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47 モンスター襲来

「大変じゃ!モンスターどもの群れが、大空洞近くまで侵入しよった!」

慌てた様子で駆け込んできたドワーフが、大声で報告する。

「数は!?」

侵入を許した事を叱責するより状況を確認するために、ウヌムは報告にきたドワーフに怒鳴るように聞き返した。

「おそらく三十匹以上。しかし、まだ後ろにはかなりの数が控えてるようじゃ!」

「そんな大規模な襲撃は初めてではないか……」

情報が少ない今、考えても答えは出ないが、何故だという思いがウヌムの脳裏で回り続ける。

「どうやら、そっちの人らを案内してきた奴等と、見張りを交代する連中のちょっとした手薄になる時間を狙われたようじゃ」

不意の来客ではあったといえ、手薄になる時間を見計らうあたり普通ではないし、狂戦士化しているモンスターにそこまでの知恵があるはずがない。

背後に糸を引き、モンスター達を統率している者の存在が確実になったといえるこの襲撃に、ウヌムの顔に苦々しい表情が浮かんだ。


「……なんだか俺達が引っ張って来ちまったみたいだな」

スマンと告げてユウゴ達が立ち上がる。

「尻拭いと調査を兼ねて俺達が前に出る。ドワーフ達は、弱った敵にトドメを刺す役に徹してくれ」

「スマンな……」

不可抗力ではあったが、気分的によろしくないというのがユウゴの言葉の主な要因だった。が、危険な役を買って出るユウゴ達に、ウヌムは頭を下げる。

そんな彼女の態度に、ユウゴは小さく笑った。

未知のモンスターの素材を優先的に手に入れる事は出来無さそうだが、ドワーフ達と友好関係を築く事は出来そうだ。

後々になって、この関係が生きればいいな等と思いつつ、モンスターが暴れている場所へと駆け出そうとする。

だが。


「待てよ、俺達も手伝おう」

ユウゴ達に続くようにして『炎剣』のメンバー達も武器を取る。

「……言っとくが、報酬はたぶん出ないぞ?」

「目の前でモンスターに襲われてる奴等がいるんだ、んな事は気にしねぇよ!」

ニカッと笑うフォルノに対して、ユウゴの好感度が少し上がった気がした。

(なんだよ、結構いい奴じゃないか)

心の中でフォルノを見直していたユウゴ達だったが、次に彼の口から出てきた台詞がマズかった。

「まぁ、暑い地下世界(こんなところ)じゃ氷雪魔法メインのあんたらはキツいだろ? だから、俺達のフォローに回ってくれりゃいい」

──それは、確かに親切心から出た言葉だったのだろう。

だが、その一言が『氷刃』メンバーの逆鱗に触れた!


「フォローに回れ? 利き腕使わずいい勝負したからって、調子に乗ってんのか!?」

「この(元魔王である)我輩に、随分と大きな口を叩く小僧であるな!」

「氷雪魔法が、その程度の地形的ハンデで役に立たなくなると思われてるとは、舐められたものだね……」

「まったくですぅ! 無知蒙昧、ここに極まれりですうぅ!」

ビキビキと青筋と、頭上に"!?"を浮かべる『氷刃』の面子に、さすがのフォルノの顔色も変わった。

「んもー! フォルノのバカっ!」

『炎剣』のツッコミ役であるメリラが、フォルノの頭をひっぱたく!


「特級同士とはいえ……ううん、特級同士だからこそ、あんな言い方されたら頭にくるに決まってるでしょ!」

「な、なんでだよ! 純粋な親切心だぞ!?」

「じゃあ、あんたは自分の仕事に別のチームが『俺達に任せて裏方に回れ』なんて言われて頭にこないの!?」

「……くる」

メリラに諭され、シュンと項垂れるフォルノ。

「オヌシらも沸点低すぎじゃ。現状を考えよ」

『炎剣』サイドが落ち着いた所で、『氷刃』サイドのフェルリアがユウゴ達を制する。

「……ああ、確かに少しムキになっちまったみたいだ」

すまなかったなとユウゴが告げると、メリラがフォルノに変わってこちらこそすいませんと頭を下げた。

「まったく、オヌシともあろう者が子供みたいな真似をしよって」

バツの悪そうなユウゴに、フェルリアはため息を吐く。

(とは言え、そんな所も可愛いんじゃがな……)

