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57 問答

戦いが終わって数時間後。

二組の特級チームは、いまだ死臭の拭いきれない戦場後で向かい合っていた。


「で、話ってのはなんなんだ?」

呼び出された方のユウゴから、口火を切る。

その質問に、なんと答えようか迷うようなそぶりを見せるフォルノだったが、やがて吹っ切れたのか単刀直入に言葉を口にした。

「駆け引きは苦手なんで、シンプルに聞くぞ……お前ら、一体何者なんだ?」

「…………は?」

内心ギクリとはしたものの、それを表には出さずにユウゴは惚けて見せる。

そんな、なんの事だかわからないといった態度のユウゴ達に、フォルノはさらに質問を重ねた。

「あんたとあんたの仲間達は、強すぎるんだよ(・・・・・・・)

素手でアンデッドの軍団を蹴散らす、ユウゴとラヴァ。

超長距離射撃を平然と行うフェルリア。

常識ではあり得ない程の氷雪魔法を使いこなす、ヒサメにマール。

そして、全く異質な呪符を媒介とした魔法を使うビャッコ。

全員が『神人類』だとでも言うなら、まだ納得できる強さだが、彼等はそうではない。

つまり、『氷刃』というチームその物があまりにも異常過ぎるのだとフォルノは言う。


「はっきり言わせてもらうが、お前らの正体か知りたい」

正体という単語に再びギクリとするも、ユウゴはなんとか平静を装った。

そうしてしばしの間、沈黙の時間が流れる。

「……俺達の正体……か。だが、本当に言っていいのか(・・・・・・・・・・)?」

意味深なユウゴの返しに、フォルノ達は訝しげな表情を浮かべた。

「はっきり言おう。俺達には、確かに隠している正体(・・)がある。しかし、それはザクスン国の暗部に繋がる話だぞ?」

暗部という言葉を聞いて、フォルノ達が眉をしかめる。ついでに、ヒサメ達も眉をしかめた。

(お前らが訝しげな顔してどうすんだ!)

