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64 コヒャク国への侵入

ウヌムにハンドアクスを取られ、メンテナンスが終わるまで手持ちぶさたになっていると、ぞろぞろと他のドワーフ達が集まってきた。

「なんじゃ、いい武器じゃねえか」

「ラーダッタの……?」

「あいつらの装備、全部そうなんか?」

ウヌムに話を聞き、ギラリと目を光らせたドワーフ達が自分達にもメンテナンスさせろと、ユウゴ達の装備を引き剥がしにかかる!

「おい、こら!止めろっつーの!」

「やかましい!もっとすげえ着け心地にしてやるから、大人しくしやがれ!」

聞く耳持たずに群がるドワーフ達に身ぐるみ剥がされ、追い剥ぎに襲われたかのように残されたユウゴ達は、ドワーフのバイタリティに驚きつつ、早くメンテナンスが終わる事を祈るしかなかった……。


──翌日。

幸いにも昼前に全てのメンテナンスが終了し、目にクマを浮かべながらも充実した表情のドワーフ達から装備を返してもらう。

さらに、先のリュミエルとの戦いで愛用の魔法弓を失ったフェルリアのために、試作品の魔法弓まで持ってきてくれた。

「前にお前さんが使ってた、魔法弓を参考に作った試作品じゃ。魔力を矢にするための構造を今までに無い仕様にしてあるから、是非とも後で感想と問題点を聞かせてくれ!」

「それ、ワシが実験台ということか?」

新技術という名の実験に付き合わされる形になるフェルリアが嫌そうな顔をするが、ドワーフ達は気にした様子もない。

むしろ、誰よりも新しい技術に触れられるのだから、光栄に思えと言わんばかりだった。


そんなこんなで試作品の細かい説明を受け、出発の準備が整ったユウゴ達をウヌムが送ってくれると申し出る。

「ちょうどコヒャク国の出入り口に近い集落に、材料を受け取りに行く用事があるからのぅ。ついでに乗っていくといいわ」

そう言って、ウヌムが指差したのは巨大な荷台を引く、大型の下位火竜(レッサーサラマンダー)だった。

空の荷台はドワーフ達の他にユウゴ達が乗っても余裕のスペースがあり、問題は無さそうだ。

「おう、ありがとうな」

礼を言ってウヌム達と別れた一行は、竜車に揺られながら、地下大空洞を進んでいった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「それじゃあ、こっから登って行けばコヒャク側の大森林地帯の近くにでっからよ」

「わかった。ここまで助かったよ」

のんびりとした竜車での道のりを終え、御者をしていたドワーフに礼を言って、ユウゴ達は教えられた道を登っていく。

やがて地上から差し込む光が見え、徐々に明るさがましていった。

「……ふぅ」

無事、地上へと出ることができたユウゴは、眼下に広がる森を見ながら吐息を漏らす。

「なんというか……あまり代わり映えのしない風景だね」

そんな身も蓋も無い感想をヒサメが口にするが、概ねユウゴも同感だった。

ガハサ山脈をぐるりと囲むように広がるギスハーブン大森林は、コヒャク側の風景もザクスン側とさほど変化はありはしない。

強いて言うなら、森林の木々にわずかな違いがあるくらいだろうか。


「……こんな所でも懐かしく感じる物じゃな」

ポツリと呟いたフェルリアの言葉に気付いたユウゴは、彼女の顔を除き込む。

「かつての戦で、ワシが人間と戦っておったのがこの地というだけじゃよ」

心配するなと笑いながら、彼女はもう一度森の方へ目線を戻す。

まだフェルリアがエルフの集落にいた頃、エルフと人間との間に戦争があり、その時に戦っていたのがコヒャク国である。

そこで彼女は最前線で戦い、リュミエルの一計で片腕を切り落とされて放逐されたのだ。

「ワシの恨みが始まった地でもあったが……今はどうでもよいな」

自らの新たな腕を見ながら、フェルリアは吹っ切れたように呟く。

そんな彼女の背中を、ユウゴは優しく叩いた。

「ま、終わった事は気にしたってしょうがねえよ。さっさとレズンを捕まえて、俺達の世界に行くとしよう」

「……ああ」

ユウゴの言葉に大きく頷き、一同は魔王レズンの拠点である最南の島を目指して、一歩目を踏み出した。

だが!


「!?」

ユウゴ達が歩き出したとほぼ同時に、目の前の森から爆発じみた衝撃が木々を揺らした!

「今のは……風魔法じゃな」

エルフであるフェルリアがそう判断した通り、衝撃こそ大きかったものの、爆発に付き物とも言える炎の手は上がっていない。

彼女が言うには、大気中の魔力を圧縮し、一気に解放させる事で衝撃波を発生させる風魔法が使われたらしいのとことだった。

「そんな魔法を好んで使うのは、ワシらエルフくらいのものじゃろうな……」

つまりは、あの爆発が起こった場所でエルフが戦闘を行っている可能性が高いということだ。

「行ってみるしかないな」

エルフを助けるにしろ敵対するにしろ、何らかの情報は手に入るかもしれない。

コヒャク国内の現状を知る良い機会になることを祈りつつ、ユウゴ達は森に向かって走り出した。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


木々が生い茂る深い森の中、まるで広場のように開かれた一帯で、数人のエルフと【ギルド】メンバーらしき者達を含むコヒャク国の兵とおぼしき集団が睨み合っていた。


「無駄な抵抗は止めろ。そこの女どもを引き渡せば、見逃してやると言っている」

兵士の一人がそう呼び掛けるが、エルフ達に応じるつもりはないようだ。

彼等は素早く呪文の詠唱をすると、刃のような風魔法を兵士達に向かって放った!

