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I were わたしは私たちです  作者: 菊池一心
5/23

5.

 ある程度の荷物の片づけが終わったところで、居間へと戻ると、既にアリスはソファにもたれ掛かって、本を読んでいた。

元気娘な性格に似合わないが、その容姿に似合った趣味の持ち主である。黙っていれば、深窓の令嬢ってところなのだが、それは本人に言ったところで意味がないだろうが。

「そういえば、お前が持ってきていた本とかはどこに置いてきたんだ? 見た感じ玄関とか居間にはなかったけど」            

彼女の持ち物が多かった理由には、相当数の本が含まれていた。

ざっと二十から三十冊ほど。

そのどれもがベッタベタ恋愛小説ではあったが。

「え? カナちゃんの部屋とお兄ちゃんの部屋に置いてきた」

 「俺の部屋?」

 「お兄ちゃんが昨日途中まで読んでたの置いてきたよ。続き読むでしょ?」

 そういえば、暇つぶしに読んでたな。アリスの持っている本を借りて読んでたな。

 「ありがとう、あとで読むわ」

 「そうそう、言うの忘れてた。お兄ちゃんの部屋さ」

 本から一切目線を逸らさずにアリスは言う。

 「俺の部屋が何かしたか?」

「うん、何かした。なんかエロい感じのやつとか、あれライトノベル? お兄ちゃんも読むんだね」

 俺の部屋に入った時に見たんだろう。平積みになっている本の山々を。いつか掃除しようと思いながらそのままになっているライトノベルや、新書、文庫本、その他諸々。

 「まあ、読むよ。エロいやつは余計だ。結構面白いのもあるから今度読むか?」

 「面白いのお願いね。出来れば恋愛もの」

 「恋愛厨かよ……」

 「あ、そうそう、それで本。本がいっぱいあったね」

 「そういや、整理してなかったな。今度片付けないとな」

 「なんか、すっごい山になってるし、足の踏み場もないって状態だったよ。よくあれ崩れないね」

 積み上げた本の山はいくつかは自分の腰の高さにもなっているだろう。よくもまあ、そこまで積み上げたものだ。

 「いや、何とか、バランスを保っているよ、ほんと芸術的だ」

 「……お兄ちゃん、さすがに掃除したほうがいいよ」

 ついに本からこちらの視線を向けたアリスはあきれ顔でそう言う。中学生にたしなめられるとは。

 「あ、うん。そうだな。何とか掃除しておくよ」

「カナちゃんがお兄ちゃんの部屋がやばいって言ってた意味がわかったよ」

どうやら妹様からすでに情報が行っていたようだ。

「お兄ちゃん、今日は片づけだね。頑張って」

「そうですね、頑張ります」

はとこの、年下の女の子に掃除を頑張れと言われることになるとは想像もしていなかった。部屋を片付けるようには、妹にちょくちょく言われてたな。

「仕方がない。頑張りますか」

自分を奮い立たせるために独り言をつぶやく。

 そうして、足の踏み場もないとアリスに言われた魔境へ足を踏み入れる。

 大袈裟に言ったけど、つい数日前までここで俺寝てたんだよな。

 よく埋もれずに済んだな。




 彼のいなくなった部屋で一人。

「……ほんと、キー君は変わってないね」

 彼女はそうつぶやく。


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