mirai.txt(三十と一夜の短篇第25回)
俺は情報を買った。未来からの情報だ。これがあれば博打に勝てるし、株も当てられる。
通信機に100万円、情報料1MBに1万円支払った。将来、大金を当てられるなら安いもんだ。
最初はうさんくさいと思ったよ。でもこの通信は科学的な理論に基づいている。
未来からの通信は光速を超える素粒子を利用したものだ。光速以上に加速した素粒子は時間を逆行し、パソコンの横にある通信機に取り込まれる。通信機のポートには毎秒最大960個の素粒子が降り注ぐ。1/960秒の間に素粒子があれば1、なければ0だ。1と0の羅列はパソコンに送られてテキストデータとなる。この原理で毎秒最大60文字の情報が受信できるらしい。
1MBもあれば50万字以上の情報が載っている。情報の日付とジャンルは指定済みだから50万字もあれば十分だ。過去から未来に要求を送るのは簡単だ。メモを1つ置けばいい。未来の人間は買った容量の範囲内で最適な情報を送ってくれる。読むのはめんどうだが、金を得るためにはしかたない。
画面に開いた『mirai.txt』はまだ真っ白だ。