98話目
これから戻せると言ったのに結局3週間もあいてしまいました。
申し訳ありません。
荷馬車の前で列に並んで待っている。
まだあの男は出てこないので少し並んでいる魔物たちを観察してみる。
ここに来たときはどんな魔物が居るのかなんて、ほとんど気にしてなかったからな。
今よくよく見れば変わった奴がいて面白い。
そうだな、例えば......彼奴なんかどうだろうか?
列の最初から13番目にいるやつ。
見た目は......狸が一番近いだろうか?
全体的に毛がフワフワで、普通に見る狸よりも更に丸々としている。
しかし頭のてっぺんから尾の付け根まで1列に刃物が生えている。
その刃物は両刃であるようで、よく切れそうだ。
狸と言えば、尻尾も丸く可愛らしい感じなのだが、こいつの尻尾はギラリと光っている。
なぜ、こいつが面白いと思ったのかと言うと、尾が刃物なのは分かるんだ。
後ろから来た敵も振り替える必要がなく、尾を振って切ることができる。
四足の動物だと背後を捕られると攻撃できないからな。
だがなぜ頭から尾の付け根まで1列に刃物が生えているのか......
これも背後からの敵に対して防御をするのであれば、もっと背中全体に刃物を生やせばいい。
そうであるのに、なぜか1列に生やしているだけ...
一体何に必要であるのか?
まだ出てこないか。
後もう1匹ほど紹介するか。
俺から4つ後ろにいる奴。
後ろ足で立ち上がりキョロキョロと見回している行動はミーアキャットのようだが、姿はイタチのように見える。
......イタチもするのだろうか?
分からん。
取り合えず、体全体が液体で出来ているらしく、ぐるぐると水流が体を循環しており、イタチの姿を形成している。
液体は青く透き通った色をしている。
額には体よりも暗い青の石がある。
石をぐるっと鎖で巻かれているが、あれは俺達に付いている首輪と同じか?
水はそこを起点に巡っているようだ。
パシャンッと音がした。
イタチは居なくなり、雪の上に青い液体と石が落ちた。
最初は、はっ?っとなったが、1回見ているのでもうなんとも思わない。
次第に雪が溶け、青い液体が乗っている所だけ沈んでいく。
青い液体が見えなくなるまで沈むと、その穴から白いもやのようなものと石が昇ってきた。
そして、先程のイタチの3回りほど大きなイタチをかたどって、空をグルグルと駆け回る。
次第に地面に降りてきて、白いもやの時よりは小さいが元のイタチよりは大きいサイズの青い液体のイタチが出てきた。
そして最初のようにキョロキョロと辺りを見回して、また繰り返していく。
一体何がしたいのか......
そんな変わった奴らを観察していれば
「おら、首輪を見せろ。
最初からこれを付けていれば、俺がこんな手間をしなくて済むってのによ...」
男が荷馬車から出てき、列の最初にいる魔物の首輪を触っている。
やっと来たか。
一体何をしているのだろうか?
よく目を凝らして見てみれば、男の隣には箱があり、何かを取り出しては魔物の首輪に付けていっている。
うーむ、俺の所からは見にくいな。
『何か小さいものを付けているようである。
丸い......珠のようである。』
ライガーは俺の前に居るが、そこからなら見えるのか?
まぁいい。
付けるのは簡単なようで、結構早くにライガーの順番になった。
男は首輪をグイッと引っ張り、箱の中から銀色の丸い珠をだしてライガーの首輪に付けている。
ふむ、今の内に鑑定しておくか。
俺に付けられると、視界に入らないから鑑定できないものな。
。。。。。。。。。。。。。。。
収納珠(魔石限定):小さい珠であるが、それよりも大きな物をも収納することが出来る。
魔石だけと限定したため、収納量が通常よりも多くなっている。
しかし、熟練した者が作ったものではなく練習として作られた為、そこまで多くの物は入らない。
また時を止めておくことも、重量を所有者が無視することも出来ない。
。。。。。。。。。。。。。。。
うーん?
あ、あれか。
一週間後にまた来ると言っていた魔石を集めるためのものか。
収納って便利だなと思ったんだが、粗悪品なのか多くの物は入れられないらしいし、時を止めるのと重量無視も出来ないらしい。
時を止めると何がいいのか分からないが、重量を無視できないというのは嫌だな。
何故って?
そりゃぁこの収納珠を首につけて、魔石をどんどん収納していったとする。
重量が無視できないから、物は無いけど重さだけ首に全部かかってくるという事になる。
首が重いのは嫌だろう?
俺は嫌だ。
まぁ幸い余り入れられないらしいから、そこまで重くならないとは思うけどな。
と言うかこの男と同じ意見というのは少し嫌だが、何故首輪に最初からつけていなかったのだろうか?
そうすれば今日回収して魔石が得られただろうに...
こいつらは魔石を集めたがっている。
という事は1つでも多く早く欲しいはず......
よく分からないな。
まぁ、こいつらの事なんてどうでもいいから、早く魔石が集まろうが遅くなろうがどうでもいいんだがな。
そんな事を考えていればライガーの首輪にも、背中に乗っていたヴィオラにもつけ終わったようだ。
「ぼさっとしてないで、ちゃちゃっと首輪を見せろ。」
ぼさっとしてた訳では無いんだが...
首輪を引っ張られ、鎖の1つの輪の所に収納珠を取り付けられる。
嵌め込んだだけのように思うんだが、落ちないんだろうか?
「終わったぞ。
のけ!
早く終わらせて、帰って酒でも飲まねぇとやってられねぇぜ。
大体何故俺がこんな事を......」
俺は押しのけられ、次の魔物の首輪を男が引っ張っている。
単純作業だからか、人が誰もおらず聞かれていないと思っているからか、魔物には人の言葉など分かっていないと思っているからか、さっきから愚痴が多い。
最初に俺は言葉が分かっているというような事をギルベルトが言っていたような気がするんだが、忘れたのだろうか?
それとも信じていないのだろうか?
何はともあれ、このまま何か重要なことでもポロッと言わないかな。
この首輪の拘束から逃げ出す方法とか。
こいつらの本当の目的とかな。
大元は誰かとか。
何人ぐらいでこれを行っているのかとか。
出来れば復讐とかしてやりたいんだが...
目的が分かればそれを邪魔が出来るんだがな......
それよりも1番重要なのは、こいつらから逃げてクラウドとどうにか合流することだけどな。
勿論ヴィオラも一緒に...
ライガーはどうするかな。
もし一緒に来たいと言ったら、クラウドに頼んでみようか。
クラウドなら受け入れてくれる気がする。
あぁ、早く元の生活に戻りたい。
たまにハプニングがあるけど、基本的にはのんびりと旅をしていたのに......
だから名前が分からない男。
何か逃げ出せそうな重要なことをポロッと零してくれ!
そう願いながら、俺は男が作業をしている近くで寝そべり、耳をそばだてて一言も漏らさないように集中した。
勿論、俺が聞いていると分からないように自然体を装って......
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