83話目
申し訳ございません。
遅くなりました。
気配察知を広げたまま森の中に入る。
ヴィオラはメイルの少し後ろをチョコチョコ歩いている。
都市の中ではカバンに入れるか、腕で抱えていたのだが森に入ると降ろしてヴィオラの動きたいようにしているようだ。
都市の中だと人が多く居るため、踏まれることを考慮して地面に降ろさないのだろうか?
大きめの蜥蜴とはいえ小さく、下を見ないとヴィオラには気づかないからな。
絶対に踏まれる。
ん?上に何かいるな。
『クラウド、左の方の木の上から何か近付いてきている。
1匹のようだ。』
『分かった。
見えて敵だったらあの風の刃で攻撃して?
クプレは茨で拘束するようにしてみて。
無理はしなくていいからね。』
「メイルさん、左の上から敵1です。」
「なに?
索敵が早いな。
全然気が付かなかった。
俺らはどうすればいい?」
「取り敢えずブランとクプレが攻撃と拘束をする手筈にしてます。」
...よし、見えた!
木の上という事で依頼にあったシリソピリアかと思ったが違うようだ。
取り敢えず鑑定。
。。。。。。。。。。。。。。。
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種族:グリフェリス
Lv5/27 状態:健康
HP 42 MP 16
力 21
防御 13
魔力 5
俊敏 38
ランクE+
[通常スキル]
引っ掻きLv3 噛みつきLv3
気配察知Lv1 気配消去Lv2
威嚇Lv1
[特殊スキル]
軽業Lv2 夜目Lv2
。。。。。。。。。。。。。。。
『グリフェリス:体毛が深緑色をしており、森の中に溶け込む。
そのため目で見つけるには少し苦労をする。
身軽で木の上を縦横無尽に走る。』
『鑑定Lv9になりました。』
グリフェリスは緑色の毛皮をした猫のように見える。
家猫のような体つきではなく引き締まり、しなやかさが窺える。
耳も少し大きめかな?
「シャー!!」
グリフェリスは俺に見つかっていることが分かったのか、枝の上で急停止し、此方に威嚇してくる。
だがそれは全く効かない。
威嚇とは相手より自分が強い時に効果を発揮するため、グリフェリスが俺に向かって威嚇しても俺はなんともない。
という事で、威嚇は無視してカマイタチを飛ばす。
それを軽やかに躱すグリフェリス。
そして次の枝に着地をした。
が、着地をするかしないかのうちに枝が折れる。
先程のカマイタチの残りで枝を切り落としたのだ。
「...っうに゛ゃー!!」
そこをクプレが伸ばした茨で拘束する。
グリフェリスが暴れるが、拘束が解かれることは無い。
もう一度カマイタチを使い、グリフェリスの首を飛ばす。
ビクッと一瞬はね、動かなくなった。
『経験値を61得ました。』
『知性Lv._により経験値を51得ました。』
「早いな...
俺らが介入する暇が無かった......
元から来る場所が分かっていたかのように見ていたということは、索敵が得意なのはブランか...
まぁ、狼系だもんな。」
メイルが1人で何かブツブツ言っている。
俺の気配察知のレベルは高いからな。
少しドヤ顔でいると、
「この魔物は初めて見るなぁ。
メイルさん、何か知ってますか?」
ドヤ顔をかましている俺を少し変な目で見ていたメイルはクラウドに呼ばれて魔物の方を見る。
「...ん?
あぁ、グリフェリスだな。
ここの森によく出る魔物で討伐部位は尻尾だな。
あと皮が売れるぞ。
皮をなめしてハープという楽器に使えるらしい。」
「そうなんですね。
じゃー、ちょっと解体していいですか?」
「あぁ、俺らは周りを警戒してるな。」
解体が終わり、再び森の中を進む。
リップル...
リップル......
どこにあるんだ?
と言うか、リップルってどういう形で色か聞くの忘れてたな。
『クラウド、リップルってどんな形をしてるんだ?』
「あー、言うの忘れてたね。
丸い粒がいっぱいついてる赤い実だよ。」
丸い粒がいっぱい?
