93話目
...ん......あぁーよく寝た。
やはり、疲れが溜まってたのかな。
熟睡してたみたいだ。
ヴィオラは....あれ?
居ない!
どこに行ったんだ?
辺りを見回せば、穴に嵌ってしまっているライガーとその上で頭を振っているヴィオラが居た。
...あっ、ライガーの事忘れてた。
と言うかまだ動けないのだろうか?
近づいてみれば、ヴィオラが此方に気づき頭を振るのを止めた。
『シクシク......我は悪くないのである。
すっぽり、ジャストフィットなのである...シクシク。』
『あぁーライガー?
どうしたんだ?』
『ブラン殿、ヴィオラ嬢が我を虐めるのである。』
ヴィオラ嬢?
ヴィオラの事か。
ヴィオラが何かしたのだろうか?
『ヴィオラが何かしたのか?』
『ヴィオラ嬢に言葉で責められるのである。
どうにかして欲しいのである...シクシク。
我ではどうにも出来ないのである。』
ヴィオラ、一体何を言ったんだ?
と言うかライガーの方が強いのに、よく言えたな。
言っちゃ悪いがライガーの一撃で簡単に死んでしまうよな。
『ライガー、どうにかしてあげたいのはやまやまなんだが、俺は何をすればいいんだ?』
『そうであるな...
取り敢えず我をこの穴から出して欲しいのである。
そうすればヴィオラ嬢の怒りも納まる...はす......』
ふむ?
何故ライガーを穴から出せばヴィオラの怒りが納まるんだ?
まぁ、早く出してしまおう。
ライガーだってずっとこんな所に嵌って居たくないだろうし...
しかし、どう出すかだよな。
取り敢えず引っ張るか。
尻尾を噛み、グイグイと引っ張る。
『痛い!
痛いである、ブラン殿!!
尻尾は、尻尾は止めて欲しいである!』
あっ、ダメっぽい。
1番引っ張りやすそうだったのに...
仕方ない、左後ろ足を咥える。
う、む。
重い...
それに太い。
これ、上手く引っ張れるか?
再度グイグイと引っ張る。
重いし、口に咥えられるサイズでは無いからか、思いっ切り引けてる感じはしない。
力が上手く伝わってないんだろうな。
うーむ、これではダメだな。
いっその事引く力を1つにしてしまおうか。
さっきまではグイグイと体に反動をつけ後ろに数回引いていたが、今度は1回で前に、風も使おうか。
追い風は俺の後ろから前にしか吹かないからな。
ライガーの体に背を向けた状態で足を咥えれば大丈夫だな。
よし。
足を咥えて、前に進もうとすると同時に追い風!
...ぐぐぐっ、抜けない。
後、上手く咥えられてないから足が口から出ていきそう!
ぬあぁ、逃げるな足!
顎に力を入れれば、ズブリと牙が沈みこんだ。
「ガルァッ!!」
背後から悲鳴が聞こえた。
けど、これなら抜けそう!
地に足をつけ、前に飛び出すように蹴る。
追い風も忘れない。
少しの抵抗の後、俺は前に吹き飛んだ。
「ギャンッ!!」
「ガァッ!?」
口が壁にぶつかりそうであった為、咄嗟に顔を横に向ける。
横っ面を壁に打ちつけ、地面にべシャリと落ちた。
い、痛い......
『打撃耐性Lv1を得ました。』
あ、耐性が付いた。
やったね。
『...う、少し荒っぽいが無事出ることが出来たのである。
感謝を、ありがとう。』
ライガーが俺の横からのそりと起き上がり頭を下げつつそう言った。
『いや、出られて良かったな。
というか、もう動けるようになったんだな。』
『うぬ。
動けるようになっても、あの穴から抜け出せなかったのであるが......』
そんなにすっぽり嵌ってたんだな。
...む?
足元に衝撃を感じた。
見ればヴィオラが尻尾で叩いている。
なんだ?
どうかしたのか?
『ヴィオラ嬢はお腹がすいたようである。
それで、あの穴の中に入っている魚を食べていいかブラン殿に聞いているのである。』
あぁ、なるほど。
確かに何も食べてないもんな。
そんな事を考えると俺もお腹が空いてきた。
『ヴィオラに食べてもいいぞ、と伝えてくれるか?
ついでに俺はクリアリンクスを外で捌いてくる。
クリアリンクスの肉も食べてしまおう。
どうせあの魚だけでは足りないからな。』
『うむ、分かったのである。』
ライガーがヴィオラに伝えたのか、ヴィオラが穴の方に向かっていった。
ライガーもそれについて行く。
さて、俺は外に行きますか。
クリアリンクスを背中に乗せ、外に出る。
少し離れて、...これぐらいでいいか。
毛皮を先に剥がないとな。
腹側を上から下に割いて、開いていく。
頭は......もうめんどくさいから剥がなくていいか。
.........よし、何とか出来たな。
たまに穴が空いてるけど...
まぁ仕方ない。
狼の爪ではこれが限界だ。
後は食べない内蔵を抜いて、穴を掘って埋める。
骨はどうしようか。
もうこのまま持って帰るか。
「グルルルルッ」
ん?
なんの音だ?
「グルアッ!!」
ガブリと後ろ足を何かに噛まれた。
いったい!!
カマイタチを噛まれた後ろ足付近に発生させる。
噛んでいたものは離れていった。
気配察知使ってなかったな、そう言えば。
作業をするのに夢中になりすぎてた。
気をつけなければ...
気配察知を使い、攻撃を仕掛けてきたやつを探す。
...居た。
また背後から近づいてきてるな。
ばっと振り返り、カマイタチを飛ばす。
見えたのは、白に薄く青色が入った毛並みの狼だ。
即座に鑑定。
。。。。。。。。。。。。。。。
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種族:アイスウルフ
Lv17/55 状態:飢餓(極小)
HP 940(952) MP 183
力 437(457)
防御 366
魔力 351
俊敏 366(386)
ランクC
[通常スキル]
噛みつきLv4 引っ掻きLv3
体当たりLv1 アイスニードルLv2
氷牙爪撃Lv2 気配察知Lv3
気配消去Lv1
[特殊スキル]
超嗅覚Lv_
[称号]
1匹狼
。。。。。。。。。。。。。。。
『アイスウルフ:群れで狩りをする狼。
寒い雪の降る所に多く生息している。
白に薄く青色が入った毛並みは美しく、その毛皮を欲しがる人は多い。
しかし、群れでおり、氷の針は注意が必要である。』
ふむ、群れでいるとあるが、こいつは1匹。
称号も1匹狼だし、他に仲間はいなさそうだ。
後はアイスニードルに注意か....
これぐらいで1対1なら勝てるはず。
特に変わったスキルもないしね。
よし、新たな食料だ。
足を噛んでくれた礼も含めて、思い知らせてやる。
ブックマークありがとうございます。