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40 新たな依頼

「……なるほど、魔王ゲイバラーは最後には城と共に自爆したと」

ユウゴ達からの報告を聞き終え、ギルドマスターは一息ついて茶を口に含んだ。

「概ね【騎士団】や【教会】からの報告と一致しますね。で、あればこれで依頼達成と判断させてもらいます」

イラーサからの「依頼達成」の言葉に、ユウゴは内心ガッツポーズを取る。


「褒賞金に関しては、こちらでお受け取りになりますか?」

イラーサの秘書が報酬の目録を渡しながら、ユウゴに尋ねてきた。

それに目を通してみると、なかなかの金額が記されている。

「本部ではなく、支部でも受け取れるならその方がいいね」

どうしたものかと迷うユウゴに代わって、ヒサメが拠点にしている街の支部名を告げると、そのように手配しておきますと秘書は一礼した。

そうしたやり取りが終わると、もう少し王都に滞在するのかなと、世間話でもするようイラーサが問いかけてきた。

「魔王討伐の祭りはもう少し続きそうでしてね。色々と、珍しい物も集まっているようですよ?」

「いや、悪いけどできるだけ早く王都(ここ)から出たいんだ……」

理由は言わないが、ソワソワするユウゴを見て、ギルドマスターはフム……と呟きながら顎を撫でる。


「ひょっとして……エリエス様の件ですか?」

イラーサの核心を突いた一言に、ユウゴは悲壮感のこもった表情で振り返った。

「ず、図星ですか……いえ、実は白の騎士団の方から打診がありましてね」

「な、なんて言ってきたんだ?」

「ええ、ユウゴさんを白の騎士団の武術指南役として招聘(しょうへい)したいと……」


『断る!』


ユウゴとフェルリアの声が見事にハモった。

そんな二人の迫力に少し引きながらも、イラーサは頷いてみせる。

「も、もちろん本人にその意思が無いなら、お断りしておきますよ。有能な人材が欲しいのは、我々(ギルド)も同じですから」

その言葉に、ユウゴはホッと胸を撫で下ろした。

「よろしければ、秘密裏に王都(ここ)を出れるよう、【ギルド】の馬車を手配しましょうか?」

あまりにも露骨に【騎士団】の干渉から逃れようとするユウゴ達の姿に、イラーサがそんな提案をしてくる。

その話を二つ返事で受けると、それでは準備をしてまいりますと秘書は執務室から出ていった。


「ところで、ギルドマスター殿。ひとつお聞きしたいことがあるのである」

新参ではあるが、ラヴァの質問になんでしょうかと、イラーサは答える姿勢をみせた。

「魔王が討伐された後の、島の管理はどのような形になるのであろう?」

元魔王として、自分の治めていた地がどうなるのか気になるのであろう。

もちろん、そんな態度はおくびにも出さず、あの島は良い修行の場になるからと、それらしい理由を付け加えてイラーサに問いかける。

「まぁ、基本的には国の管理下となるでしょう。そのために、【ギルド】から調査隊として、何組かのチームを馬券することになっています」

にこやかに答えるイラーサの笑顔を見て、少し訝しげにヒサメが口を挟む。

「何か、嬉しそうに見えるね」

「おおっと、これはこれは……まぁ、先発隊の調査チームを出した際にそれなりの役得は有りましてね」

つまりは、魔王の島で最初に発見された貴重な資材や宝物は、一部を【ギルド】が徴収できる事になっているそうだ。

魔王討伐の「華」を【騎士団】と【教会】に持たせる代わりに、【ギルド】はしっかりと「実」を得るよう取り計らっていたという事である。

本来ならここまで言う必要は無かったのだが、ユウゴ達は「この件の功労者ということで……」そう言いながら、イラーサはまた笑みを浮かべた。

おどけてはいるが(したた)かなギルドマスターに苦笑いをしながら、ユウゴはやはりただ者じゃないなと、内心で少しばかりの警戒した方がいいなと感じていた。


それから色々と雑談をしていると、馬車の手配を終えた秘書が執務室に戻ってきた。

「建物の入り口に【ギルド】特別便の馬車を用意しました。検問も抜けられますので、そちらで本拠地としている街へ向かってください」

「ああ、助かるよ。ありがとう」

礼を言いながら、さっそく『氷刃』の連中が挨拶をして執務室を出ていく。

そんなに【騎士団】の干渉が嫌なのかと思いながら、その姿を笑顔で見送り、彼等の足音と気配が遠ざかって消えてから、イラーサはいつも仕事をしている机に向かった。

