短剣の謎
読んでくださってありがとうございます!
箱の中で水に溺れ、息も出来なくなった私を助けてくれたのは私に残されていた短剣だった。
私の前に浮いた短剣は箱の鍵を壊し
私を風魔法で陸にあげてくれた。
貴族が使う魔法。なぜ短剣が?
なんで短剣が意志を持つように動いているの?
私を陸にあげた短剣は座り込んで呆然としている私の目の前にゆっくりと落ち、ゆらりと光が短剣から立ち上り、人の形をとった。それは私が本で読んだこの世界にたった1人しかいない精霊の姿とよく似ていた。
「精霊様…です…か?」
「あぁそうだ。お前は全く…我はお前の本当の母親が死ぬ間際に頼まれたのだ。」
「お母さん…?」
なんで、本当のお母さん?どういう…
「お前の本当の母親は我と魔力の波長があい、契約はしなかったがあちらには気づかれていたようで、盗賊に襲われていた中最初で最後の意思疎通でお前を逃がすように頼まれたのだ。」
思考が停止した。
「もう…いないの?」
「あぁ強い魔力を持っていたが産後の疲れで疲弊していたようだ。お前だけでも逃がしたいと強く我に願った。我は契約者の頼みしか基本聞かないがな…長年のよい魔力の波長を感じさせてくれたお礼だの代わりに特別に願いを聞き入れた。」
「どうして…私のお母さんはみんな死んじゃうの…?なんで…」
(もう疲れたよ…)
冷たい水に浸かり、風も吹く中、あまりにも酷な話を聞いた少女はそのまま気を失ってしまった。
「はぁ…生まれた頃から見守って来たが…これが我の主となるのか…全く…自分の主となるものの魔力を見つけたら自然と契約がなされるはずなのだが…お前が心の中で我を縛り付けていたおかげで今まで何も助けてやれなかったでは無いか。我を縛り付けられるほどの魔力か…まぁやっとこれでお前を助けられるな、これからよろしく…我が主よ」
(短剣の魔力を少しかりて宿りつつ主にくっついていたため外から見たことはなかったな…ふむ、この家紋…アルストニア公爵家だな…全く…我は主を運んでばかりだな…)
凍えきった体をを火魔法で包みあたためながらこの世界の唯一の精霊サイラスは主を、少女を7年間ずっと探し続けていた公爵家へと連れていった。
(あのまま主が閉め切った心を開き助けを求めていなかったら我が助けられなかったかもしれないと思うと…あやつらが主の心の傷を癒せるといいのだか…)
「おい。起きろ。」
(気配がダダ漏れだ…ぬ…これは…魔力ではない…?)
「起きている。お前は誰だ。」
「我は精霊サイラス。して、お前は娘を探しているな?」
明らかに魔力とはちがう力を感じていたためすぐ精霊だと聞いて納得したアルストニア公爵家の当主は
「これは…精霊様…ご無礼を致しました… 私はアルストニア公爵家当主カイルと申します。私は亡くなった妻が娘を見せるために行った妻の実家から帰る途中、盗賊に襲われたあと、見つける事の出来なくなった娘をこの7年間ずっと探しております…それが…」
困惑したように言うカイルの声を遮り
「この短剣は?お前が所有の印を魔力で刻んだ物に間違いないな?」
目を見開き驚いているカイルは震える声で
「それは…娘に私が… ま、まさか…」
「そうだ。」
「娘は!!!娘はどこですか!!」
「ここだ。」
サイラスは見えないようにしていた幻影の魔法を解いた。
「あぁ…」
僅かに目に涙を浮かべ娘を7年ぶりにみたカイルは
「間違いない。この髪色、この短剣…私の娘だ…精霊様…ですが何故!」
「我はお前の妻に頼まれたのだ。娘を逃がしてくれと。」
「あぁアリシア…」
「我も主のためにすぐここに連れてこようとしたが、主が心を閉め切ってしまったのだ。精霊は心を開く人間としか干渉が出来ない。契約が完全になされていたら別だが、私はまだ主の名を知らない。だから魔力の繋がりは出来たが、名によっての契約ができていなかったのだ。」
「では今になってなぜ!」
「主が強い感情によって完全に心を開き願ったのだ。助けてくれと。主は死にかけるまで心を開かなかったのだ。」
悲痛な表情を娘に向けるサイラスを見てカイルは娘の今までの暮らしを悟った。今まで見つけることの出来なかった娘を全力で守ると決め、娘の今までの暮らしは後ですべて精霊に聞こうと思いつつ、
「そうですが…私は娘が精霊様に連れられ戻ってきたことを屋敷中のものに起こしてでも知らせてきます。絶対的な精霊様の存在があれば信じないものはいないでしょう。娘…シュナリアは私のベットに寝かせておいてあげてください。」
「わかった。一応我の精霊力を薄く広げておくぞ。」
「ありがとうございます。」
そう言いつつやっと再会できた娘をチラチラたみながら伝えに言った。
「これは…いかん!」
咄嗟に防音と衝撃を防ぐ防御壁を張ったサイラスは自分の判断が正しかったと理解した。
ドッカーーーン!!!
屋敷のの1部を破壊し、その衝撃と音で屋敷中の者が起き上がり急いで駆けつけた。
「カイル様…」
「父上…」
壁が破壊され月明かりが入ってくる。
その光に照らされた白銀の髪をもつ男…ゆっくりと屋敷の者を振り返った蒼い目をしたこのアルストニア公爵家の当主は…
滅多に表情を崩さないその男は
「娘がシュナリアが…精霊様に連れられて…帰ってきた…」
と僅かに笑みを見せながら言った。
帰ってきた経緯を屋敷のもの全てに話し終えた後…
「俺の妹が…帰ってきたのか…」
「お嬢様が…」
「騒ぐな…シュナリアはいま眠っている。」
((((誰だよ1番煩くしたのは!))))
という言葉を誰もが思いつつ
「準備を頼んだ。」
一言指示をセバスに出したカイルは
「娘が目を覚ましたら皆に紹介する。」
と言い残し戻っていった。
衝撃の事実を知らされた屋敷のものみんなは
シュナリアの兄であるルーカスに部屋に戻ってくれと伝え、
急いでシュナリアの部屋の準備や、カイルが壊した壁、この家初めての女の子に対する心得など、それぞれが動き出した。
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