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最終話 異世界の 黄昏背負う モンスター

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


神との決着がついてから、その力を取り込んだユウゴは空間転移が可能となり、戦場となった亜空間から神人類や魔王達を引き連れて、あちらの世界へと跳んだ。


「まさか魔王と協力することになるとは……」

「まさか神人類と協力することになるとは……」


怪我の功名ではあるが、今回の戦いは相互理解を深める一端ともなり、その後、様々な話し合いが行われて、人と魔族は互いに同盟を結ぶ事と相成った。

その一つの成果が、神人類と魔王達による連合組織の設立といった流れである。

国や【ギルド】に属していた者達が、それらの所属を離れ、全員がその連合組織にまとまった。

さらに魔王達を加えた彼等は、完全中立を掲げた独立組織として活動を開始し、その主な仕事は、世界の危機に立ち向かう事と宣言したのだ。

人間も魔族も別け隔てなく、平穏を乱すものに対して、彼等は剣を振るうとした彼等の声明は、最初こそ混乱を招いたが、やがてそれも落ち着いた。

それにより、人間の国同士や魔族の国同士はそれぞれにまとまり、相互協力の元に発展していく事を誓ったのである。


そんな経緯もあって、ラヴァは現代日本(こちら)へ来る事を断念した。

この世界の全ての種族が協力しあう事になった今、排他的なエルフや、引きこもりますがちなドワーフに顔が利くというのが理由である。

「まぁ、こちらの世界で我輩の趣向を育ててみるのである」と、一部のエルフに熱い視線を向けられながら語っていた姿が印象的であった。

ちなみに、最後までヒサメにストーキングしていたレズンは、念入りに絞め落とされて、ユウゴ達が帰るまでフェロモンを遮断する特殊な檻に入れられていた。


何はともあれ、あちらの世界でひとまずの決着がつき、ユウゴ達も自分達の世界へと帰ってきたのであった……。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


