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人生...いや、狼生は楽じゃないね!  作者: ゴンピ~
第3章:平穏の終わり
86/133

86話目



シリソピリアから逃げるため、出来るだけ速く走る。

メイル達にも追いついたな。

クプレがこちらを振り向き少し怯えているが、今は我慢してくれ。

一応、クプレの真後ろではなく右斜め後ろに移動する。

草食動物は視界が広いからここぐらいなら俺が常に見えて、少しは怖くなくなるだろう。

実際、クプレはチラチラと此方を見ているが振り向くことはせず、怯えも幾分かマシになったように思う。


「メイルさん、大丈夫ですか?」


「おうクラウド。

こっちは...大丈夫だ。

奴らはまだ...追ってきてる...のか?」


「えぇ、距離は離れてますがまだ付いてきてます。」


「くっ、...そろそろ......諦めろっ...」


そう毒づきつつ走るメイル。

大分辛そうだ。

メイルも乗せて大丈夫だろうか?

いや、流石に大人は無理か...

クラウドもリーシアも乗ってるし...

だが、メイルはもう限界そうだ。

後ろをチラリと見てみれば最初よりは少なくなっているように思うが、それでも大量に居る。

カマイタチで蹴散らせればいいが、さっきのでMPほぼ空だからな。

何も出来ない。

クラウドに背中の上から魔法をうってもらうか?

後はサファイアか。

クプレに茨で周りを囲んで貰って、出来るだけひと塊になるようにすれば何とかならないか?


『クラウド、シリソピリアから逃げられなさそうだから、此方から魔法で攻撃してしまわないか?

俺はもう魔法がうてそうにないから、サファイアとクラウドにお願いすることになるんだが...』


『そうだね。

このままでは逃げきれなさそうだよね。

今は最初の3分の1くらいになってるし、何とかしてみよっか。

ブランには、この魔法力回復薬をあげるよ。

低い物しかないけどね、これを飲めばある程度魔法を使うことができるようになるよ。』


おぉ、それはいいな。

走りながら何とか飲ませてもらう。


『クプレにはシリソピリアがバラバラに逃げてしまわないように、周囲を囲んで動きを阻害してくれるかな?

出来れば上の方もお願いしたいんだけど、それは無理かな?』


『動かせる茨を上に伸ばして、囲ってしまうようにすれば大丈夫だけど、茨を伸ばすと動かせる本数が減ってしまうわ。

周囲を囲むには結構な本数が必要そうだし.......

どちらもは無理ね。

どちらか片方だけでないと、両方ともが上手くいかなくなっちゃう。』


クプレの茨って無限じゃなかったんだな。

まぁ、そりゃそうか。

それだと強すぎるもんな。


『...それと、私の茨は植物だから炎だと燃えてしまうわ。』


サファイアは炎しか使えないのに、それを使うとクプレの茨が燃える。

すると、囲いがなくなるからシリソピリアに逃げられてしまうな。

そうだよ、植物なんだから燃えるに決まってるじゃないか。

なんで考えつかなかったんだろう。


『...うーん、いや、待って。

茨って緑色だよね。』


茨は緑色だな。

なんでそんなことを今更言うんだ?


『クプレ今茨出せる?

それをサファイアはちょっと燃やしてみて?

思いっきりじゃなく弱めでね。』


クプレが走っている道の先に茨を出した。

それに青い炎の玉が当たる。

茨に火は燃え広がったが、茨自信が燃えてボロボロにはなっていない。

あれ?

炭とか灰になってないな。

まだ茨の形のままだ。

なんでだ?


「うん、やっぱり大丈夫そうだね。

メイルさんこのままでは逃げきれなさそうなので、もう討伐してしまいませんか?

今は最初ほど多くありませんし。」


「そう......なの...か?

たしか...に......おれ....も.限界......」


「それでは今から行いますね。」


『皆頑張ろうね。

まずはクプレ出来るだけ多く囲んじゃって。』


クプレが走るのをやめ、シリソピリアの方を向く。

そして、蹄で2回地面を叩く。

するとズアッと多くの茨が地面から生えた。

シリソピリアは驚き、急いで木に登ろうとする。

俺も止まらないと、


「登らせないよ。

我は風、空は我の支配する所なり。

地に落ちよ、ダウンバースト。」


木に登っていたシリソピリアが、上から下の風に押されポトポト落ちる。


『サファイア、ブラン一斉攻撃だよ!』


よし、任せろ!

