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人生...いや、狼生は楽じゃないね!  作者: ゴンピ~
第3章:平穏の終わり
81/132

81話目



扉をドンドン叩く音が響く。

はて、誰だろうか?


「...おい、クラウド居ないのか?」


扉の向こうからそんな声が聞こえる。

この声はギルベルトか!

なんの用事だろうか?


「ガウッ」


俺では扉を開けることは出来ないので、ギルベルトに入ってきてもらうよう声をあげる。


「...ん?

ブランだったか?

入ってもいいのか?」


「ガウ」


扉を開けて入ってくるギルベルト。

部屋の中を見渡して、


「クラウドは居ない...か....

だが、お前達がここに居るということは直ぐに戻ってくるのか?」


俺は肯定として頷く。


「ふむ...

じゃ、少しここで待たせてもらうか。

お前らに言っても分からんと思うが、領主に鉱山の話をしてだな。

その結果をクラウドに伝えようと思ってここに来たんだ。

報酬も貰って来たから、それも分けないといけないしな。」


あー、そういや別れる時にそんな話してたな。

なるほど。

うんうんと頷く俺を見て、ギルベルトは首を傾げる。


「...?

お前は雰囲気でとか、簡単な事しか分からないだけじゃないのか?

結構細かく人の言葉を理解している?」


おう、俺はちゃんと分かっているぞ。

再度頷いてやる。


「ほう......

クラウドが一生懸命教えこんだのか。

じゃー、こっちの鳥は....ってそういやこの前居たのは死んだはず。

今ここに居るのは新しく捕まえた奴か?

だが、こんな鳥ここら辺には居ないぞ?」


ギルベルトが訝しげな顔をしてサファイアを見ている。

あぁ!

ギルベルトにはテイムした魔物っていう風に言ってあるんだった!

サファイアの姿形が少し変わっているから、サファイアであるとは思ってないようだが、こんな魔物はここら辺には居ないから疑われてる!


どうすれば!?

クラウドがここに帰ってきたら、クラウドは突然の事で驚いて慌てるだろう。

そうしたらもうギルベルトに嘘を付いていたのがバレる。

何とかしてクラウドに事前に知らせなければ!

サファイアの方を見る。

すると、さっきまで我関せず状態であったサファイアと目があった。


『なんだ?

何か用か?』


『今のこの状況をクラウドに伝えないと、ギルベルトに嘘がバレる!

クラウドに繋げてくれ。』


『...ちょっと遠いな。

あんまり長くは出来ないぞ?』


『いい!

繋げてくれ!』


すると、クラウドと繋がった気配がした。


『クラウド、ギルベルトが部屋に来てサファイアが見つかった。

サファイアだとは思ってないみたいだが疑っている!』


『...あぁ、ブランだね。

分かったよ。

直ぐに帰るね。』


そこで切れた。

まぁ、伝えられたからいいか。


ギルベルトはしばらくサファイアを見ていたが、ため息を吐いて此方を向いた。


「クラウドが帰ってくるまでどれくらいかかるか分かるか?」


俺は首を横に振る。


「...そうか、分からんか。」


そこでリーシアがおずおずとギルベルトに近づく。

さっきまで固まって居たが、何をするのだろうか?

リーシアはギルベルトが怖いのか、坑道を探索している間もずっとクラウドに隠れていた。

まぁ、クラウドよりも小さい女の子だ。

ガタイのいいギルベルトは怖いのだろう。

顔もお世辞にも優しそうには見えないし...

強面っていう訳でもないが...


「...あの......イス...どうぞ。」


イスを指さしてそう言う。


「...あぁ、ありがとう。

有難く腰掛けさせてもらうよ。」


そう言って腰掛けるギルベルト。

それを見ていたリーシアは元いた自分の場所に戻った。

それからは何も無く、時間が過ぎていく。

俺はぼーっとしているだけなので、なんだが眠くなってきた。

半分夢の世界へ飛びかけている時、足音が聞こえてきた。

あ、クラウドが帰ってきた。

ガチャっと開く扉。

クラウドは片手に絵本を2冊持っている。

今度はどんな話であろうか?


「あっ、ギルベルトさん。

来てたんですね。

すいません、お待たせしてしまって...」


「いや、なんの連絡もなく急に来たのはこっちだからな。

謝る必要はないぞ。

逆に俺の方こそ勝手に部屋に上がって済まなかった。

クラウドは...図書館に行っていたのか?」


「えぇ、ブランに絵本を読み聞かせするんです。

字を覚えたいと言っているので...」


「それはまた、変なやつだな。

魔物が人の字を覚えたいとは...」


ギルベルトはこちらを見て、笑っている。

いいじゃないか、別に。

字を読めなければ依頼が読めないではないか。

むすっとする俺に、更に笑みを深めるギルベルト。

しかし、その笑顔を引っ込めクラウドの方を向く。


「...なぁ、冒険者なんだから手の内を聞くのは、無礼であるのは分かるんだが、あそこにいる鳥は何処で捕まえたんだ?