ブドウのようなものだろうか?
...おっ、ちょうどブドウを赤くしたみたいなのがある。
『クラウド、あれか?』
「んー?
...あー、あれは違うよ。
あれも粒がいっぱいで赤いけど下に垂れ下がってるでしょ?
リップルはあれの逆なんだ。
それにもっと鮮やかな赤色をしてるんだよ。」
ふーむ、あれとは違うのか。
あれはなんなのだろうか?
『ブラープ:血のように赤い色をした果実。
その赤黒い色から忌避されているが、みずみずしく濃厚な味わいがある。
また魔力を回復する効果があり、森人族が好んで食べる。』
ほう、ほうほう!
これも美味しいんじゃないか。
それに森人族が好むってことは、クラウドも好きなんじゃないか?
という事でブラープのなっている所まで寄っていく。
...うーむ、しかしどうやってとるか。
カマイタチで枝ごと切ってしまおうか。
そして、その枝を咥えて持ち運べばいいしな。
よし、そうしよう。
カマイタチで枝を切り飛ばす。
ジャンプして落下してきている枝を咥える。
よっしゃ、取れた。
実をそっと地面に置く。
ふむ、近くで見ればより赤黒く、これを知らぬまま食べようなど思わないだろう。
なんか、毒がありそうに見えるし...
『...おい、お前それ食うのか?
やめといた方がいいんじゃないか?』
サファイアからもやめとけと言われる。
だが、鑑定では大丈夫だと書いてあったし...
...ん?そう言えばいつもより少し詳しくなってたな。
最後の一文はいつももう一度鑑定しないと出てこなさそうな情報だったのに...
自分のステータスを見てみれば、いつの間にか鑑定のレベルが上がってるじゃないか。
まぁ、取り敢えず置いておいて先にブラープだ。
『大丈夫だ。
見た目の割にこの実は美味いらしいぞ?
サファイアもたべるか?』
『...いや、俺は遠慮しておく。』
勿体ないなー。
ま、いいか。
それじゃぁ、いただきます!
「...おい!
それ食べるのか!?」
メイルが慌ててるが知らないな。
1粒房からとり、歯で潰す。
水風船が割れたかのように、ブラープの皮が裂けた途端に口の中を果汁が満たす。
あんな小さな粒で、こんなに入っていたとは思えないほどの水分だ。
これはもうジュースだな。
味はブドウだ。
ブドウの粒をそのまま食べた時よりも更に濃縮な味わいのジュースを飲んでいる気分。
あぁ、犬の口が恨めしい。
頬がないから果汁が溜めれず、少し口の端からこぼれ落ちてしまった。
あぁ、勿体ない。
もっと味わっていたいが、飲んでしまう。
もう一個食べるか。
なんか、周りが騒がしい。
まぁいいか。
もう1粒...あぁ、至福。
更に食べようとした時、目の前からブラープの付いた枝が無くなっていた。
なぜ!?
何処に!?
周りを見ればメイルが枝を持って大きく振りかぶっている。
おいおい、おいおいおいおい!?
何しようとしてんの!
止めに行こうと動こうとした時、右から衝撃が来た。
見ればクラウドが抱きついてきている。
「ブラン、死なないで!
今すぐ治してあげるからね!
やっぱり毒かな。
あぁ、こんなに口から血が出て...」
は?
待って、クラウド。
俺元気だから!
毒なんかになってないから。
口から出てるの血じゃなくてブラープの果汁だから!!
あぁ、メイルそれ振らないで!
果実を木の幹に叩きつけて潰そうとしないで!
それ効果も凄いけど、とっても美味しい代物なんだよ。
俺が食べて毒った危険な果実じゃないから!!
しかし、俺の願いは届かず。
無情にもブラープの実は叩き潰され、辺り一面に果汁をばら蒔いた。
それはここで血みどろの争いがあったかのような光景を生み出したが、真実は美味い果汁。
あぁ、ブラープの実が〜......
俺は大変落ち込んだ。