「無駄だというのに」

呆れたような呟きを漏らす兵士の言葉通り、風の刃は彼等に触れたと同時に、薄皮一枚切り裂く事もなく消滅する。

「我々にお前ら(エルフ)の魔法は効かん。なんせエルフの加護がついて(・・・・・・・・・・)いるからな(・・・・・)

「くぅ……なぜだ……なぜお前らにエルフの加護が……」

エルフ達が困惑するのも無理はない。

彼等に敵対し、エルフ狩りを行っている連中に、仲間(エルフ)による護りの加護がかかっているのだから。

そして、かの加護は風魔法だけでなく、彼等が得意とする弓矢までも無効にしてしまっていた。

何度矢を放とうとも、あらぬ方向に弾かれてしまい、一本たりとも敵を射ぬいた物は無い。


「弓も魔法も封じられては、お前らに打つ手はあるまい。さあ、諦めて女を渡せ」

戦意を喪失しかけているエルフ達に、兵士に雇われている【ギルド】の者達が近づいていく。

そうして、エルフの女に手を伸ばした、次の瞬間。

ヒュンと軽い音と共に飛来した何かが、その【ギルド】メンバーの首をはねる!

男の首を飛ばして尚、数本の木を斬り倒しひときわ太い大木の幹に深々と突き刺さってようやく止まったそれは、一本のハンドアクスだった。

自分に何が起きたのか理解していないような表情のまま、斬り飛ばされた頭は斬り飛ばしたハンドアクスを見つめながら、地面に落ちる。

それとほとんど同時に、胴体の切り口から噴水のように血が噴き出して、辺りを赤く染めた。

「キャアァァァァッ!!!!」

エルフの絶叫が響く中で、兵士達の視線がハンドアクスが飛んできた方向に向かう。


「一応は生け捕りにして話を聞くんじゃなかったのかい?なにやら、思いきり絶命しているようだが?」

「いや、首を飛ばすつもりはなかったんだが……。あそこまで切れ味が鋭くなってるとは思わなかったわ」

のんきな雰囲気で物騒な会話なんぞをしながら、藪を突き抜けてこの広場に姿を現したのは、やはりユウゴ達であった。

現れて早々、自分達に集まる注目に気付いたユウゴは、ニヤリと笑って大胆不敵に言い放つ。

「よーし、全員動くな。お前らみんな、武器を捨てて大人しくしてもらおうか!」

あまりに唐突な現れ方と突然な物言いに、いままで争っていたエルフと兵士達は口を開けてポカンとしてしまう。

しかし、ハッと我に返った【ギルド】の一人が、ユウゴ達を睨みつけながら剣を抜いて近づいてきた。

「いきなり出てきて、訳のわかんねぇ事を言ってんじゃ……」

剣先を向けて寄ってきた男の胸に、ユウゴの後ろに控えていたラヴァの拳が突き刺さる!

金属製の胸当てがボッコリとへこみ、それだけでは飽きたらずに男の体を軽々と吹き飛ばす!

吹っ飛ばされた男は大木に激突してそのまま地面に突っ伏して起き上がってくる事はなかった。


「……何者だ、お前らは?」

仲間の一人が派手にやられたというのに、兵士達のリーダーらしき男は動揺した様子もなく問いかけて来る。

「何者と言われると、通りすがりの者としか言いようがないんだが……」

一見、茶化すようなユウゴの物言いには取り合わず、リーダー格の男はニヤリと笑った。

「ふざけた男だ。しかし、極上の女達を連れているではないか」

兵士達の視線は、ヒサメ達『氷刃』の女性陣に向けられている。

「我々に歯向かった罪は、そこの女達で勘弁してやろう。命が惜しければ、女達を置いてとっとと消えろ」

二人が瞬殺されたとはいえ、人数的には兵士達の方が圧倒的に有利だ。

さらに何か後ろ楯でもあるのだろう。ユウゴ達の強さを感じてはいても、彼等は絶対的な優位を疑ってもいないようだった。


「ふぅ……」

ユウゴの漏らしたため息を諦めのサインと受け取ったのか、兵士達の顔に余裕の笑みが浮かぶ。

だが、返ってきた言葉は彼等が想像していた物とは、まったく違う物だった。

「面倒だな……話はエルフに聞くとして、こいつらは殺っちまうか」

その物憂さげな一言で彼等の運命は決まったと言える。

「馬鹿が……もういい、男どもは殺せ。女は……後で回復魔法をかけるから、動けんようにしてやれ」

リーダー格の男が指示を出すと、血に飢えた獣のように、兵士達は新たな獲物に向かって殺到していった。

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