一息ついて、体を椅子に預けると、一転して鋭い目付きになったイラーサは、秘書に例の調査はどうなっているかと声をかける。


「はい。『特級』チームの『氷刃』メンバーについての調査ですが、現段階では彼等の出身地については虚偽であるとの確認がとれております」

ふむ……と、小さく答え、驚いた様子もなくイラーサは、続けるよう促す。

ある意味、まっとうな職業とは言えない【ギルド】に所属する者は、脛に傷を持つ者も多いため、その程度の虚偽報告は大なり小なりあるものだ。

だからこそ、イラーサはそんな事は軽く流し、「探索部」でありながら魔王にも対抗できうる戦力となりつつある、『氷刃』の目的を調べさせていたのだ。


「残念ですが、いまだ彼等の目的らしい目的は解っておりません。ただ、今のところは【ギルド】へ大きく貢献している事だけは確かです」

「そうだな……」

顎に手を当てながら思案していたイラーサだったが、もう一杯お茶をくれないかと秘書に頼む。

言われたとおりに秘書が、茶をいれギルドマスターの机に差し出すと、それを一口飲んだイラーサは独り言のように呟いた。

「『有能』ならば良いのだがね、『有害』となった場合が困るんだ……」

それはギルドマスターとしての勘なのだろうか。

ユウゴ達に対する一種の警鐘が、彼の中で消えることなく鳴っている。

しかし、下手にこちらから手を出して藪をつつく訳にもいかない。

引き続き、ユウゴ達に関する調査と報告を命じて、イラーサも次の仕事へと取りかかる事にした。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ギルドマスターの取り計らいでこっそり王都を抜け出し、拠点の街(ホーム)へ戻ってから、さらに一週間が経っていた。

その間、軽い仕事をこなしつつも武具の新調やメンテナンスを行い、チーム内で手合わせなどしながら、連携と個々の修行に勤めて、真の目的のために牙を研ぐ。

そんな彼等が、ある日お馴染みとしている武具の店「戦士の花園」に立ち寄ると、店の主であるドワーフのラーダッタが待ってましたとばかりに声をかけてきた。

「待ってたわ、ヒサメちゃん!」

相変わらず、ゴツい外見ながらも女性口調のラーダッタがヒサメに詰め寄る。

「どうしたんだい、マスター?」

「実はこれから【ギルド】に依頼を出そうと思ってるんだけど、是非ともヒサメちゃん達のチームに受けて欲しいのよ」

「私達に?」

ヒサメに問い返されて、ラーダッタは、コクリと頷いた。


大概、【ギルド】に持ち込まれる依頼は、等級に関する指定はあれど、特定のチームを指名しての依頼は珍しい。

そういった場合、ほとんどは依頼者とチームに直接の面識や交流があり、体裁として【ギルド】は通すが事前の直接交渉は当人同士で行うのが通例となっていた。


「依頼料は安いけれど、現地での実入りは大きいと思うわ」

『特級』が絡むような高難易度の依頼の場合、依頼達成の報告と共に、その際に手に入れた稀少な素材の一部などを【ギルド】に納める義務がある。

例えば、『竜退治の依頼』があったとすれば、その竜の素材の一部などだ。

これは低い等級のチームにもサポートを行うための資金調達の手段であり、互助会として役割を持つ【ギルド】の取り決めであった。

しかし、こういったチームを指名しての直接交渉の場合は、少々様子が変わってくる

実際には高難易度でも【ギルド】には簡単な仕事として依頼することで、稀少アイテムの納品義務をかわす裏道的な手段として、一部の高い等級チーム達の間では時折行われているのだ。

もちろん、簡単な依頼(・・・・・)のため、【ギルド】からのそれなりのサポートしか受けられないし、万が一失敗すれば降級や全滅の可能性もあるといったリスクも存在するのだが。


さて、そんなハイリスク・ハイリターンな申し出であったが、内容によっては受けてもかわまないとユウゴ達の意見は一致していた。

皆に椅子を勧め、車座になりながらユウゴ達が着席すると、コホンと咳払いをしてからラーダッタが依頼内容について語り出す。

「この依頼はね、私達ドワーフの集落に起こっている不可思議な現象について、調査と……できれば解決についてのお願いなの……」

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