91話目
さて、あれから引きづりつつ体力が減ってないか見てみたが、全然減らなかったので大丈夫なのであろうという事にした。
『少し気になることがあるのだが、お主はなんなのだ?
あぁ別段深い意味がある訳では無い。
ただ、我の居た所にはお主のようなものはいなかったのだ。』
『そう言えば自己紹介してなかったな。
俺はゲイルウルフのブランと言う。』
『...何、お主は名前があるのか。』
『あぁ、俺の主人が付けてくれたんだ。』
『主人?
お主は人と絆を作った魔物なのか。
それが何故ここに?
あの3人組の誰かと結んでいるのか?』
ライガーは少し怒りを滲ませ、そう言った。
『いや、そうじゃない。
俺はあの3人とは全く関係ない...
いや、少しあるが...
取り敢えず、絆を結んでいるのは3人とは別の人だよ。』
そう言うとライガーは怒りを引っ込め、
『ふむ?
それでは何故ここに?』
そこで俺はクラウドと出会い、絆を結んだところから簡単に話していった。
ライガーは何も言わず聞いていたが、目を見開いたり、頷いたり、鼻息を荒くして怒ったりしていた。
『まぁ大体はこんな感じかな?
で、今は一緒に捕まったニードルリザードのヴィオラと居る。
引きづって行ってる場所はそこだ。
そこなら魔物とも出くわしにくいからな。』
『ふむ、なるほど。
ギルベルトとかいう男に復讐が出来れば良いな。
我も助けてもらった礼だ。
手伝おう。』
ふんすふんす言いながらそんな事を伝えてくる。
いや、そんな復讐なんて考えて無かったんだけど!?
『と言うか、俺ライガーの事助けれていたか?
ほぼ何もしてないと思うんだが...』
『とても助かったぞ。
あのままでは我は死んでいたであろうからな。』
『そうか?
俺が居なくても倒せたんじゃ?』
そう、俺が攻撃できたのはライガーが戦っている所にたどり着いた時と、クリアリンクスの攻撃にカウンターとして放ったカマイタチだけ。
両方とも浅く、これと言った影響を及ばすことは出来なかった。
それ位のダメージしか与えていないのだ。
意味あったのか?
とも思うだろう。
『いやいや、我には彼奴を視認することは出来なかった。
あいにく我は気配を読むのも苦手でな。
お主が来て、彼奴を攻撃し、傷が出来て見ることができるようになったのだ。
お主が来なければ見ることも叶わぬ。
それに最後の攻撃もお主がいるから出来たこと。
誰もいない所でこのような無茶など出来ぬからな。』
『それ戦闘が終わった後、俺が1人でさっさと何処か行ってたらどうすんだよ。』
『ふむ、そうなれば違う魔物に襲われて終わりだな。
...だが、我は者を見る目はある方だと思うのだ。
現にお主は我を1人にしていないであろう?
拠点を作っており、そこに引きづられていくとは思わなかったがな。』
カラカラとライガーは笑う。
居心地が悪い為、更に力強く引いていく。
まだまだ拠点には付かなさそうだ。
そうだ、ライガーはどうして此処に居るのか聞いてみるか。
『.なぁ、話は変わるんだけどお前は何故ここに居るんだ?』
『ぬ?
そうだな、お主は話してくれたことだし我も話そう。
何、お主のように嵌められた訳でもなく、ただ我が負けてしまったと言うだけの余り面白くない話なのだがな。』
そこでライガーは1つ息を吐き、
『我は雷の降る地域で育ったのだ。
父も母も兄弟達も居た。
そこですくすく育ちライガーとなれたのだ。
兄弟達の中でも我は強い方だった。
狩りをすれば必ず獲物は持ち帰ったし、時にはひと狩りのうち獲物を多数持ち帰ることもあった。
皆にも頼られていたしな。
そこで、暫くたったある日。
我はオスであるし、十分に成長しているから群れを離れ、また新たな群れを作って行かなければならなくなった。
我はブラリブラリと宛もなく歩き、住むのに良さそうな場所を探し始めた。
そこでだ、人間という生き物を始めてみたのは。
我より小さいし、爪も牙もない。
持っているのは細く長い棒だけ。
あぁ、傍らにあと2人居たな。
だが1人は更に小さく、もう1人は硬そうな銀色のものを着ていたが何もしてこなかった。
我は細い棒を持っていた若葉のような色の髪の長い人間、ただ1人に負けたのだ。』
悔しそうに牙を見せながらそう言う。
髪の長いという事は女性か?
その人がライガーを破っただと?
ギルベルト並に強いのだろうか......
『その後はこの首輪を付けられ、ここまで運ばれてきた。
以上が我の経緯だな。』
『その女性には何故負けてしまったんだ?
ライガーは十分強いと思うのだが...』
『それはだな、我が増長していたのもあるが、我が近づく前に一撃で何かをされたのだ。
それが何だったのかは分からぬ。
ただ動くことは叶わぬし、雷を纏っても変化はなし。
遠距離攻撃をしても防がれるだけであった。』
え、何それ恐ろし.....うおわっ!?
後ろ足を踏み出せば何も足を支える所がなかった。
なに!?
後ろを振り向けば、...穴?
あ、拠点に着いたのか。
『どうしたのだ?
何かあったのか?』
『いや拠点に着いたみたいだ。
これから穴の中に引きづって行くからな。』
『う、うむ。
よろしく頼む。』
引きづって入っていくのはいいのだが、これ、通るのか?
幅が足りない気が...
穴の入口まで引きづるが、うん....これは入らないわ。
『なぁ、まだ動けないのか?
ちとこの引っ張り方だと入りそうにないんだが...』
『そうであるか?
うーむ少しなら動けるが......』
横に倒れているのから、起き上がりつつそう言う。
まぁ、立ち上がってはいないが...
『立つことも出来るのか?』
『いや、立てぬな。
これで精一杯である。』
うーむ、どうするか。
よし......ちょっと無理矢理だが他に方法がない。
『うぬ、これは下に掘って行ってるのか。
なだらかに降って居るからこのまま足を動かし、這いずるように進めないだろうか?
む、まだ力が上手く入らぬな。』
ライガーは顔を穴の中に向け、自分でも進めないか考えているようだ。
...後で謝ろう。
ライガーの背後に行き、徐々に距離を取っていく。
これくらいでいいかな。
ばばっばばっと雪を巻き散らせながらライガーに近づく。
『うむー。
のうお主よ......む?』
更に追い打ちで追い風!
パッと地から足を離す。
4つの足を前へ!
『何処に...ウオオオオォォォォォォォッ!?』
ライガーの背を蹴り、押す。
ズザザザーと穴に吸い込まれて行った。
......
...ちょっとやりすぎたかもしれん。
ブックマークありがとうございますm(_ _)m