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第六話 冒険者ギルドへ

 



 取り敢えずこの街で冒険者が俺にとって何かしらの切っ掛けになるかもしれないと分かっただけでも収穫だ。


 流れ者の俺が一度に色々調べていれば悪目立ちをするし、今日はもう宿をとって休むか。



「それじゃあ店主、ついでに宿を取りたいんが空いてるか?」


「ん?ああ、悪いなウチは酒場専門だ」


「へぇ、珍しいな?」


「他所だと酒場に宿は付きもんだが、この街は冒険者が急に集まったもんだからそれにあやかって酒場だけ開くトコが増えたのさ」


「成る程、それならおススメの宿屋は?」



 確かにこれは経済が回っていると言っても良いかもな。

 需要が増えれば供給も増える。

 それに主な目的である魔獣駆除のお陰で使えそうな素材の採取や生活圏の拡大なども見込める。


 そういう意味でもヨルム・ヒロイットの提案は成功しているんだろうが、まだ招致し始めて三ヶ月。

 問題が出るとしてもまだ先の話か……





 ……酒場の店主に薦められた宿屋で部屋を取りベッドに腰掛け今後の行動について考える。


 正攻法とは言えないが領地再興に人口の増加が一番必要だと理解し、しかもすぐに働ける冒険者を招致して増やしすぐさま結果に結びつけたヒロイット領。


 疲弊した領地にはこの上ない回復薬になるだろうが、この方法は劇薬だと気づいているかどうかが俺にとってもこの領地にとってもカギだな。


 そしてそのカギを使って見知らぬ他人という扉を開き、その向こうにいるヨルム・ヒロイットと面識を持つ。



 ……これが当面の目的だな。


 そしてカギを手に入れる方法も既に考えてある。

 この領地に来るまでに考えていた没案の一つがうまい具合に使えそうだ。

 手持ちの金もそろそろ心許無くなって来たとこだしちょうど良かったな。



「さてと、明日からは忙しくなるだろうし今日はサッサと寝るか」



 バンディットの屋敷ではない場所なら何処でも安眠出来る俺はこの日も心地よい眠りへとついた……



 ………………

 ……………



「あのー、冒険者登録をしたいんですが……」



 今後の方針に必要な第一段階。

 冒険者登録をする為に冒険者ギルドに来てみたが、此処が西側に流れる冒険者達の流れ着く先だったんだな。


 この場所にギルドを設置したのは一応警戒の意味もあるのか?

 領主館に近い場所に戦闘集団の溜まり場があるのは宜しくないし、良い判断だと思う。



「ようこそ冒険者ギルドヒロイット領支部へ。ご登録ですね?それではコチラの用紙に必要事項を記入し適性検査を受けて頂いたのち合格すれば晴れて冒険者となれます」



 適性検査?

 なんだそれは?



「あの、ちなみに適性検査って何をするんですか?」


「はい、この適性検査とはヒロイット領で初めて導入された制度でして、簡単に申しますと犯罪歴の有無をこの台に手を乗せて調べます。犯罪歴が有れば赤く光り、無ければ白く光る。そしてコレが重要なんですけど一度判定すると今後も罪を犯せば知らせてくれる大変便利な機能付きなんです」



 ヒロイット領独自の制度だと?


 ……やるじゃないかヨルム・ヒロイット。


 普通なら冒険者になるには戦えればそれで良かった筈なのにそこに犯罪歴を噛ませる事で治安悪化を多少なりとも防ぐつもりだな?」


 流石に無策で賭けをしていた訳じゃないらしい。



「……まさかとは思いますが、犯罪歴があるんですか?」


「あ!いえいえ、良く考えられてるなぁと感心しただけです」



 内心でヨルム・ヒロイットを再評価していると受付の女に怪しまれたので慌てて否定する素振りをしておく。


 普段通りの素の性格だと変な軋轢が生まれて下らないトラブルになるかもと思い真面目なフリをする事にしたが、コレはコレで楽じゃないな。



「それにしてもこんな板で犯罪歴を調べられるなんて凄いですね」



 必要事項を書き込みながら少しだけ探りを入れてみる。

 見た目はなんの変哲もない手形が書いてある板なのでハッタリかどうかだけでも知りたい。



「ええ、この技術は各国で管理されている秘匿技術で詳しい原理を教える訳にはいきませんが、この技術の基は傭兵団の管理にも使われているので信頼度は申し分ないですよ」



 ああ、傭兵団の管理と言われれば納得だな。


 この板の正式名称は【血印の天秤】と言って、傭兵団に所属している奴は全員これに登録して普段の行動を監視されている。

 登録した自分の形代が天秤で吊り合っていれば問題なく、少しでも罪に傾くと速攻で騎士団による討伐命令が下される警報器だ。


 もちろんバンディット家はその知識を100年ほど前に奪って解析済みの代物だ。


 だから当然この機能の抜け道を俺は知っているので過去現在に至るまでこの板が赤くなる事はない。



「ではいきます」


「アハハハ、そんなに構えなくても大丈夫ですよ?痛くもなんともありませんから。……はい、白く発光したので合格です。えーと、お名前はイクノスさんですね。それでは改めまして冒険者ギルドへようこそ! 我々は貴方の加入を心より歓迎致します」


「はい、ありがとうございます。それと頑張りますのでコチラこそ宜しくお願いします」


「ウフフフ、イクノスさんは少し真面目過ぎですよ? 別に粗暴でも構わないとは言いませんけど堅すぎるのも考えものですからね。それから私は受付嬢のアライアです。以後お見知りおきを!」


「ははは……善処します」



 しまった、真面目なら大体の事は大丈夫だと思っていたが、世間一般だとやり過ぎてもダメらしい。


 これは初期設定を間違えたな。

 今後は要改善として注意しておこう。



 とにかく、これで俺もスタートラインに立った事だしこれからが楽しみだ。





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