72話目
俺はクラウドの横で伏せて、クラウドがもたれ掛かりやすいようにしたまま休んでいる。
リーシアも一緒になってもたれて、ウツラウツラしてる。
「どうだ?
そろそろ大丈夫か?」
「あっはい!
もう大丈夫です。」
クラウドが勢いよく立ち上がる。
「きゃっ!!」
その拍子にリーシアの体制が崩れた。
「あっ......ごめんね?」
「むー...」
リーシアがむくれている。
「ごめんよ。
リーシアちゃん。」
「......ァがいい。」
少し俯き加減に何かを言った。
「えっ?
ごめん、なんて言ったの?」
リーシアは顔を上げ
「リーシアって呼んで!」
「えっ.........うん。
...え?」
「リーシアって呼んでくれなきゃ許したげない。」
プイとリーシアがそっぽを向く。
クラウドはあっちを見たりこっちを見たりとオロオロしている。
ギルベルトはその光景を見てニヤニヤしながら
「良いじゃないか。
呼び捨てで呼んであげれば...
普通に名前を呼ぶだけだろう?
何照れてるんだ?」
更にニヤニヤを深めてそう言う。
「いや、照れてるわけじゃ......」
「じゃー、大丈夫だろう?」
「...え......でも.........
うーん...リ、リーシア?」
「うん!
なーに?」
リーシアがにっこりと笑った。
ギルベルトはまだニヤニヤしている。
......後ろからどついておくか。
「うおっ!?」
結構強めに叩いたのだが、前に1本踏み出す程度に留まった。
不意打ちだと言うのに、やはりAランク冒険者だから強いな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「よし!
休憩も終わったことだし地下9階にいくか!」
ということで、みんなで階段を降り地下9階にたどり着いた。
道は前方に真っ直ぐの道があるだけである。
10分ほど歩いたが、曲がり道が一つもない。
上の階は全て曲がり道や分かれ道があったのに......
更に20分ほど歩いた。
相変わらず道は真っ直ぐだ。
「....!
おい!
これを見てみろ。」
ギルベルトがなにか見つけたようだ。
近づいてみると、壁に鋭い引っ掻き傷のようなものが2本走っている。
「...うーむ、奥から引っ掻いたようだな。
今まで出てきたヤツらではこのような傷は付けられないだろう。
何か新しい種がいるのかもしれないな。
皆、気をつけて行くぞ。」
進んでいくごとに傷が増え、坑道の幅が広くなってきている。
この先に何か居るのだろうか?
ギルベルトが手で静止するような合図を送ってきた。
ついに何か出たか?
だが、俺の気配察知には引っかかっていない。
ギルベルトがこちらに近づき、
「ここからは道なんてものじゃないくらいに広がっている。
横から敵が来て、不意を打たれないように気をつけてくれ。」
「分かりました。」
なるほど、ここから先は広がっているのか。
更に気配察知の範囲を広げておこう。
30mくらいでいいか?
まぁ、そこまでは暗くて見えないんだけどな。
先に敵がいるって分かっていれば身構えることができるしな。
ギルベルトの言っていた広い空間に入ってみる。
......取り敢えず広さは大体、縦横100mずつくらいあるのではないだろうか?
天井まではそこまで高くはなく、建物5階ぐらいの高さではないだろうか?
さて、1つここで疑問に思うだろう。
先程気配察知30mで暗くて見えないと言っていたのに、何故この広間の大きさが分かったのか...
理由は簡単、ここは壁が光っているのである。
明るくて何も障害物がなければ見えるよな。
しかし、なぜここの壁は光ってるんだ?
壁をよくよく見てみれば、小さい欠片が光っている。
なんだこれ?
『輝石:魔力が透明な石に不完全に入り込んだもの。
不完全であるため、魔力が漏れて光っているように見える。
更に石にも負担がかかり、無数にヒビが入っている為白く見え、脆い。
魔力が少し高い所で多く見られるが特に使い道はない。*』
「ブラン何見てるの?
......あぁ、この光ってる壁が気になるんだね?
これはね輝石っていう小さな白い石が光ってるんだよ。
こんな小さな欠片でこんなに光ってるから、明かりにできないかって多くの人が研究してるらしいよ?」
石を鑑定しているとクラウドがそう教えてくれた。
「だが、失敗続きらしいぞ?」
ギルベルトの方を向く。
「この鉱山でも輝石が出るようになって、研究やここから更に大きな石が出ないかし出そうとした矢先に魔物が出たらしいがな。
ここの領主が俺に依頼する時怒り気味にそう言ってたぞ。
折角自分達が1番に成果を出せるかもしれないのにって......」
「失敗続きなんですか?」
「あぁ、光っててもやはりこれでは明かりに使うにはちと厳しいだろう?
だから、光量を増やそうとくっつけてみたり、溶かして1つにしてみたりしたらしいぞ?
だが、一番の問題はこの石とんでもなく脆いからな。」
そう言って1粒輝石を取って指で挟み、力を入れた。
カシャンッ
粉々に砕けた輝石がキラキラ輝きながら地面に落ちた。
「綺麗...」
リーシアが目を輝かせている。
「まぁ、取り敢えず領主様は多くの投資をこの輝石の研究にしたらしいからな。
俺たちはさっさと魔物が出てき出した原因を報告せにゃならん。」
さっきから思ってたんだが......
この石鑑定では使い道がないって書いてあったけど、大丈夫なのだろうか?
領主は多くのお金を投資したっぽいけど...
今までがないだけで、今後はあるよな?
研究の結果が実れば鑑定の結果も変わるかもしれないし...
そう言えば鑑定の結果何か変だったような?