82話目
翌日。
クラウドはせっせとゴーガファントの傷を癒している。
だが、一向に目を覚まさない。
「...うーん、取り敢えずはここで終わりかな?」
そう言って帰還させるクラウド。
ずっと治療に当たっている訳にもいかないからな。
というか、ずっとしていたらクラウドが倒れるので俺が止める。
「それじゃ、ギルドに行って何か依頼を受けよっか。」
俺は頷き、クラウドの横を歩く。
「...あ、待って!」
リーシアが慌てて走ってきた。
クラウドの手伝いをしようとしていたが、魔法が使えないため手伝うことが出来ず、少しむくれていた。
そして1人で暇を持て余し、草陰で何やらゴソゴソとしていたのだ。
おかげで、服やら髪やらに葉っぱが付いている。
「リーシア、頭と服に葉っぱが付いてるよ。」
「え、どこどこ?」
「ほら、ここと...ここに。」
そう言って、クラウドは葉っぱを取る。
「ありがとう!
お礼にこれあげる!」
クラウドに向けて手を差し出すリーシア。
その手の上には草や花でできた輪がある。
「貰っていいの?
ありがとう。」
リーシアから草花の輪を貰い首にかける。
ふむ、頭に乗せる位の大きさかと思ったが、ギリギリ頭が通る長さだな。
リーシアはクラウドに貰ってもらえて嬉しいのか、尻尾がブンブン振れている。
やはり犬系の獣人だから感情が尻尾に現れるんだな。
「それじゃ、みんな行くよ。」
そう言って、歩き出すクラウド。
今度はリーシアの手を取って一緒に歩いている。
なんだか種族は違うが仲の良い兄妹のように見えるな。
さて、俺も歩かないと置いていかれてしまう。
クラウドの元まで駆ける。
傍にいたクプレが驚いて飛び跳ねた。
あ、...すいません。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ギルドに着き、何か受けられそうな依頼はないか探す。
俺も字を少し教えて貰ったので、練習を兼ねて依頼表を見る。
この狼の頭は悪い訳では無いらしく、大体の文字は結構早くに分かるようになった。
だが、やはり所々忘れているらしく読めない。
まぁこれは反復していけば大丈夫なはず。
それに所々読めなくても推測は出来るし...
「んー、これなんかどうかなー?」
そう言って1枚の紙を取り、俺に見せてくれる。
なになに?
...リップル.の..採...取?
『リップルの採取か?』
『そうだよ、よく読めたね。
僕が少し読み聞かせしただけなのに、そんなにすぐ読めるようになるなんてブランは賢いね。
まぁ、元々人の言葉がわかるのも早かったもんね。
それでこれでいいかな?
木になってる食べ物だけど簡単に取れるし、美味しいんだよ。』
ほうほう、美味しいのか。
それはぜひ食べてみたいな。
『俺はそれでいいぞ。』
「分かった。
リーシアもいいかな?」
「リップル好きだよ!」
「そうなんだね。
じゃー、依頼より少し多く取ろうか。」
そう言って、クラウドは依頼を受けた。
そしてこれからリップル採取に向かうため門の方に向けて歩き出す。
リップルってどんな食べ物なのだろうか?
クラウドもリーシアも美味しいと言っていたし、きっと美味しいんだろうなー。
少し楽しみだ。
ウキウキしつつ歩いていると
「...おーい、クラウドか?」
ん?誰だ?
クラウドよりは少し年上そうな少年が手を振りながら、此方に走って来る。
んー?どこかで見たことあるような?
「なんだ。
忘れてしまったのか?
それはちょっと悲しいな。
俺だよ俺!」
俺俺と言われても全然わからん。
この都市に来てから知り合ったのはギルベルトくらいだし、前の街にいた知り合いなのだろうか?
「僕はちゃんと覚えてますよ。
メイルさん、ヴィオラとは仲良くやれてますか?」
メイル?ヴィオラ?
「おぉ、覚えてくれていたのか。
あれから何とか上手くやれてるよ。
ちょっと待ってくれ。」
そう言って背中のカバンを下ろしゴソゴソとしだした。
なんだ?
カバンからオレンジ色のものを取り出す。
あっ!
思い出した!
ニードルリザードのヴィオラか。
坑道内で会ったんだった。
ヴィオラはカバンから出てきても頭を振っていない。
もう怒っていないということか。
「ヴィオラ、もう頭振ってませんね。」
「まぁな。
たまに俺がヘマをすると怒ってるけど。」
頭を掻きつつそう言う。
「...っと、そうだ。
クラウドこれから何かするのか?」
「えぇ、リップル採取に行こうとしてます。」
「そうか。
..いや折角また会えたし、一緒に依頼でも受けられれば良いなと思ってな。」
「良いですね。
一緒にしましょう。
でも、リップル採取だと折角6人パーティなのに何だか勿体ないので、何か新しいものを受けましょう。
リップル採取はそれの道中で少し寄っていけば大丈夫ですから。」
「いいのか?」
「はい。」
「ありがとうな!
それじゃ、ギルドに行こう。」
そうして一度引き返し、ギルドでまた依頼を探す。
クラウドののギルドランクはE、メイルのギルドランクはDランクという事で、依頼はDランクの討伐系にする事になった。
そして選んだのがシリソピリアの討伐。
シリソピリアは簡単に言うと蛇型の魔物らしい。
しかし、木の上を飛びまわるのだとか...
蛇と言うだけあり隠密性が高く、油断していると上からの奇襲を食らうのだとか...
「それじゃ、これでいいか?」
「ええ。
...まぁもう受けちゃってますけど。」
クラウドが少し笑う。
「まぁな!
じゃ、行くぞ。」
そうして門の方に向けて歩き出す。
さてさて、リップルとはどんな味なのか...
シリソピリアはどんな外見をしているのか...
奇襲が得意そうだから気配察知を広げておかないとな。
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