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しかも振り返ると余裕の表情だ。
街に出ても何もせず後ろをついて来る。
邪魔が入るのを嫌っているだけで、本気を出せばすぐにオレを捕まえられるのだろう。
家に帰るわけにも行かないので、街の中にあるダンジョンの前まで追い詰められてしまった。
このダンジョンは高ランク冒険者向けのBランクダンジョンなため、追ってこないだろうと意を決して飛び込んだ。
しかし奴らは予想に反して飛び込んで来た。
マサユキではない方の男がオレの横に並んだ。
「お前さあ、そんな装備でよくこのダンジョンに飛び込んだな」と呆れている。
なんだか悔しくて、一か八かで剣を横の男に思いっきり振った。
その時だった相手に集中するあまり、転移石を踏んでしまった。
「嘘だろ」
ランダムに転移した先は、5メートルはあるカマキリに似た魔物の前だった。
「キーラーリッパーだと」
どうやら巻き添いとなって転移してしまだのだろう男が、ブルブルと震えながら言った。
確かキラーリッパーはBランクだったはず。
キラーリッパーがヨダレを零しながら男に飛びかかる。
「グハッ…」
ギラギラと光る鋭利なカマが、男の剣を切り裂きそのまま男に致命傷を与えた。
男から脅威がなくなったと判断したキラーリッパーが、ぐるりんと顔だけこちらを見た。
「ああああ…」
圧倒的な絶望の前に俺は何も考えることができなかった。