80話目
クラウドは腕輪を外し、サファイアとクプレは帰還している。
リーシアはクラウドの雰囲気が変わったことに少し驚いている。
その様子をチラリと見ただけに留め、再度召喚魔法を発動した。
「我、汝を呼び出し者。
我の呼び掛けに答え姿を現せ、召喚。」
魔法陣が描かれていく。
サファイアの時よりも大きいな。
そして、よりいっそう輝いたあとに現れたのは......
...傷だらけの象だった。
象自身も限界だったのか立っている事が出来ず突っ伏した。
「...えっ?
...と、取り敢えず傷を直さないと!」
クラウドがワタワタしながら象に近づいて行く。
俺もクラウドについて行く。
クラウドは急いで回復魔法を使い、象の傷を直していく。
傷は切り傷の様なものが1番新しそうだが、他にも沢山の傷がある。
何かで叩かれたような痕。
縄で縛られてたのかそれが擦れたような痕。
引っ掻き傷や噛まれたような痕。
火で焼かれたような痕。
それ等が身体中に出来ている。
余程酷い環境に居たのだろう。
。。。。。。。。。。。。。。。
[]
種族:ゴーガファント(幼)
Lv2/85 状態:疲労、貧血、裂傷、気絶
HP 24(710) MP 42(53)
力 51(205)
防御 74(149)
魔力 12(25)
俊敏 28(113)
ランクB-
[通常スキル]
硬化Lv1 体当たりLv1
踏み潰しLv1 気配消去Lv1
[特殊スキル]
飢餓耐性Lv1 打撃耐性Lv1
火耐性Lv1 雷耐性Lv1
斬撃耐性Lv1
。。。。。。。。。。。。。。。
『ゴーガファント:長い鼻と金色の牙を持つ象の魔物。
性格は非常に温厚で、此方が手を出さない限り襲ってこないと言う魔物の中では珍しい部類。
貴族等の富豪が金色の牙を求め、乱獲されていき、年々数を減らしていっている。』
この象これでまだ子供だったんだな。
体高が2mありそうなんだが......
それと、様々な状態でステータスがダダ下がりしてるが、元のステータスが低レベルの割に高い。
...まぁ、ランクがB-だしな。
はぁ.........
俺が落ち込んでいると、背中の上を誰かが登っていく。
サファイアかな?
クラウドが呼んだんだろうか?
こいつも強くなったよなー。
...そう言えばクプレはまだ進化してないな。
でも、もうそろそろ進化をするだろう。
そうしたら、俺が最弱か。
サファイアが死んだ時、俺にもっと力があればと思ったが、俺には全然力がない。
皆を守りたいとか何回も思っていたが結局のところ守れていない。
今のままでは何もかもが足りない。
このままではダメだと分かっているが、結局の所俺はどうしたらいいんだ。
今以上にがむしゃらに魔物を倒して経験値を得、進化を重ねる?
それも1つの手かもしれない...
そもそも俺はランクというものに縛られすぎているのだろうか...
確かに、高ランクの奴らは強い。
でも、絶対に手が届かないということは無かった。
ワイバーンの攻撃だってかわそうと思えばかわせられていた。
2段階も上のランクであるのに...
速さはよく似たものだったしな。
という事は重要なのはステータスとスキル?
ランクは目安なだけでそこまで重要視しなくてもいいのではないだろうか?
『...おーい。
考え事はいいんだが、そろそろ移動するぞ?』
ふと、そのような声が聞こえた。
俺の考えは一旦中断させる。
『もう治療は終わったのか?』
『いや、終わってはいないがこれ以上続けると主人が倒れる。』
クラウドの方を見れば顔は蒼白で、肩で息をしている。
また無茶をしようとしたみたいだ。
クプレがクラウドを止めている。
象の傷は全体的に少し薄くなっているが、体力は回復していないのだろう目を閉じたままだ。
そう言えば魔法陣が消えている。
という事は契約は終わったのだろうか?
『クラウド大丈夫か?』
『...あぁ、ブラン。
僕は大丈夫だよ。
でも、この子の傷を全然直してあげれてない。』
『元々の傷の量が酷かったからな。
クラウドが気に病む事ない。
...それで、魔法陣が消えているが契約できたのか?』
クラウドは少し悲しそうな顔をして、
『ううん、この子の意識がないから契約はできてないんだ。
でも、このままというのも出来ないから、仮契約をしたんだ。』
仮契約?
