90話目
虎と戦っていた豹っぽい魔物、クリアリンクス。
俺と比べて、ランクもレベルも高い。
もし、虎と共闘したとしても勝てるかどうか......
『そこの者、同じ境遇にあると見た。
どうか手を貸して欲しい。』
...は?
誰の声だ?
『我はライガーである。
お主と同じく捕えられ、不本意な行動を取らされている。
如何せんこの地にいる我らが同胞は、我のことを知らぬらしい。
手傷を負わされ、しかも我はまだ未熟。
この窮地から抜け出すことが出来ぬのだ。
だから、どうか手を貸して欲しい。』
ライガー?
ライガーってライオンとトラの子の事じゃなかったっけ?
多分この声ってトラの声だよな。
こっちの世界ではそんな事知らないだろうけど、純粋なトラの魔物にライガーって言う名前がついているのはちょっと違和感......
と言うか、サファイア以外にも念話を使うことが出来るやつって居たんだな。
『どうなのだ?
...あぁ、伝え方が分からないのであるか。
伝えたいことを強く思ってくれるだけで良い。
そうすれば我に聞こえるのでな。』
返事をするのを忘れていると、伝え方がわからないと思われ、伝え方を教えてくれた。
...何を答えるんだっけ?
あぁ、共闘するか、しないかっていう話か。
それは願ってもない事だな。
『返事が遅れてしまって済まない。
共闘は此方からもお願いしたいくらいだ。
よろしく頼む。』
『おぉ、そうか。
では、お願...!』
ライガーが話している途中で、俺らが何もしてこないのに焦れたのか、クリアリンクスがライガーに突っ込んできた。
一撃目は何とかライガーも躱す事が出来たようだが、無理に躱した為体勢が崩れた。
そこに2撃目が放たれる。
ライガーの体に赤い線がまた増えた。
そこでようやく俺も動いて急いでライガーの元まで駆け、クリアリンクスに向けて引っ掻きを繰り出す。
しかし、それをヒラリと後方に飛んで躱され気配が掻き消えた。
これが雪躍か!
あと、透明化も使ってるな?
どこだ!?
『後ろだ!』
ばっと振り返れば、うっすらと輪郭が見える。
くっ...今からでは避けられんな。
ここはカウンターを狙うか。
即座にカマイタチを発生させ、狙いも付けずに適当に前方に放つ。
それと同時に顔を右へ...
左の肩がザックリと裂かれたが、こちらの攻撃も多く当たった。
まぁ、こんな近距離なら狙いを付けずとも当たると思って適当に放ったのだがな。
思った通りになって良かった。
それに小さい切り傷ではあるが多くあり、赤い血が垂れているためよく見える。
これで少しは見つけやすくなればいいのだが......
『放電!瞬発!切り裂き!!』
クリアリンクスは後方に跳んで体制を立て直し、さらに追撃を加えてこようとした時、俺の横を何かが通り過ぎていった。
その後はバリバリと音が...
音より速いんですけど.........
何が起こったのかは分からないが、取り敢えずクリアリンクスが吹っ飛んだ。
そして、落ちるであろう所に雷を纏ったトラが向かい、思いっきり噛み付いた。
『経験値を715得ました。』
『知性Lv_により経験値を596得ました。』
『気配察知Lv6になりました。』
『カマイタチLv4になりました。』
『斬撃耐性Lv2になりました。』
..これ、共闘する意味あったのか?
ライガーだけで倒せたんじゃ?
そんな事を思いつつライガーの方を見ていると、クリアリンクスを咥えたままこちらに振り向き、近づいてこようとした瞬間ライガーは倒れた。
...は?
えっ...ちょっどうした!?
ライガーの元へ走る。
近づけば、
『...はっはっはっ、やはりこの体では負担が大きすぎたようである。』
と笑っていた。
...いや、笑い事じゃないし!
『大丈夫なのか?』
『うむ、大丈夫だ。
ちと反動で体が動かぬだけである。
暫くじっとして居れば動けるようになる。』
それは大丈夫とは言わなくない?
『どれくらい動けないんだ?』
『うーむ、分からんが大体半日程度ではなかろうか。』
半日も動けないのかよ!?
こんな所で半日もいれば魔物に襲われるだろう。
仕方ない、どうにか俺の拠点まで引きづって行くか。
引きづれるかな?
あ、クリアリンクスの死体も回収しないと...
俺が倒した訳では無いけど、毛皮だけでいいから欲しい。
大体それを目的にしてたんだし...
クリアリンクスの死体をライガーの上に乗せる。
『ぬ?何をしておるのだ?
何故我に死骸を乗せる?』
このライガー俺よりもでかいんだよな...
体長5mあるよね、見た感じ......
1回引っ張って動かないようなら何か考えるか。
取り敢えずトラの首、頭の後ろ辺りを噛む。
『なに!?
なぜお主が我らの弱点を知っておるのだ!』
ライガーの体から力が抜け、ダラーンとなる。
ふむ、さすが猫科。
トラで魔物だし、効かないかと思ったが、こんな所は共通しているようだ。
まぁ、引っ張る為に噛む所がそこしかなかっただけで、特に力を抜けさせようとは思ってなかったんだけど...
ま、下手に暴れられても困るし丁度いいね!
グイグイっと体に反動をつけ引っ張る。
下が雪であることが良かったのか、最初動き出すのに苦労しただけで、後は少し頑張れば引きづることが出来る。
でもずっと噛んでいないといけないから顎が疲れるぞ。
それにライガーが静かなので、死んでないだろうか?
まぁ死んではないだろうけど噛んでいることや、引きづっていることで体力が減ってるかもしれない。
ちょっとステータスを見せてもらおう。
鑑定。
。。。。。。。。。。。。。。。
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種族:ライガー
Lv11/95 状態:疲労
HP 354(1518) MP 96(136)
力 916
防御 347
魔力 102
俊敏 634
ランクB
[通常スキル]
噛み付きLv3 切り裂きLv1
叩くLv2 体当たりLv2
気配察知Lv2 気配消去Lv2
ドナゾイルLv2 サンダーアローLv1
意思疎通Lv1
[特殊スキル]
瞬発Lv5 放電Lv3
麻痺耐性Lv2 跳躍Lv3
[称号]
ドナレインの主の卵
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『ライガー:雷が絶えず降る地域に住むトラの魔物。
雷を体に纏い、速さと雷の追加攻撃が厄介である。
また、彼らは単独であることが多いが繁殖、子育ての時は群れる傾向にあり、同時に攻撃的になるのでその時期には特に注意が必要である。』
『ドナゾイル:雷の柱が上空から降ってくる。
ドナレインで降る雷と極似していることから、ライガーが常にドナゾイルを使い降らせているのではと噂される程である。』
『意思疎通:自分自身と敵対していない相手のみに使用することが出来る。
自身ともう1人にしか繋ぐことが出来ず、また距離が開きすぎると効果はない。』
『ドナレインの主の卵:ドナレインの魔物の主になれそうな者に与えられる。』
ふむ、ライガーって名前じゃなく種族名だったのか。
それとサファイアと同じ念話であると思っていたが、違ったようだ。
意思疎通はサファイアの持つ念話の下位交換だな。
人数制限あるし、距離にも制限あるし...
よし、最後に一言。
ドナレインの主の卵ってなんだ!!
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