────神との最終決戦から、三年の月日が流れていた。

こちらの世界に戻ってきたユウゴ達は、早速、色々な妖怪に狙われる事となる。

召喚の影響でパワーアップしていた彼等は、その桁外れの妖気から脅威の対象として見られ、人からも妖怪からも危険視されたからだ。

何だかんだと揉めに揉め、結局落ち着いた頃には、ヒサメは東日本の、ビャッコは西日本の長として祭り上げられる事となっていた。

ちなみにユウゴは関東に住まい、西と東の相談役といったポジションに収まる。

そんな訳で、今は争いも無く、こちらの世界では(・・・・・・・・)平穏な日々を過ごしていた。


在りし日の異世界での思い出をぼんやりと思い浮かべつつ、現在の住まいである一軒家のリビングで、ユウゴはちょこちょことスマホを弄っていた。

「んん……?機能が多すぎるのも考えものだな……」

最近になってようやくガラケーからスマホに移行したユウゴだったが、その多機能ぶりを把握しきれずに悪戦苦闘している。

神を取り込んでも、こういうおっさんに有りがちな新しい物への順応性の低さは変わらない。

面倒だからガラケーに戻そうかな……などと泣き言を内心で呟いていると、トタトタと軽い足音と共に彼の足にしがみつく小さな人影があった。

ユウゴがそちらに顔を向けると、足元の小さな人影はにぱっと満面の笑顔を見せる。


「とーたま!」

舌っ足らずな口調で自分を呼ぶ愛娘に、ユウゴもだらしない笑みを浮かべた。

「どうした、リナ?」

娘を抱き上げると、彼女を追いかけてきた人物がよく捕まえてくれたと、ため息を吐きながらリビングに入ってきた。

「まったく……お転婆な娘じゃな。誰に似たんじゃ」

カジュアルな服装の銀髪の美女が、ユウゴの手から娘を受けとる。

「そりゃ、お前だろフェルリア」

苦笑するユウゴに、そんなはずはないのじゃがなと、なぜか自信満々で人間に化けたフェルリアが胸を張った。

化ける……とはいっても、銀の体毛と尖った耳を隠して誤魔化しているだけだが、表向きは言葉遣いがちょっと変わった、外国人のお嫁さんである。

ちなみに、娘のリナも今は両親の魔力で人間にカムフラージュしているが、その正体はユウゴ譲りの角を持った黒銀の毛並みのエルフといった感じだ。

そんな、旦那の特徴を継いだ自分そっくりの娘を抱いて、ワシのようにもう少しおしとやかにならねばなと言い聞かせていた。


今現在、上記の通りユウゴとフェルリア、そして娘のリナは人間として市勢に紛れて暮らしている。

人間の中にも、妖怪と交流を持ち、世間のバランスを崩さぬよう暗躍する者達がいて、そういった組織とユウゴ達は繋がっていた。

妖怪側からすれば人間に紛れやすく(もちろん犯罪行為は無しだが)、人間側からすれば妖怪の起こす事件を未然に防ぐ事ができる。

さらに新しい東西の長に面識があり、自身が強い妖怪であるユウゴとの協力関係は、それらの組織に多大なメリットをもたらしていた。

お陰で、ユウゴ達は人間としての戸籍と住居、そして外法を働く人や妖怪の取り締まりといった、就職先(?)の斡旋などの恩恵を受けていたのだ。


そんな、この世界の光と闇を仲介者を担うユウゴだったが、ここにもうひとつ背負わねばならぬ事柄があった。


『~♪♪~~♪~♪~~!』

妻や娘とじゃれあっていたユウゴだったが、突然彼のスマホからとある呼び出し音が響く。

フェルリア共々、真剣な表情になったユウゴは、スマホを手に取ると【通話】をタップした。


『お久しぶりですわ、ユウゴ様ぁ!』

予想通りな電話口の向こうから聞こえてくる声に、フェルリアは顔を僅かにしかめる。

そんな彼女に苦笑しつつ、ユウゴは通話の相手、異世界の神人類である(・・・・・・・・・・)エリエスに返事をした(・・・・・・・・・・)

「よぉ、久しぶり。また(・・)なんぞあったのか(・・・・・・・・)?」

スマホどころか、電話すら無いはずの向こうとの通話のを可能にしているのは、ひとえにユウゴが取り込んだ神の力所以のものだ。

そして、そこまでして異世界(むこう)との通信手段を残しておかねば成らない理由があった。

『はい。我々だけでは手に余る案件ですので、ユウゴ様のお力をお借りしたいのです』


《神の不在による世界の歪み》


それこそが、ユウゴがあちらの世界といまだに繋がっている理由である。

神という頂点がいなくなったあちらの世界では、神人類や魔王達だけでは解決しきれない問題が、時折起こるようになっていた。


かつて神が戯れに作った太古の魔獣の復活だの、危険過ぎるために神の力で封印されていた世界を滅ぼしかねない魔法の出現だの、うまく循環しなくなって世界に天変地異をもたらしそうになった霊脈の調整だの……。


意外と神の仕事は多く、それが失われた要因が彼等あった以上、ユウゴも知らんふりをしている訳にはいかなくなっていたのだ。


「で?今回は何がどうしたんだ?」

『はい、かつて大地に融合して眠りについた、《神の相方》が復活しようとしています』

いわゆる、大地母神の復活と聞いて、ユウゴはぶはっ!と噴き出してしまう。

「な、なんで今ごろそんなもんが!?」

『おそらく……神を討ち取った事が原因ではないかと……』

神は神なりに、何らかの繋がりがあったのかもしれませんと、エリエスは告げる。

確かに、取り込んだ神の部分が何やら反応するものがあったので、そういうものかとユウゴも頭を抱えつつも納得してしまった。


「あー、わかった。ヒサメ達にも連絡つけて、異世界(そっち)に向かう」

『お願いいたしますわ!あ、なお私、夜伽のお相手をすべく新しい下着を……』

エリエスがそこまで言った所で、外部スピーカーで話を聞いていたフェルリアが強引に通話を切る。

「……あー、というわけで、ちょっと向こうに行ってくるわ」

「うむうむ。ならば、ワシも同行しよう」

どことなく怖い笑顔を浮かべ、有無をも言わさぬ迫力でフェルリアが提案してきた。

「おい、ちょっと待て!リナはどうするつもりだ!?」

「この子も連れて行けばよかろう」

「なっ!?危ないかもしれないだろう!」

「ワシが守る!」

キッパリと言い切る母の顔をしたフェルリアに、ユウゴは返す言葉を失った。


「それにな、この子自身のためにも、様々な広い世界に触れさせてやりたいのじゃ」

ニコニコと笑う娘に頬ずりしながらフェルリアは言う。

その意見自体には、ユウゴも賛成であった。

「可愛い子には旅をさせろ……か」

小さなため息を吐いて、ユウゴはリナの頭を撫でた。

「リナ、父さんと母さんはちょっと怖い場所に行かなきゃならないんだけど、お前も一緒に来るか?」

「うん!」

「よし!さすがワシに似て勇敢じゃのう!」

元気に答える愛娘を抱き締めながら、フェルリアはその勇気を称える。

(お前に似たら、おしとやかなんじゃなかったのかよ……)

舌の根も乾かぬ内に主張が変わるフェルリアに苦笑していると、なんじゃ?と首を傾げられた。

藪をつついても仕方ないので、なんでもないよと誤魔化すように返しながら、ユウゴはフェルリアとリナの頭を撫でた。


「さて、それじゃあヒサメ達にも連絡するか」

慣れぬスマホを操作してヒサメ達の番号を探しながら、ユウゴは転移魔法を発動させてゲートを開く。

異世界の黄昏を背負う事になった妖怪達(モンスター)の旅はまだしばらく続きそうだった。

これにて完結させていただきます。

お付き合いいただきありがとうございました。


なお、次作「逃走、盾役少女」を投稿開始しますので、よろしければまたお付き合いください。

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