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37 新しいメンバー

「ど、どういうつもりじゃ、ユウゴっ!」

「待て待て、落ち着けフェルリア!」

詰め寄るエルフをなだめながら、ユウゴはゲイバラーの台詞を訂正する。

「おい、弟子にするなんて言ってないだろ!」

「しかし、ユウゴ殿の世界に連れて行ってもらうために、向こうの常識を教えてもらわねばならぬ。教えを乞う以上は弟子も同然なのである」

「じゃから、なんでゲイバラーまで現代日本(あっちのせかい)に行く事になっとるんじゃ!?」

ギャアギャアと騒ぐユウゴ達を冷静に見つめていたヒサメが間に入ってきた。


「まぁ、少し落ち着きなさいな」

ヒサメにたしなめられて、三人はそちらに注目する。

「ここは一つずつ疑問を解消していこう。まずはユウゴから」

「お、おう……」

促されたユウゴは、揉める発端となったゲイバラーとの会話から話し始めた。


「……なるほど、うっかり元の世界(あっち)の事を漏らしてしまって、ゲイバラーに懇願されたと」

バツの悪そうに話すユウゴに向けて、大げさにため息を吐いた後、ヒサメは何故か正座して待機している元魔王に矛先を向ける。

「で、なんでゲイバラーは現代日本(あっちのせかい)に行きたいのかな?」

「無論、ユウゴ殿の格闘術に魅せられたからである!」

力強く答えるゲイバラー。しかし、ヒサメは冷たい目をしながら、さらに問いかけた。

「本音は?」

「……男が好きでも迫害されないし、同好の志も多いと聞いて……」

刺すような視線に身を縮めて、ボソボソとゲイバラーは答えた。

ついでにチラリとユウゴの方を見る魔王の視線に、ヒサメは嫌な予感を覚える。


「ワ、ワシは反対じゃぞ!」

頑なに反対するフェルリアの態度に、ヒサメの嫌な予感は確信に変わった。

(フェルリアだって、理由は違えど迫害された経験を持っているんだから、多少は共感してもいいだろうに……)

にも関わらず、こんな拒否反応を示すのは、おそらくエリエスと張り合っていた時と同じ理由。

つまり、ユウゴの取り合いになる事を危惧している。

もっと言えば、ユウゴが犯される(・・・・・・・・)事を警戒しているのだ(・・・・・・・・・・)

考えすぎかもしれないが、鋭い洞察力を持つエルフの勘がそう感じたのなら、その危険性はあるという事なのだろう。

(ううん、そうだな……)