先程クラウドから貰った薬で回復した分のMPを全て使ってカマイタチを放つ。

それと同時に俺の頭上を青い炎が飛んで行った。


ズパズパズパッ

ゴォウッ


青い炎がシリソピリアの1番多い所を直撃。

余波で茨に引火したが、実験した時と同じで茨の形は保っているので、囲いが解かれることは無い。

と言うか、俺のカマイタチもサファイアの炎も何とか当たらずにいた奴らが逃げようとした時に、炎の壁となってより行動を阻害していた。


「良かった。

狙い通りだね。」


クラウドがポツリと呟いた。

そうだったのか。

こうなる事を考えて、さっき実験をし、可能であることを確認したのか。

クラウドは頭がよく回るな。




その後は残ったシリソピリアを全員で倒して行った。

メイルは疲れてるからか動きが鈍かったが、それを補佐するようにヴィオラが口から針を飛ばし、確実に仕留めていっていた。

ニードルリザードの攻撃方法って口から針を飛ばすのね。

その事に驚いて気を取られたすきに足をカプっとされたが、そこまでダメージにはなっていない。

だが、ダメージを負ったのは俺だけという結果はいただけない。

シリソピリアにはあまり攻撃力が無かったからいいが、一撃で即死みたいなやつだとそこで終わりだ。

戦闘中は気を引き締めておかないとな。


シリソピリアの討伐証明部位は魔石らしく、1匹1匹取っていかなければいけないので凄く大変そうだった。

俺も手伝おうとしたんだが無理だった。

サファイアは珍しく手伝っていたが、時々魔石を食べてた。

上手い具合に誰も見てない時に食べるから、誰も何も言わない。

寧ろクラウドが手伝ってくれていたお礼を言っていた。

魔石を食べるために手伝っただけだろうに......




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




メイル達と共に都市に帰ってきた。

そして依頼達成の報告をギルドにし、これからメイル達と晩御飯を食べに行く所だ。

あぁ、そうそう。

シリソピリアが大量発生していることをギルドに言うと、最近鉱山の方に冒険者が多く行ってしまうから、十分な討伐がされていなかった為らしい。

何か対策を考えるとのこと...


後、今クプレは一緒にいない。

進化するらしく、ここでは人目が多いからしたくないと言っていた為、クラウドが帰した。

メイルには疲れているから馬小屋の方で先に休ませると言って、誤魔化した。


クプレの進化か。

どんな感じになるんだろうな?

少し楽しみではある。

だが、これで俺が1番弱いランクになってしまった。

まぁシリソピリアを大量に倒したからLv25にはなってるんだけどね。

俺ももう少しで進化できる。

これより巨大化されると困るから大きさ的には現状維持がいいのだけれど...


「クラウドはさ、これからどうするんだ?

まだこの都市に居るのか?」


「いえ、スレンス村に行こうと思ってます。

だからグリールを買いたいんですが、何処に売ってるか知ってますか?」


「グリール?

グリールって物を焼くためのものだろう?

まぁ確かに暖かい物を食べたくなるのは分かるが、スレンス村なんて寒い所に行くんだ。

先に防寒着を買っといた方がいいぞ。

クラウドは火が使えるからグリールなんて要らないと思うんだけどな。」


え?

グリールって物を焼くための道具なのか?

ギルベルトが言っている感じだと防寒具的なものかと思ってたぞ。

だけどそれならなぜグリールを持っていけなんて言ったんだろう?

頭を使えって何回も言っていたから、何か頭を使って考えれば利用する方法があるのかな?


「...そうですか。

では、西にある原生の森で注意する魔物っていますか?」


「んー、そうだな。

ノワームとかラオイスは出会ったら大変だな。」


おぉ、ここはギルベルトの言ってた通りだな。

クラウドも少し安心した顔になる。


「だが、2種ともすっげぇ森の奥深くに行かないと会えないから、行かなきゃ何ともないな。

森で注意する魔物といえばやっぱりアイスハウンドだろうなぁ。

群れで襲ってくるわ、荷物は取られるわで嫌な奴らだ。」


それは嫌だな。

荷物を取られると食事や回復など色々と出来なくなる。

それは要注意何な魔物だ。

だがなぜギルベルトは余り遭遇しない魔物のことを教えて、よく遭遇する嫌な魔物は教えてくれなかったんだろう?

流石にアイスハウンドの事は言ってくれてもいいはず。


「なぁクラウド、誰かに教えられたのか?

なんか、少しづつ変だぜ、それ。

誰になんて......」


そこでメイルに誰かがぶつかった。

ぶつかった奴は頭までフードを被っており、顔も見えない為誰か分からない。

そいつは急いで走っていった。


「おい、まて!

盗っ人!!」


盗っ人?

メイルを見れば前で抱えていたリュックサックがない。

リュックサックにはヴィオラが入っていたのに!!


俺は急いで走り、フードの奴を追い掛ける。

相手は人間で、俺は速さに特化しつつある狼だ。

追いつけないことは無い。

フードのやつは小道に入った。

もう少しで追い付く!!

俺も急いで曲がり小道に入る。

行き止まりらしくフードの奴は突っ立っていた。

良し、捕まえたぞ!

そう思い、飛びかかろうとした時ガツンっと大きな音がした。

俺は力無く倒れる。

視界がぼやっとし、体が動かない。

頭を殴られたか......

俺のすぐ横には俺を殴ったであろう別のフードの奴がサファイアを押さえていた。

逃げろ!

と言いたいが、体を動かすことも、声を上げることも出来ない。

視界はどんどん暗くなっていく。

リュックサックを持ったフードの男が此方に歩いてきた。

近づき、一言。


「頭を使えと言ったのに......」


そこで、俺の意識は無くなった。







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