まさか、あの時死んだ鳥ではないだろう?

捕まえるとしたらこの短期間なんだ。

この都市周辺でしかありえない。

だが、あんな鳥はここら辺には居ないはずだ。」


おっと、いきなり聞いてきたな。

クラウドは一体どう言い訳するのか...


「あぁ、それはそうですよ。

ここで捕まえたのでは無いのですから。

この子はサファイアと同じ巣の卵から生まれた子なんです。

だから、姿も似てるんですよ。

でも、この子は中々言うことを聞いてくれなくて、あの時はこの宿に置いて行ってたんです。」


「...ほぅ、卵から孵したのか。

鳥の場合刷り込みがあるから懐きそうなものなのにな。」


「えぇ、まぁ普通の動物ではなく魔物ですから。

僕が弱いから舐められてるのかもしれません。」


「...まぁいい。

ここに来たのは領主の話が終わったからなんだ。

あのワイバーンが再度登場するのかそこが分からない。

何らかの影響でたまたま居ただけなのか、それともまたワイバーンが出てくるのか...

そこの所は長期に渡って調査をしなければいけない。

簡単に纏めるとそんな話だった。

あぁ、俺達をそんなに縛る事はしないから安心していいぞ。

それで、報酬がこれな。」


ジャラリと床に袋を置く。


「これで金貨50枚ある。

本当はもっと報酬を釣り上げようとしたんだが、さっき言った見たいに分からない事だらけだからな。

これが限界なんだと。」


そう言って袋をクラウドの方へ持ってくる。


「...ほれ、受け取らんのか?

これがクラウドの分だぞ?

ちゃんと言ったとおり半分にしたからな。」


しかし、クラウドは中々受け取らない。

金貨50枚って、どれくらいの価値があるのだろう?

ここの宿代が1日3食付きで銀貨1枚。

銀貨何枚で金貨になるんだっけ?

銅貨100枚で銀貨1枚になるんだから、それと同じとすると金貨50枚は銀貨5000枚?

高いとクラウドが言っていたこの宿でも、5000日泊まれるということか...

ずっとここで泊まってるとして、13年以上は何もせずに過ごせるってことか。

それって大金じゃないか!?

え、それで更に上げようとしてたの?

それは流石にぼったくり...


「...あのギルベルトさん、僕、半分って言いましたよね?

多すぎませんか?

まだワイバーンの素材だって売って無いのに...」


「いや?

ちゃんと半分だぞ。

まぁ急にそれなりの金額が手に入ったら戸惑うのも分かる。

俺も昔はそうだった。

手元に置いておくのが心配なら、ギルドに預けるのはどうだ?」


「ギルドに預ける...ですか?」


「そうだ。

お金なんて常に嵩張るし、量があれば邪魔だろう?

だからギルドがお金を預かってくれる制度があるんだ。」


「そんなのがあるんですか、知りませんでした。」


「まぁ少し手数料を取られるが、誰かに取られる心配もなし、邪魔になることもなしでいいぞ。

それに預けたところでしかお金がおろせないなんてこともないからな。」


「それは便利ですね。

僕も利用してみようかな。」


「おう、使ってみろ。

それで話は変わるんだがクラウドはこれからどうするんだ?」


「そうですね。

少ししたら違う町に行こうと思います。」


「...そうか。

ここから1番近いのだと北北西にあるスレンス村か?」


「そうですね。

取り敢えずはそこに行って、次にルラン都市に行こうと思います。」


ギルベルトは少し考え込むような顔をして、


「ふむ...

では、これから言うことを良く覚えて、頭を使えよ?」


「はい。」


「スレンス村は北にあるからすごく寒くなっている。

グリールを持っていくことを忘れないようにすることだな。

西には森が広がっている。

ここには氷系の魔物が多く居るんだ。

ノワームという毛むくじゃらの魔物がいるんだが、こいつが厄介でな。

とにかく剣が通らない。

しかも、炎系の魔法でないと、ダメージが余り与えられないんだ。

体を使った突進をしてくるから上手いこと避けるように...

ラオイスという魔物も危険だ。

人間を見れば直ぐに襲い掛かってくる。

原生の森、西にある森の名前なんだがその森の奥にしか居ないから余り遭遇はしないと思うが...

ろ...ろ道気をつけて冒険しろよ。」


「分かりました。

忠告に気をつけて行きますね。」


「あぁ、俺が言ったことよく覚えて頭を使えよ?」


そう言って立ち上がり、扉の方へ行く。

もう要件は終わって帰るのだろうか?

扉を手に掛け開けたところで


「...なぁ......」


ギルベルトは此方を振り向きすごく心配した顔をしていた。

どうしたのだろう?


「どうしました?」


「...いや、やっぱり何でもない。」


そう言って踵を返し、部屋から出ていった。

何かギルベルトの様子が最後の方、変だったが本当にどうしたのか...

何か言いたいことがあったような顔をしていたと思うのに...




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