少し考え込んだヒサメは、とりあえずゲイバラーを外して『氷刃』メンバーだけを集め、相談することにした。


「結論から言えば、私はゲイバラーをパーティに加える事に賛成したい」

「なっ、ヒサメ……」

「まぁまぁ、話を聞きなさい」

食ってかかろうとするフェルリアを抑えて、ヒサメはユウゴ達に意見を求めた。

「元から私達には、もうちょっと戦力が必要って話はしていたよね? で、ゲイバラー(あれ)を戦力として見た場合はどうかな?」

「それは……」

「まぁ、アリだよな」

言い澱むフェルリアに代わって、ユウゴが答える。

確かに、魔法や剣撃が効かない高い防御力と、圧倒的な攻撃力を兼ね備えたゲイバラーは前衛にうってつけだろう。

「…………」

「フェルリアの危惧している事は、何となくわかるよ。でもね、それとは分けて考えてほしい」

そうは言われたところで、理解はできても納得できるものではない。

そんなフェルリアに、ヒサメはだめ押しの言葉を告げた。

「まぁ、そんなに心配なら、四六時中ユウゴと一緒にいるといいよ」

「なっ!」

真っ赤になるフェルリアと、なんで? といった表情になるユウゴ。

そんなユウゴに、ヒサメが『フェルリアの危惧』を耳打ちすると、真剣な顔つきになってエルフの肩を叩く。

「頼むぞ、フェルリア!」

「は!? ひゃい!」

上擦った声で返事をしながら、フェルリアはコクコクと頷いた。


「ところで、ゲイバラーをこのままパーティに加えるのは、外見的にどうかと思うのです」

話が賛成でまとまった辺りで、第三者の顔をしていたマールが、現実的な問題点を提起する。

彼女の言う通り、ゲイバラーにはわかりやすい魔族的な特徴(角や尻尾)は無いものの、あの格好はどう考えてもまずい。

それに、エリエスやリネッサには顔がバレているため、今後彼女らに面会した時、面倒な事態になるだろう。

「まぁ、変態的な格好は服を着ればいいとして……顔はどうしような」

うーん、と腕組みしながら考えるも、ここは当人の意見を聞き入れようということでゲイバラーを話し合いの場に呼んだ。


「髭をいじくるのは駄目のである。これは見た目だけでなく、感覚器としても優秀なのだからな」

「猫かお前は!」

開口一番にそんな事を言った魔王にツッコミを入れながら、ならば後は髪型くらいだろうかとオールバックに固められたゲイバラーの頭に目を向ける。

前髪をおろせば多少は……そう、ユウゴが言いかけた時、ゲイバラーはスッと髪を撫でた。

それと同時に、ズルリと薄皮が剥けるかのごとく、髪の毛が頭から離れる!


「ヅラだったんか、お前ぇ!」


驚き叫ぶユウゴ達に、キラリと輝くツルツル頭を見せながら、ゲイバラーはニヤリと笑った。

「まぁな。だが、これなら大丈夫であるだろう?」

確かに、髪があるのと無いのでは印象がまるで違う。

これなら面識があっても、一目でバレる事は無さそうだった。

「まぁ、なんとなく修行者って感じがするし、魔王っぽくは無いかな……」

ユウゴよりも体格がよいため、この場で着れる服は無かったが、予備のマントを巻いて服代わりにすることで、何処と無くチベット辺りの修行僧のような雰囲気を醸し出す。

この世界では多少の違和感があるものの、ニプレスとブーメランパンツの姿よりは遥かにマシなので、ひとまずはこれで良しとする。

そんなゲイバラーは、改めて『氷刃』のメンバー達に一礼をすると、これからよろしくと告げた。


「よーし、それじゃあ本格的に暗くなる前に夜営の準備をしちまおう」

話し合いは終了と、ユウゴの号令の下で皆がそれぞれ動き出す。

そんな中、薪を集めに行こうとしたユウゴに、フェルリアがぴったりと寄り添ってきた。

「……あの、フェルリアさん? どうかしたんスか?」

「気にするな、オヌシの護衛じゃ」

先程、ゲイバラーに尻を狙われてるかもしれないと聞き、確かに彼女を頼ると言ったが、早速こうもやる気になるとは思っていなかった。

なにやら積極的なフェルリアに、ユウゴは若干戸惑ってしまう。

(んー、ゲイバラーがおとなしくしてれば、そのうち離れるだろう……)

心なしか、ウキウキしながら彼の隣を歩くフェルリアを見て、ユウゴはしばらく好きにさせる事にした。

だが、そんな二人を眺めていたゲイバラーが小さく舌打ちしたのを、ヒサメの耳は捉えてしまう。


(うーん、ややこしい事になりそう。ユウゴには頑張ってほしいものだね)

戦力面だけ見てゲイバラー参入に賛成した雪女は、気苦労を背負子むであろう牛鬼(リーダー)に、心の中でそっとエールを送っていた。


そんな夜営に勤しむユウゴ達から離れた、島の中央部。

崩れ落ちたゲイバラーの城の上空に、鳥とも蝙蝠とも附かない奇妙な生き物が二匹(・・)、まるでこの場を監視するかのようにパタパタと舞っていた。

ユウゴ達は知るよしも無かったが、この奇妙な生物はゲイバラーの同行を探るために、他の魔王達が張り付けていた魔法生物である。

無論、仲が良いわけではない魔王達であるから、相互協力の為などではない。が、衰退している現状では、他を蹴落としても生き残るために、力を持つ魔王の動向は把握していなければならないのだ。


何か外道王(ゲイバラー)に動きがあった際には、即座に連絡するよう生み出された魔法生物達(かれら)は、彼の魔王の城が崩れ落ちた事を、各々の主に知らせるべく魔力を飛ばす。

追い詰められながも均衡を保っていた、魔族間のバランスが崩れ始め、新たなうねりがこの世界に生まれようとしていた。

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