97話目
2週間空いてしまい申し訳ありません。
しかし、大分落ち着いてきたので此れからはちゃんと投稿できると思います。
新年明けまして、これからも宜しくお願いします。
さて、どうするか。
前にいる群れは一向に動こうとしない。
右は何らかの理由で行ってはいけないみたいだし、左は何かよく分からないのがいるしな。
まぁ、1匹か多数かを比べると1匹の方がいいんだが、左に行くとあの痛みを味わされるかもしれない。
それは勘弁願いたいところだ。
左のサルディノプスに追われていた奴は気配察知を持っていないのか、レベルが低いのか分からないが、今も群れがいる方へ何の躊躇いもなく進んでいる。
......まてよ?
このまま進んでいけば必ず群れとぶつかるだろう。
そうすれば群れの奴らはそちらに気を取られるはずだ。
全部でなくとも幾らかは気がそれるはず......
その隙に通ってしまえばいいのではないか?
気休めでしかないかもしれないが、なにも考えずに真っ向からアタックするよりはいいと思う。
.........多分。
この案は悪くない気がする。
と言うか、他に何も思い浮かばない。
後はそうだな......カマイタチを右側に放ってみるか?
雪が舞い上がるような感じで...
そうすればそちらにも気が逸れるのではないか?
すると左右どちらかは見るようになるだろうし、近い方が自分の身の危険になる可能性が高いから、近い方面の方に向くだろう。
すると大体真ん中辺りは警戒が疎かになるはず。
そして、その一瞬の隙をついて真ん中を駆け抜けてしまおう。
幸い俺はスピードタイプだし、ライガーも十分速い。
ヴィオラはライガーの背に乗っているから大丈夫。
......うむ、この作戦でいこう。
左側の奴も随分群れに近づいている。
この視界の良さならもうお互いのことが見えていそうだが、まだどちらも反応はない。
左側の奴が逃げて、それを群れ全体で追ってくれればこんな無茶はしなくてすむのに......
まぁ、仕方ない。
群れが追わない可能性もあるしな。
俺らもこのままここで止まっていては考えていた作戦を実行できない。
少し急がなければ...
俺は走り出す。
するとライガーも後を付いてき、隣に並ぶ。
『ブラン殿、結局どうするのであるか?』
『左の奴が群れに突っ込んでいっている。
左の奴と群れが衝突する前に右側にも注意がいくようにカマイタチを放る。
そうすれば左右に意識が逸れるから、真ん中の警戒が薄いところを全速力で駆け抜けるって感じだ。』
『ふむ、左右に逸れることが出来ぬからそれしかないであるな。
我らが飛ぶことが出来れば上へと逃げられたのであるが......』
『上に逃げたとしても追える奴がいるかもしれないし、遠距離攻撃で落とされるかもしれない。
飛べたとしても自由自在に動けなければ、いい的だからな。』
『むむむ、中々難しいのである。』
そんなことを言いつつ走っていけば、俺らの視界にも群れが見えてきた。
狼、熊、猫、鹿、兎、猪、狐もいるな。
丸まっているが鳥もいる。
あぁ、普通に動物の種類をいっているが全部魔物だ。
日本で一番近そうな動物種を言っているだけで、お前本当に狐?って感じのもいる。
何故か左側から何かが近づいてきているはずなのに、群れの奴らは少ししかそちらを見ていない。
大半は伏せていたり、丸まっていたりと結構無防備だ。
群れでいるから安心しきっているのか?
それともこいつらはすごく強くて、ここいらの敵など取るに足らない存在と思っているとか?
おっと、左の奴がそろそろ群れに突っ込みそうだ。
俺もカマイタチを体の周りに作り、準備をする。
それを感じたのかライガーが此方に向き、
『もうそろそろであるか?』
『あぁ、意思疏通は繋げておいてくれ。
俺が今って言ったら全速力で駆け抜けろ。
ヴィオラを落とさないようにな。』
『うむ、了解したのである。』
左の奴は少しスピードを落としてきている。
が、まだちゃんと近づいていっているな。
群れはまだ何も反応を示さない。
ちっ、何故左側に興味を示さない?
普通であればもっと左に警戒が行ってもいいはずであるのに...
もしや、左の奴は群れの仲間か?
そうでなければもっと警戒をしてもいいはず...
さすがにここまで近づけば仲間でない奴は攻撃するだろう。
どうする?
もし左の奴が仲間だったとして、俺が右側にカマイタチを放っても半分は俺らの方に向くだろう。
それをかわして抜けられるのか?
...あぁもうそろそろ放らなければ俺らも大分近づいた。
左の奴は群れに入っているが何もおきない。
やはり仲間だったのか...
