24 『特級』昇格と新たな依頼
ヒョウリンマールとの戦いの翌日。
【ギルド】本部に赴いたユウゴ達に、イラーサは彼等のチームを『特級』と認定する旨を告げた。
「俺達が『特級』に?」
「ええ。【教会】や【騎士団】が手を引いた案件を解決したのですから、それくらいの評価を受けてもおかしくはありませんよ」
おめでとうと拍手をするギルドマスターに合わせて、彼の秘書が金色に光るドックタグのような身分証をユウゴ達に渡していく。
「超希少金属を使った身分証です。偽造や改竄はできませんが、複製もできませんので紛失には注意してください」
すでに『特級』であるヒサメ以外のメンバーは、物珍しげにドックタグを眺めた後、それを懐にしまい込んだ。
「いや、本当におめでとう。君たちは、当【ギルド】で二組目の『特級』チームです」
もう一度、秘書と共に拍手をしながら、イラーサはユウゴ達を称えた。
「さて……早々で申し訳ないのだけれど、仕事の話をさせてもらっていいでしょうか?」
祝福ムードから一転して、イラーサの顔から笑みが消える。
「本当に急ですね……できれば、少し間を開けたい所なんですが」
「それは重々承知しています。しかし、これは国の方からの依頼なのです」
頭を下げるギルドマスターの言葉に、ユウゴ達は訝しげに眉をひそめた。
国からの依頼となれば、それなりの格というものが必要だ。
それに見合わせて、自分達を『特級』認定したのが見え見えだったからである。
何となく間に合わせで認定された気がして、少しトゲを含んだ物言いで、ユウゴは問い返す。
「拒否権は無い……という事かな?」
「いや、もちろん無理だと思ったら断ってもらっても結構です。ただ、富と名声を得るために【ギルド】に加入した者に、この大仕事を蹴るという選択肢は無いと思いますけどね」
傭兵部だろうが探索部だろうが、それらを求める気持ちは誰もが持っている。
そして、その大仕事とやらは、それを得られるだけの内容というわけだ。
「仕方ねぇ、乗せられてみるか」
ヒサメではなく、ユウゴの言葉にメンバー達が同意する。
(おや? ヒサメさんがリーダーではないのか……)
てっきりヒサメがチームをまとめていると思っていたため、ユウゴが決定権を持っているらしい状況に少し驚いてしまう。
なんにせよ、すんなり話が進みそうで、イラーサはホッと胸を撫で下ろす。
尤も、ユウゴ達には真の目的のために、名を売る必要があったから話を聞く気になったのだが。
「依頼を受けてもらえるようで感謝します。では……」
他言はしないよう、前置きをしてからイラーサは依頼の内容を語り始めた。
「今回の依頼ですが、【教会】と【騎士団】と我々【ギルド】による共同作戦となります」
「ほう……」
想像以上の作戦規模となりそうな話に、ヒサメやフェルリアの顔にわずかな緊張が走る。
「【教会】からは『祝福の乙女』ことリネッサ・ルド・エルザクスン氏が。【騎士団】からは『白の騎士団』団長であるエリエス・カロ・エルザクスン氏が今作戦に参加することになっています」
「ふーん……」
ギルドマスターはそれなりに仰々しく言ったつもりであったが、当のユウゴ達からのリアクションは薄い。
「ふ、『ふーん』って……」
「いや、他所の組織の事はよく知らんし」
「私は名前は聞いたことがあるです。たしか、お偉いさんだったはずです」
(ある意味、日々の情報収集も仕事とも言えるこの稼業で、一番新入りであるマールしか彼女らを知らないとは……)
あまりにも無反応過ぎるその態度に、内心ユウゴ達に少しマイナス評価を付けながら、イラーサは話を続けた。
「えーっと……それで、我々【ギルド】からは皆さんに参加していただくんですが……」
「ちょっと待った。他にの組織はどのくらいの人数が参加するんだ?」
「リネッサ氏とエリエス氏の二人だけですが」
「え? それだけ!?」
驚くユウゴにイラーサは頷いて見せる。
「二人だけとは言っても、彼女達は【教会】と【騎士団】の切り札的存在ですからね。なにせ、王族であり『神の祝福を受けし者達』でもありますから」
「っ!? それって……」
「ええ。リアクション氏とエリエス氏の二人は、『神人類』と言われる英雄達なのです」
「な、なんだってー!」
今度はユウゴ達が驚きの声をあげる!
(組織には無関心でも、やはり『神人類』には反応しますか……)
生まれた時から神の気を宿し、俗人とは隔絶した能力を持つ超人は、いつの時代も尊望の的だ。『特級』に選ばれるほどの猛者だからこそ、彼女らと共に戦うチャンスに、驚きも大きいのだろう。
「しかし、そんな各組織の切り札を参加させる依頼というのは、いったい何じゃ?」
『神人類』とはいえ、王族も巻き込むなど、只事ではない。いぶかしむフェルリアの質問も、尤もな事だった。
「ええ、その内容ですが……魔王討伐になります」
「な、なんだってー!」
再びユウゴ達が驚きの声をあげる!
