小説で服を書くときの問題点
ここでは、中世ヨーロッパの服の名前をファンタジーで使う上での問題点と、服を書くことにつきまとう問題を書いていきます。
・わかりやすい名前の問題点
上流階級が着ていた流行の服には名前があります。しかし、「ロココ調ドレス」や「ナポレオンジャケット」など時代や人名を冠していることがほとんどです。
自分の書いているファンタジーにロココ調時代やナポレオンは出てこないとなると、名前をそのまま使うのはためらわれますが、転生物ならロココドレスのようなドレスというように、例えに使えるので問題ないでしょう。ぜひこの事典をご使用ください。
・庶民の服にも名前はあるが問題もある
庶民の服の多くは民族衣装として紹介され、認識されています。作品に民族は出ないけど民族衣装は出すとなると、作者読者どちらか、あるいは両者が気になるかもしれません。
・パーツの名前はある
服のサイトを見ると、シャツ、ズボン、スカート、襟、袖、など部分部分の名前は何十種類とあります。服装を一から十まで説明するには困りません。その代わり、文字数は膨大となり文章力が試されます。
・名前多過ぎ問題
長い歴史の中で呼び名が変わっています。また国によっても名前が違います。現代日本も、ズボンだけでもこの何十年かで、ズボン→パンツ→ボトムス(スカートも含む)と呼び方がころころ変わっています。私は最近まで「ボトムスってなんだっけ?」と思っていたくらいです。
中世の長い歴史の中で千変万化した服の名前を、作者だけでなく読者が全て把握しているなどないと思います。
・○○スタイルは伝わるか?
カウボーイスタイルと聞けば、カウボーイの服装を想像できるように、○○=この服装と想像できれば○○スタイルと書くだけでいいわけです。ならば冒険者スタイルはどうでしょうか。作者が想像する冒険者スタイルと、読者が想像する冒険者スタイルは同じでしょうか。
ファンタジーにお馴染みのシスターや魔法使いなら、スタイルさえ省いて「シスター」と書くだけでどんな服装をしているか伝わり、作者と読者のすれ違いもあまりないでしょう。そろそろ「ファンタジーの定番キャラクター別 服のイメージ」も固定されてきていると思いますが断言はできません。また、細かいデザインをわかってもらいたい時は、この方法は使えません。
・中世はシンプル現代は複雑
中世の服のデザインは、布が貴重なだけにシンプルでした。しかし現代の中世の服は、着るより描くことが一般的なため、デザインは個性が求められ複雑になっています。
現代版の中世の服を小説で説明しようとすれば、どれだけ文字数が必要かわかりません。解決策は自分なりの方法で書くか、流行がシンプルデザインになるのを待つか、この小説についている名前事典を使っていただくかですが、この名前事典も全く知られていないため、使い物になるかはわかりません。
・確証はない
中世には写真や動画、ファッション雑誌などがありませんでした。中世の服を見るには絵画か挿し絵しかなく、この服の名前はこれでいいのか?と疑問に思っても答えはありません。確証がないため、服の名前を小説に使うことがためらわれます。服の専門家ならわかるかもしれないので、専門家が書いた「ファンタジー小説で使える服の名前事典」がほしいですね。
・服の名前事典は必要か
私が今まで投稿サイトで読んだ多くの作品では、人物の髪、顔、体の描写は詳しくても、服の描写はスッパリ省かれていました。詳しく書ける技量がありながら、なぜ、服装は書かないのか? それは人体を書くより難しい、または面倒だからだと思われます。私も未だに、服の説明で詰まって書けなくなることが度々あります。
服の描写は小説を書く中で、1、2を争うくらい、難しいと思います。
わかりやすく、簡単に服の名前さえ書ければ……それを叶えるのがこの
「異世界服屋さん・ファンタジーの服の名前・服装用語」!
これは需要ある! 忙しくなるぞ! と思ったのですが、そうでもない現実をつきつけられて、今は冷静になることができました。
・需要がない理由
1、そのまま使いづらい
ファンタジー小説はファンタジーです。そこに現実の服の名前を出すのは冷静に考えたら、確かにためらいがあります。しかし、他に方法がないんだから、仕方ないじゃないか! と私は迷いを振り切って書いています。
読者さんの感想が気になるところですが、感想が来ずわからないので、私が読者の立場で書かせてもらうと気になったことはありません。むしろ、どんな服着てるんだろう?とモヤモヤしたくないので、わかりやすい名前なんかを書いてくれた方が有り難いです。
2、服の名前が知られていない
見たことはあるけど名前は知らない、ファンタジーの服は案外これではないでしょうか。これで伝わるかな?が作者の最大の悩み、作者さんの多くは読者さんでもあるでしょう。この服の名前知らない、読んできた小説で使われていないとなれば、当然自分が使うのはためらわれますよね。
3、書いている暇はない
これは小説家になろうに限った話かもしれませんが、毎日投稿必須と言われるランキングシステムのせいで、服装まで書いてる暇がないようです。
ランキングとは無関係の私でさえ、早く書いて投稿しなくてはと、常に焦る気持ちがあります。投稿が途切れて読者さんに忘れられたくない心理だと思います。
ランキングに乗っているまたは目指しているなら、なおさら、時間を食う服を描写している暇はないと省かれても仕方ないと思います。
しかし、事典を投稿した身としては、それでもなんとか書いてほしいと思いますし、服の描写がないと物足りない、キャラを想像しにくいという声があるのも事実です。
今回は書こうかなと思った時に、他の資料と合わせてこの事典も使ってもらえれば嬉しいです。
以上が、思いつく限りの、小説で服を書く際の問題点になります。解決策はないまま、次話から服の紹介になります。