その可能性を考えてなかった。
群れの一部が此方に気付き、見ている。
だがそれはごく僅かで、後は無防備に居るだけだ。
左の奴は嫌な誤算だが、此方はいい誤算だ。
強かろうとも油断をしてくれているなら、何とかなるかもしれない。
カマイタチを右側に放る。
バババババッ!
刃が雪に当たる度に白い柱が生える。
伏せていた奴らも、丸まっていた奴らも、此方を見ていた奴らもほぼ全てが右側に注目した。
『今だ!!』
ライガーが体に雷を纏って横を駆けて行く。
俺も追い風を使い、4つの足に力を入れ雪を蹴っていく。
魔物の群れの中に入った。
俺が近くを通った魔物は驚いたような顔をして、此方に視線を戻す。
だが、誰も俺らが走り抜けるのを邪魔してくるものはいない。
いや追い付けていないのだ。
魔物の群れの真ん中辺りまで来た。
此方に視線を戻す者が多くなってきた。
だが、誰も動かない。
これは行けるんじゃないか?
そう思ったとき、
「何を逃げようとしている。」
その声が聞こえると同時に、身体中を貫かれたかのような痛みが走った。
「ガルルァッ!?」
俺が吠えたのかライガーが吠えたのか分からないが、俺もライガーも揉んどりうって雪の上に倒れる。
痛みは一瞬であったが、強い衝撃に筋肉が強張ってしまったのか体が上手いこと動かない。
なんとか目線だけを声がした方に向けると、黒いコートを着た男がいた。
こいつは俺らを此処に連れてき、ギルベルトと手を組んでいた奴だ。
それに、もしかしたらリーシアの元の主人を殺したかも知れない奴。
なぜ、こんなところに...
「ふん、こいつらで生き残っている奴は最後か。
一週間で2割も居なくなっていやがる。
ったく、使えない奴らだなぁ。
首輪だって意外と値が張るって言うのによ!」
男が近付いてきて、俺の腹を思いっきり蹴る。
「ギャンッ!!」
ぐっ、痛ってぇ。
あいつ、本気でやりやがったな!
「ハハハッ。
今日は一人だからあいつに止められなくてすむぜ!
俺は前からお前のことが気に食わねぇ。
犬っころのくせに生意気な顔してるんだよなぁ。
犬は犬らしく、主人の言うことだけ聞いてればいいんだよ!」
グリグリと先程蹴ったところを踏みつけてくる。
グウウッ!
体は動くようになったが、こう踏みつけられていると起き上がれねぇ。
だが動けたところで反撃は出来ないんだよな。
この首輪さえなければ、こんな奴喉笛噛みきってやるのに!
「おっと、そうだ。
こんなことしてる場合じゃなかったな。
ちゃんとして帰らなければ怒られちまうんだった。
おら、お前ら順番に並べ!」
そう言って俺から足をどけ、荷馬車の方へいく。
あんなの有ったんだな。
見えてなかった。
...そうか、首輪が急に引っ張っていたのはここに集めるためか。
そう言えば彼奴らが帰るとき一週間後また来るようなことを言ってたな。
それが今日だったのか。
で、群れは前に俺らと一緒に連れてこられた奴等だったってことか。
あんなに考えてたのが馬鹿みたいだ。
...あれ?
じゃー何故左に逸れたら痛みが走ったんだ?
ここに着かないから?
いや、待てよ?
あの時、此処に行くのは嫌だって思いながら左に逸れたな。
それでか?
...そりゃ、普通はこんな群れに行きたがるわけが無いだろう。
こんなに色んな奴がいるのに...
『ブラン殿、大丈夫であるか?
さっきはすまぬ。
助けに入れなかった...』
色々と考えているとライガーが近寄ってきた。
『まぁな。
気にしなくて大丈夫だ。
助けに入っていれば、首輪が反応してライガーに痛みが行くだろう。
首輪の痛みは蹴られるのよりも酷いからな。
あれで済んでましだったと思うぞ。』
『むぅ、しかし......』
『気にするな。
それよりも、1週間経って彼奴が来た。
俺らを集めて並ばせて何をする気だろうな?』
ライガーの気を逸らすため話を変える。
まぁ、普通に気になる事であるしな。
『...何であろうな。
ただ、我らに対して良いことでないことだけは確かである。』
急に話を変えたのでライガーは何か言いたげであったが、俺の出した話題に乗ってきた。
『そうだよな。
彼奴らが俺らにとって良いことをするわけがない。』
周りにいた魔物達は荷馬車の前に列を作り始めた。
俺らも不安を抱えながら、静かに列に参加した。
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