『仮契約って言うのは、極たまにこの子のような状態で呼び出されて、意識がないから本契約までの期間を伸ばすものだよ。』
ん?
という事は契約には時間制限がある?
『契約には時間制限があるのか?』
『うん、そうだよ。
正確な時間は分からないけど2時間くらいじゃないかなー?』
ふむ、なるほど。
『それじゃ、皆宿に帰ろっか。
疲れてるだろうに付き合わせてごめんね。』
そうして、象を帰還させ宿の方へ歩いて帰った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それから2日たった。
昨日は疲労を回復するため皆でのんびりとして過ごした。
宿でゴロゴロしていたり、クラウドは図書館に行って本を読んだりしていた。
そうそう、俺はついにクラウドに字を教えて欲しいと言った。
クラウドは最初とても驚いていたけど、快く承諾してくれた。
サファイアに魔物が人の字を覚えたところでどうするんだ、と呆れられたが...
そして今日クラウドが図書館から絵本を借りてきた。
どうやらこれで勉強するらしい。
「ブラン、まずは僕が読み聞かせてあげるから少しずつ読めるようになろうね。」
そう言って、絵本を開き俺に見えるように置いてくれた。
そうして、クラウドの読み聞かせが始まる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まだ誰居なかった星に、神様が来ました。
神様はこの星に何も無い事を悲しみ、様々なものを作りました。
海、陸、空、植物、魚、昆虫、動物、魔物...
賑やかになり、神様は大変喜びました。
けれど、何か物足りません。
そこで神様は自分の姿に似ている普人族を作りました。
その普人族に様々な特徴を付けていきました。
獣のように力が強く俊敏な獣人族。
背が大きく力の強い巨人族。
逆に小さく器用な小人族。
魔法の使える森人族。
水の中を自在に泳げる魚人族。
魔物の中で最強な竜に似た姿をしている竜人族。
7つの種族を作り、大変満足しました。
しかし、1つ気がかりなことがあります。
普人族は何の特徴もありません。
それでは可哀想だと神様は知恵を授けました。
知恵を貰った普人族は他の種族を纏め、国を作っていきました。
順調に進んでいた国づくりはある時突然終わりました。
他の種族が指示に従わなくなったのです。
それどころか...普人族を...襲うようになりました。
普人族は他の種族よりも数が多い為、何とか持ちこたえましたが沢山の犠牲が出ました。
他種族も少なくない犠牲を払い、普人族とは離れ、別々に村を作りました。
...他種族には...知恵がありません。
人間が気をつけて...管理を...して行かなければ...
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
クラウドは少し震えながら本を閉じた。
そして目を瞑り、大きく息を吐いた。
そして目を開きこちらを見て、申し訳なさそうな顔をして、
「ごめんね、ブラン 。
ブランの字の勉強だったのに......」
『いや、俺は気にしてない。
......それに少しは勉強できた。
クラウドには申し訳ないんだが、他の絵本でも読み聞かせしてくれないか?
クラウドの読み聞かせは分かりやすかったし...』
「そう、かな?
じゃー、今スグ違う本を借りてくるよ!」
そう言って、今読んだ絵本を持って宿を出ていった。
...さっきの絵本は人族寄りの話なんだろうな。
最後の2文なんて、絵本に書いちゃダメだろ。
絵本とは小さい子が読むものであるのに、小さい子がそんなことを学んだら他種族を差別するのは当たり前になってしまう...
クラウドも最後の方怒ってたし、絵本の内容は全てが正しいわけではなさそうだ。
神様は1人のように書かれているが、本当は2人っぽいしな。
まぁ、あの神様が嘘ついていたら分からんが...
けど、種族が7種というのは新しい収穫だな。
巨人族、小人族、魚人族、竜人族は知らなかった。
そこで、ドンドンと扉を叩く音が部屋に響いた。
クラウドが戻ってくるには早すぎるし、誰だろうか?
ブックマーク、評価ありがとうございます。
次から新章です。