目が覚めたら
読んでくださってありがとうございます!
(あったかいな…お母さんみたいなあったかさ)
((幸せになりなさい。))
シュナリアの夢に2人の女性が現れた。
1人はシュナリアを拾って育てた女性
もうひとりはどこか懐かしいと感じる女性
シュナリアの産みの親だ。本能で理解したのだろう。2人とも自分の母親だと
(お母さん…?)
((ええ、そうよ))
目からポロポロと涙が流れだした。
(お母さん…会いたかった…)
母と呼びつつ2人に話しかけるシュナリアに
((もう大丈夫よ。あなたはきっと幸せになれるわ。お母さん達はお空で見守っているからね。))
(行かないで!!わたしも…)
縋り付くような声で叫ぶが
さとすような目で
((だめよ。あなたが目を覚ますのを今か今かと待っている人たちがいるのよ?だからもう目を覚ましなさい。ほら…))
(お母さん……産んでくれてありがとう。育ててくれてありがとう。本当に…)
涙が止まらないシュナリアに優しい目を向けた2人の母親は
((愛しているわ。))
そう言葉を残した。
何かに強制的に引っ張られるような意識のもとシュナリアは目を覚ました。
パ…
目を開けようとしたがそれより先に声が聞こえた。
「シュナが泣いているぞ。なぜだ。お前は国王付きの医者であろう。なぜ…」
「父上、シュナはなにか悲しい夢でも見たのでしょう。そんな殺気を出さないでください。」
(シュナ…?誰…?私はどこで寝ているの?)
目を恐る恐る開けみたその先には
(私と同じ髪の色…)
「父上、シュナが!目を!」
「よかった…」
医者は自分の首が物理的にはね飛ばされる恐怖から開放された
「目を覚ましたか!私が分かるか?シュナの父だ。」
「私はシュナの兄のルーカスだ。」
いきなり父と兄と言われ聞いたことも無い名で呼ばれたシュナリアは恐怖のあまり体を縮こまらせベッドからおりて逃げようとした。
「ごめんなさい…!!すぐ出ていきますから!!」
「あ、待ちなさい!」
猫でも捕まえるかのように捕まえられたシュナは居心地のいいベットに連れ戻された。
「説明するぞ。お前の名前はシュナリア。このアルストニア公爵家の一人娘だ。」
「違います、私はそんなに大層な身分じゃありません!アルストニア公爵家はこの国で王家とほぼ同等の権力をもつ家ですよね。ありえません。」
落ち着いた声で話しかけられたからか、いつものように少し冷静に話すことが出来た。
「本当なんだ…」
「精霊様からも言ってください。」
「このもの達が言っているのはすべて本当のことだ。」
この世界で唯一の精霊様がそう言っている。
ありえないかもしれないが精霊様が嘘をつくはずがない…
「では…ほんとうに…?」
父親と名乗る人物の目は真剣な目をしていた。
「本当だ。シュナは私の娘なんだ。」
「同じ髪の色…本当にお父さん…?」
「あぁ、髪もそうだが、それにお前が持っていた短剣は私が生まれて間もないシュナに持たせたものだ。他人がお前から引き離すことは出来なかっただろう?何よりの証拠になる。」
「そろそろ信じてやれ。こんな巨体の男が娘に信じて貰えなくてメソメソしているのはそろそろ見れられん。」
最後の精霊様の言葉と夢の中でのお母さんの言葉、私を待っている人…
「7年間見つけてやれなくてすまない。しかしこれからは私たちがシュナを幸せにしよう。約束する。」
「私もだよ?シュナ?兄として、家族として大切にする。」
(私の家族…信じてもいいのかな…)
まだ怖かった。しかも男性となれば特に…
(暴力は振るわれないかな…)
心配だったが、カイルがあまりにも真剣な顔をしてじっとシュナを見ていた。
「お…お父さん?お兄ちゃん?」
「「よろしく私たちの愛しい娘(妹)」」
「はぁ…ようやく終わったか…それで、お前の名は?」
「精霊様…私の名前は…」
横目でチラッとカイルとルーカスを見つめると頷いてくれた。
「私の名前は…シュナリアです。」
「我の名はサイラス。よろしく我の愛しの契約者。」
サイラスの口から契約と言う言葉が飛び出した瞬間心臓が飛び出るかと思うほど驚いたシュナリアは
「契約…?!私と…?」
「あぁそうだ。シュナリアの魔力は我と波長が合うのだ。精霊は自分の契約者となる人間が自然にわかるようになっている。しかも先程名を交換したであろう?もう契約は終わっている。」
(あの時か…でも…)
「私なんかで…大丈夫なのですか?」
「シュナリアしかだめだ。我のことはこれからサイラスと呼べ。様は要らない。これからよろしく。」
初めて誰かに自分を必要とされたシュナははにかんで答えた。
「よろしくお願いいたしますサイラス。」
サイラスが横目でチラッとカイルとルーカスをみると
デレデレに溶けていた。
((可愛い…))
(これから面白くなりそうだな)
そう思うサイラスはふっと笑みをこぼした。
「皆に紹介する。アルストニア公爵家の一人娘の娘のシュナリアだ。」
フロアに集まったアルストニア公爵家の仕える全ての人々はみんな同じことを思った。
(可愛すぎる!!!)
(何あの触ったら崩れ去ってしまいそうなか弱さは!私が守ってさしあげないと!)
(ごっついカイル様と比べなんて可愛らしいんだ!!)
(ルーカス様も美しいけどシュナリア様は別次元ね!!!)
そう、お風呂に入り、身だしなみを整えたシュナリアは月の女神と見間違うほど美しかったのだ。
(うむ。さすが我の契約者。)
((可愛すぎる!!!))
普段は冷血公爵、氷の貴公子と呼ばれるカイルとルーカスはどこにいったのか、見た瞬間デレデレとニコニコの笑顔にするほどだ。
こうして、白銀の髪と、青紫の目を持つ公爵令嬢シュナリアの大切に慈しまれる生活が始まった。
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