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I were わたしは私たちです  作者: 菊池一心
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プロローグ

どうもです。

ずっと昔に思い浮かんだキーワードとか色々と混ぜた闇鍋みたいになりそうですが、なんとか連載してみます。もし、そうもしも興味を持ったよって人いたら読んでみてください

 「ねえ? これからどうする?」

 彼女はそう陽気に笑いながら、俺の手を引いた。

 それが、現実なのか夢なのか。判断が付かない。

 あるいはそのまま溺れていたかった。

 優しすぎるその夢の中に。

 終わったはずの現実が、物語のように新たな展開を経て、新しく始まる。

 そんなわけの分からない空想に溺れていたかった。

 


 「ねえ、来年も花火見ようよ」

 「そうだな、来年も身に来ようか」

 あるかも分からない未来の事を約束して。

 

 「あはは、ねえ、これ美味しいから食べてみない?」

 どうでもいいことに無邪気に笑いながら、日々を過ごして。

 ご都合主義のようなありふれた幸せってやつに日々溺れていたかった。

 

 欲しかったのはハッピーエンドなんかじゃなくていつまでも続く日常。俺たちの旅はまだ終わらないと言いながら、連載の終了した漫画のその後の世界。

 作者すら書き込むことのできないその後の世界で日々幸せでいられたらよかったのに。

 

 「ねえ、何で遅れたんだよ!」

 誰かの激昂が響いた。

 「どうして、どうして、一緒にいなかったんだ」

 「ごめん」

 「ごめんじゃないよ、何で、な、何で?」

 男はただただ、うなだれて謝罪の言葉を告げるだけ。それをどこか俺は俯瞰的に見ていた。

 もう一人は女性だった。その顔は黒い靄のようなものに隠されて見えない。だけど、なんとなく泣いていることだけは分かった。どこにぶつければいいのか分からないその怒りを、悲しみを目の前でうなだれている男にぶつける。

 それが、正しくもなんともないこと知りながら。それでも止められない感情の行き場を探して。

 黒い服に雪が落ちる。それは最初からそこになかったかのように溶けて消える。

 そういえば、あの日もこんな雪の日だったと思い出した。


 


 「ねえ、お兄ちゃん?」

 少女は青年に尋ねる。

 「なんだ?」

 「なんか一つだけ願いが叶うなら何が良い?」

 「いきなりだな。それって願いを増やしてほしいって願いはダメか?」

 「それはずるいと思うよ。願いは一つだけだから本当に叶えてくれるのに、増やしたりしたら神様も願いを叶えてくれなくなっちゃうよ」

 「そうか、じゃあ、ひとつなら叶えてくれるのか?」

 「そうだね。一つなら」

 


 願いか……

 考えるほどの間も必要なかった。

 「謝りたいかな」

 「謝る? なんか悪いことしたのお兄ちゃん」

 「ああ、うんと悪いことしちゃった。だから、神様にその人に会わせてってお願いして謝りたいかな」

 「なんか変なお願い事だね?」

 「そうかな。そうかもね」

 

 少女はそれだけ聞くと、さっさとどこかに出かけてしまった。

 「そうだね。大丈夫。お兄ちゃんのその願いはきっと叶うよ」

 最後にそんな風に言いながら。




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