ちょっとは話を合わせるくらいの機転を効かせてほしいと、ユウゴは表には出さずに内心で仲間達に念を送る。


「ユウゴさんの言う通り、ウチらは話せる事と話せん事があるんよ。今まで、表舞台に出られんへんかった理由もな……」

ユウゴの内側を知ってか知らずか、彼をフォローするように間に入ったビャッコがそれらしく濁して言葉を続けた。

その様子に、フォルノ達も追求をしてよいものか、迷っているような素振りを見せる。

基本的に【ギルド】に所属するものは、自由人が多いもので、それは上位のチームなるほど顕著に現れる物だ。

『炎剣』のような特級、しかもリーダーが『神人類』のようなチームは、ことさら権力に絡んでくるような案件を嫌うだろう。

「国が関与……か」

「疑うなら、エリエスとリネッサに聞いてみるといいさ」

ユウゴの出した名前に、『炎剣』メンバーがざわつく。

「それって……」

「確か【騎士団】と【教会】の王族……」

彼等と共に、魔王討伐任務を果たした王族の名を出され、思うところがあったのだろう。

フォルノは小さくため息をついて両手を挙げた。


「わかった。これ以上、詮索したりはしない」

疑うような真似をして悪かったなと、『炎剣』メンバーは頭を下げる。

「無名だったあんたらの異常な強さと、なんかこう……『神人類(おれ)』の勘にちょっと来る(・・)ものがあったんでな」

フォルノの勘はよく当たる、特にメンバーに迫る未知の危険については……とメリラが教えてくれた。

「でも、ヒサメさんもユウゴさんもいい人だし、多分フォルノの考えすぎよね」

そう言ってメリラは笑う。

しかし、その勘は当たらずとも遠からずと言える。ある意味、『神人類』すべてがユウゴ達のターゲットと言えるからだ。

なので、メリラの笑顔に若干の後ろめたさを感じながら、ユウゴ達は曖昧な笑みを浮かべた。

「まぁ、急浮上してきたライバルに対して過敏になってただけかもしれない……変な事で呼び出して悪かったよ」

気にするなとフォルノからの謝罪を受け入れると、彼等は明日早いからと言って先にドワーフ達が用意してくれた休憩所に戻っていった。


そうして残されたユウゴ達だったが、フォルノ達の気配が完全に去ってから大きなため息を吐いた。

「あー……ヤバかった。もしかして、正体がばれたのかと思ったぜ」

額の汗を拭うユウゴに、皆が同意する。

「でも、ユウゴさん……とっさに乗りはしましたけど、王族とやらの名前を出して良ろしかったんかな?」

後で面倒な事になるんじゃ……と心配する彼女に、ユウゴはヒラヒラと手を振って心配ないと告げた。

「ああ、それは大丈夫だ。あいつらには、嘘の生い立ちを話してあるからな」

以前、魔王討伐の際についた嘘を、エリエスとリネッサは完全に信じていた。

仮にフォルノ達がユウゴ達の情報を尋ねに行ったとしても、特に問題はないだろう。


それにしても考えてみれば、『氷刃』は異世界の妖怪にこの世界の魔王。さらには妖怪に転生した魔術師に、妖怪の力を身に付けたエルフといった、異形の者のオンパレードだ。

そんなアウトな連中の集まりに、鍛えぬかれた『神人類(フォルノ)』が反応してもおかしくはないと、今さらながらに危機感を覚える。

「戦って負けるとは思わんのであるが、余計なトラブルを起こすのは危険であるからな」

「まったくだね。無事に現代日本(あっち)に帰るためにも、いらないトラブルは犯したくない」

しかし、彼等はそう思っていても、この調子では他の『神人類』に嗅ぎ付けられないとも限らない。

「ほな、さっさと現代日本(むこう)に戻りませんか?」

ビャッコの口にした言葉に、ユウゴ達はキョトンとした。

寧ろ、なんでキョトンとしてるの?といった感じで、ビャッコは言葉を続ける。

「いや、ほら……『神人類』を倒すって条件だけやったら、リュミエルとデモールを殺った事で満たしてるんと違います?」

そう言われて、今度は皆がポンと手を打つ。


「そっか、そういえばそうだな!」

「いつの間にか条件は満たしていたんだね!」

「なんで気付きませんの!?」

ありえへんと非難するビャッコの声を軽く流して、ユウゴ達は喜びの声を上げた。

「いよいよワシらも、ユウゴ達の世界に行けるんじゃな!」

「うむ!楽しみである!」

「異世界の氷雪魔法……想像するだけでゾクゾクするのです!」

こちらの世界生まれのメンバーが楽しそうに語り合うのを見て、ユウゴ達も顔をほころばせる。

「むこうの世界は色々と面白いぜ」

ユウゴの言葉に、フェルリア達はさらに目を輝かせた。


「こちらの世界では見たこともないような物があるのだろうな……」

「ああ、それは保証する」

フェルリアの言葉に、ユウゴは力強く頷く。

「我輩の眼鏡にかなう良い男もいるのであろうなぁ……」

「まぁ……同好の志はいると思う」

ラヴァの漏らした言葉に、ユウゴは自信なさげに首を傾げる。

「ヒサメ姉さまみたいな氷雪魔法を身に付けられるのですよね!?」

「いや……それはヒサメに聞いてもらわんと……」

マールの期待に満ちた視線から目をそらし、ヒサメに丸投げした。


「ま、まぁ……とりあえず今後の予定を決めておくか」

「うん? ここでか?」

「おう」

一旦、休憩所に戻ろうかという意見も出たが、フォルノ達やドワーフ達に万が一にも話を聞かれてはマズいので、ここで決めてしまう事にした。

とは言っても複雑な話があるわけでもない。

今後の予定としては……ひとまずは拠点の街に戻って【ギルド】とラーダッタに事の顛末を報告。

その後は、念のため【ギルド】本部にへ一筆したためて、晴れて自由の身となったらユウゴ達をこの世界に召喚した魔王ロリエルの元へと向かう事にする。

「まぁ、道中でトラブルに巻き込まれないようにするために、多少の回り道をするとして……」

今一この世界の地図が頭に浮かばなかったユウゴは、隣にいたヒサメに答えを求めてみる。

「……ん、遅くても一月あれば、ロリエルの島まで行けると思うよ」

その言葉を聞いて、ユウゴが頷いた。


「よし、一ヶ月後にはむこうの世界だ! 気合い入れろよ、お前ら!」

オウッ! と気合いの篭った返事が周囲の空気を震わせる。


なお、余談ではあるが、なかなか戻って来ないユウゴ達を心配して様子を見に来たドワーフ数人が洞窟の入り口付近まで登ってきていた。

彼等は唐突なユウゴ達の気合いの声に驚き、「何を騒いでいるんだ、あいつら……」と小首を傾げていた。

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