


『あなたが観たいものに合わせるわ、そこまで今気になるものないから』


 映画館のサイトは一応見てみたけれど、聞いたことがあるタイトルが少しあるくらいで、特に興味もわかない。強いて気になるとしたら、カップルシートなんてものがあること。ちょっとしたスキンシップであんなに蕩けてくれるなら、もっと大胆に触れたら、どういう反応してくれるかしら。……でも、そんなに声出させたら駄目だわよね。

 打ち込んだメッセージを送ると、ついため息がこぼれる。普段の私だったら、ここまで手間がかかるならその前にあきらめてるのに。あの子にだけは、なぜか執着してしまう。確かにかわいらしいし、私のタイプではあるけれど、ここまで気にしてしまう理由には、少し弱い気もする。


「どうしたものかしらね、これ」


 ……恋なんてもの、本当にしているのかも。そんなありえない結論を導きたくなるほどには、普段との違いを意識してしまう。そんなもの、柄じゃないことは一番理解しているのだけど。恋に恋する女の子みたいな真っ白な感情を知るすべは、どちらにしたって私の人生には与えられなかった。別に何も惜しくはないけれど、今だけは、その感情に興味が沸いてしまう。

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