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魔導学校の悪魔使い  作者: ヒロ
第二章
17/42

『4』

 リムジンに乗ること数十分。

 俺は只々中の様子に驚いていた。

 

 長さは二十メートルほど。高級ソファみたいな座席は俺が寝転んでももう一人横たわれるくらい幅がある。


「じろじろと見ないで頂けますか。いくら愚民には馴染みがないものだからと言っても、不愉快です」


 不意に隣の王女様から鋭い言葉を貰った。

 彼女は意外にも真面目に魔導書を読んでいた。


「こんな朝っぱらからよくそんな物読めるな」

「おそらくそんなこと言うのはあなただけですよ愚民。成績学年最下位の愚民」

「…………」


 事実を悪口として言われちゃ、言い返しようもない。

 ここは話題を変えよう。


「なあ。王女様に聞きたいことがあるんだが」

「…………」


 返事がない。

 これは勉学に集中しているからなのか、それとも単純に俺を無視しているだけなのか。


「お前ってなんで護衛つけないんだ?」

「……愚民。わたくしはあなたの質問に答えると言いましたか?」


 やっぱり無視してたのね。ひどい王女様だ。


「別にいいだろ。どうせ学校に着くまではまだ時間がある」


 そう言うと、王女様は一つ溜息をつき、


「……わかりました。ですが、くだらない質問でしたら今すぐあなたを焼き殺しますよ」


 なんか魔導書の炎魔法の部分を開いていんですけど。これ冗談だよね。


 とりあえず一拍置くために咳払いをすると、俺は王女様に訊ねた。


「王女様に護衛ってのはいないのか?」

「護衛? あなたがわたくしの護衛なのではないのですか?」


 怪訝な目を向けられた。

 やばい。焼き殺される。


「それはメイドの依頼でそうなってるだけだろ。そうじゃなくてだな、こんな学生よりあんたの国からもっとしっかりした護衛は連れてきてないのかってことだよ」


 そもそもあのメイドはなんで俺たちに護衛の依頼をしてきたんだ。

 どうせならプロの魔導士を雇えばいいはずだが。


「……言っておきますが、日本に来ているわたくしの関係者はべティーナ一人だけですよ」

「……まじか」


 こいつ、自分が王の娘だって自覚あるのか。いくらなんでも不用心過ぎる。


「それで聞きたいことは終わりましたか。愚民」


 魔導書に目を向けながら問う王女様。

 どんだけ魔導書好きなんだよ。結衣と同じくらい、いやそれ以上に勤勉だ。


「あと一つだけ聞かせてくれ。さっきあのメイドがどっか行ったみたいだが、行き先はきいているか?」

「いいえ知りません。彼女には自由に行動にしてよいと言っていますから」

「それもう連れてきている意味ないよな」


 実質、王女様一人で日本に来てるもんじゃねぇか。王様は一体なにやってんだよ。


「そもそもわたくしは誰もこの国に同行させる気はなかったのです」

「……そうなのか?」

「はい」


 そこで会話が終わった。

 それ以上は聞くなということだろう。

 王女様は再び魔導書を読みだすと、そこから一切口を開かなくなった。





「本日は封印魔法の実戦の授業を行う」


 そう宣するなり静川先生はなぜか俺のとこに近寄ってきた。

 この人は俺のことが好きなんじゃないか。なんて偶に思ったりする。


「おい植村。今日は特別に私がマンツーマンで指導してやろう」


 何が特別に、だ。

 ほぼ毎回そうじゃねぇか。それも指導はせずに失敗する俺を見てただバカにするだけ。

 こっちがアラフォーとか言ったら怒るくせに。


「結構ですよ。俺、一人で黙々とやるタイプなんで」


 イメージは今朝の王女様。あれくらい集中すればなんとかなるはず。


「ははっ、遠慮するな植村。それとも、もしや私の指導が嫌なのか?」


 静川先生の右手から魔力が込められた拳。

 これはもう体罰ではないでしょうか。


「……はぁ。わかりましたよ。お願いします」

「そんなに面倒くさそうにするな。私でも傷つくぞ」


 若干悲しげな表情の静川先生。

 それならもう俺と関わらなければいいと思うんだが。


「では植村。これを使え」


 静川先生から渡されたのは一体の人形。

 大きさは手のひらに乗る程度で、目も口もないのっぺらぼうの人形だ。


「これは魔力が込められた物で、封印魔法をこいつに使うと消えるようになっている」

「ほぉ。なるほど」

「ということを、前回の座学の授業でやったんだがな。その反応からするにお前は聞いてなかったみたいだな」

「…………」


 なんか微妙な空気になってしまったが、とりあえず封印魔法をやってみよう。


「……なんだ。お前、詠唱を覚えていないのか?」


 持ってきていた魔導書を開き始めた俺に静香先生が質す。


「はい。これは覚えてないですね」


 他にも色々覚えてない魔法あるけど。ってか、逆に覚えているやつの方が少ない。


「仕方がないやつだな。でもまあいい。とりあえずやってみろ」


 静川先生の指示を頂いたところで、人形を地面に置き、詠唱を唱える。


「我が魔の力を以て、魔が作りし者に、聖なる言霊を与え給え――《浄化(パージ)》」


 そして魔法陣が出現……するわけもなく、通常運転の不発。

 昔は失敗したら結構恥ずかしかったりもしたが、もう今やなんの恥もなし。

 周りの生徒から嘲笑されることも慣れたものだ。


「相変わらずお前の魔法は何も起きないな」


 何も起きない魔法、それはもう魔法ではないですよ先生。


「別にいいんですよ。うちの《封印(シールド)》役はすでに結衣がいますから。俺は補助魔法だけ頑張ればいいんです」


 そうだ、俺は織城先輩から《補助(サポート)》になれと言われているんだ。

 目指せ最強の《補助(サポート)》。


「そうか。だが、封印魔法を覚えないよりは覚えておいた方がいいだろ。私が手本を見せてやる」


 そう言って静川先生は俺と立ち位置を変わる。俺は何回この人の魔法を見ればいいんだか。


「植村、よく見ておけよ。我が魔の力を以て、魔が作りし者に、聖なる言霊を与え給え――《浄化(パージ)》」


 詠唱が唱え終わった瞬間、人形の真下に魔法陣が顕現する。

 すると、それは白い輝きを放ちながら段々と光を増していく。そして、光が完全に人形を飲み込んだ刹那、魔法陣と共に人形が消失した。


「さすがですね。もう帰っていいですか?」

「よし植村。今のを参考にお前もやってみろ」

「…………」


 この後、俺は二十一回詠唱を唱えたが、魔法が発動することは一度たりともなかった。



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