少しばかりしょんぼりしているユウゴを見ながら、口にはしない想いを秘めつつ、フェルリアは「リーダーなんじゃから云々……」と説教していた。


「どうにも、うちのリーダーとあんた方は相性が悪いらしい。ここは下手に連携をとろうとしないで、それぞれのチームごとに対応した方がいいんじゃないか?」

「そうじゃな。共に特級チーム、連携が取れずとも討ち漏らしす事はないじゃろう」

『炎剣』の戦士エルガンからの提案を受けたフェルリアの言葉に、当たり前だと頼もしい声が返ってきて、双方のチームがそれぞれ動き出した。

「モンスターが侵入してきたのは、俺達が入ってきた通路でいいんだよな?」

「おう、今はわしらの仲間がバリケードを張って頑張っとる! 頼んだぞ!」

任せろとドワーフに返して、ユウゴ達はウヌムの家を飛び出した。

入り口の通路からこの集落まで、竜車に乗せられて来たが距離的にそう離れていた訳ではない。

特級チームのような超人的身体能力を持つ者達なら、現場までさほど時間はかからないはずだ。


「……フェルリア、さっきはありがとうな」

「ぬ?」

走りながら、ユウゴが隣を並走するフェルリアに礼を言う。

一瞬、怪訝そうな顔をして彼女だったが、フォルノと揉めそうになったのをまとめた事だと理解してどうという事はないと返す。

「しかし、オヌシにしてはムキになっていたな」

「ああ……それだけ(フォルノ)が『神人類』として恐ろしいって事さ」

ユウゴの言葉に、フェルリアはハッとした。

確かにフォルノの言葉に反応したのは、自分以外の……いわゆる『人間に仇を成す存在達』だ。

妖怪や魔王(俺達みたいな者)にとっては、本能的にフォルノの言動に警戒させられるみたいでよ……」

怪異殺しの気配は、言ってみれば抜き身の刃を喉元に突きつけられているような感覚がまとわりつくらしい。

本能が危険を感じている時に、こちらを舐めたような台詞を口にされると、無意識の威嚇で必要以上に攻撃的になってしまうとの事だった。

そんな話を聞いてしまえば、ヒサメの普段のフォルノに対する態度にも納得がいくというものだ。


「まぁ、だからこそお前みたいに冷静でいてくれる奴がいるとありがたい。頼りにしてるぜ」

「ま、任せておけぃ!」

ユウゴに頼られる嬉しさからか、ムズムズするような喜びが沸き上がる。

(い、いかんいかん! 気を引き閉めねば!)

うっかりするとはニヤけそうになる顔の筋肉に力を込め、戦いに備えてフォルノは気合いを入れ直した。


──ユウゴ達が現場に到着した時、すでにバリケードは破壊され、ドワーフ達は辛うじて防戦しているような状況だった。

「マール!」

「はいです!」

それだけで意思の疎通が図れた姉妹は、モンスターとドワーフ達の間に魔法で氷の壁を作り出してドワーフ達を守った!

「後は俺達に任せろ! ドワーフ達は下がって、討ち漏らした奴にトドメを頼む!」

「負傷してる人たちはこっちに! 私が回復します!」

幸い、怪我人こそ多くいたが死者は出ていないようで、ドワーフ達がメリラの所に集まっていった。

ユウゴ達も回復用の魔法薬(ポーション)を提供していたので、大事に至る者はいないだろう。


「来るのである!」

ラヴァの警戒の声と同時に、ヒサメ達の作った氷の壁に亀裂が走った!

「急拵えだからあまり頑丈には作ってなかったけど、こうも早く崩されかけるなんてね……」

「やっぱり、強化されてるみたいです……」

地熱のこもる大空洞と、ろくに魔力も込めていない壁というのを差し引いても、壁向こうのモンスター達が彼女達の氷を砕くには早すぎる。

やはり、何者かに狂戦士化させられているようだ。

襲撃の規模から、もしかするとその何者かも来ているかもしれないと、ユウゴ達は油断なく身構えた。

まあ、フォルノ達も武器を構え、いつでも迎撃できる体勢を整える。

やがて、ドン! とより大きな一撃が加えられた音が響き、砕け散った氷の破片の向こうからモンスター達が姿を現す!


「なっ!?」

しかし、そのモンスター達を見たユウゴ達が思わず声を漏らした!


白濁した目、艶を失った毛並み、腐汁の滴る皮膚にひたすら獲物を食らい尽くす欲望のみで動くその姿。

それは狂戦士などではない。

そう、それはまさに……


「アンデッドじゃねーかっ!!!!」


完全に予想外なモンスターの集団を目の前にして、重なりあったユウゴ達のツッコミの声が大空洞に響き渡った。

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