「先のゴースト・ヒョウリンマール事件ですが、あれに魔王が関わっていた可能性がありまして……」
イラーサの言葉に、ユウゴ達は顔を見合わせるようにマールへと目を向けた。
思わぬ注目を浴びたマールは、イラーサ達にわからないように手を振って否定する。
「まぁ、確実な証拠があるわけではありません。しかし、ヒョウリンマール氏ほどの人格者が、自然とアンデッドとなって害を成すとは考えにくいのですよ……」
いまいち納得のいかないユウゴ達の横で、人格者との評価を受ける元ヒョウリンマールの少女は「いや、それほどでも……」と言わんばかりに照れていた。
「そこで、真相の調査を進めていたのですが、途中に一部の魔族に活発な動向があった事が判明しました」
「それはどんな……」
ロリ魔王、レズ魔王にそれぞれ召喚された身であるユウゴとヒサメにとって、その情報はかなり気になるものだ。
話に食いついてきた彼らに気を良くしたイラーサは、どんどん話を進めていく。
「残念ながら詳細はわかっていません。ただ、何か強い力を持つ者が、この世界に呼び出されたらしいのです!」
ビクリと思わずユウゴ達が固まる。
「……それは恐らく冥界からヒョウリンマール氏を召喚したのだろう、そしてかの事件は起こったのだろうという結論に達しました」
イラーサがそう言うと、畳み掛けるようにユウゴ達も同意してきた!
「んんんっ! そうだな、そうに違いない!」
「ああ、師匠をアンデッドにして操るとは、なんて魔族は悪いやつなんだ!」
「そうです! 操られたヒョウリンマールさんは被害者です! かわいそうです!」
「ん。決してヒョウリンマールに非は無いな」
「そ、そうですね」
若干、気圧されながらもイラーサは、だからこそ危険な力を持つ魔族や魔王を早急に討たねばならないのだとユウゴ達に説いた。
「とは言え、隣国とのパワーバランスや、その他の依頼も放っては置けません。それ故の三組織合同による少数精鋭なのです」
『神人類』と『特級』による、電撃作戦の魔王討伐。
確かにゾロゾロと大人数で動くよりは、素早くカタをつけられるだろう。
「基本的に皆さんの仕事は、『神人類』のお二人を魔王の元まで送り届ける、露払いがメインとなります」
神の加護が無い者では、並の魔族ならともかく、魔王クラスには勝てないという。だが……
(ロリ魔王、めっちゃビビって漏らしてたけど……)
恐ろしげに語るイラーサの言葉に、こちらに来たばかりの時に見てしまった魔王の醜態を思い出す。
(まぁ、あいつが例外的にに弱いだけかもしれんがな)
見た目からして弱そうだったし、まぁそういう事もあるだろうと、ユウゴは一人納得することにした。
(そんな事よりも、これはチャンスだ)
そう、ユウゴ達の真の目的である、『神人類』の抹殺を行う絶好の機会が訪れたのだ。
まさか如何に怪異を殺す者達とはいえ、味方だと思っている奴に寝首をかかれるもは思うまい。
どの魔王討伐かは、まだわからないが、そいつと共謀して『神人類』を始末できればミッションコンプリートだ。
あとは適当に魔王と口裏を合わせればいい。
早くもこの世界とおさらばできるかも知れない可能性が出てきた事に、自然と笑みが溢れる。
「ふむう……余裕ですね」
「ああ、大船に乗った気でいてくれ!」
「ふふ、頼もしい事ですね。では、こちらの依頼書に皆さんのサインを」
秘書が手渡してきた紙に、ユウゴ達は順番にサインしていく。
全員のサインが書かれたのを確認して、秘書がイラーサへとそれを渡した。
「確かに、確認しました。二、三日中には三組織の顔合わせがあると思いますので、しばらく宿に逗留していてください」
ユウゴ達が了解の旨を伝えると、イラーサは一つ咳払いをして最後の注意点について口を開いた。
「先程もチラリと言いましたが、『神人類』のお二人は王族なのです」
継承権の順位は低いですが……と、少し目をそらしてイラーサは続ける。
「よって、万が一お二人が死に、魔王も倒せなかった場合、皆さんも命が無いので頑張ってくださいね」
「…………は?」
「ええ、ですから『神人類』のお二人が亡くなったり、魔王討伐に失敗したら、連帯責任です」
「な、なんだってー!」
本日、三度目のM○R風な絶叫が鳴り響いた。




