68話目
「さっきの茨いいな。
1人だと反撃を気にしなきゃいけないから、全力で断たっ切れないが、さっきの見たいに動きが鈍るから安心して重い一撃を入れられる。」
ギルベルトがこちらに戻ってきつつそう言った。
「お役にたてたのなら良かったです。
まぁ、僕がしたのではなくクプレにお願いしてやって貰ったんですが......」
そう言いつつクプレを撫でる。
「...そうか。
だが、テイムに成功しているということは、それはクラウド自身の力でもある。
次もよろしく頼む。」
「はい!
クプレ頑張ろうね。」
......うーむ、これでは俺にも攻撃させてくれとは言いにくい。
今の時点で最速かつ最適であるのに無駄な蛇足はいらないだろう。
これで俺にもやらせてくれというのは、空気の読めないやつと思われてしまう。
仕方がないから、アンフィスバエナは諦めるか。
もう一種類のクモの魔物に期待だな。
どうかギルベルトに一撃でやられませんように......
俺にも活躍の場所をもたらしてくれますように......
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その後着々と進み、魔物にもあまり遭遇しなかった。
遭遇していても2回ほどで、両方アンフィスバエナが1匹づつであった。
そのため、あっさりとギルベルトが始末をした。
俺はもう魔物を倒そうと思うのは諦めた。
アンフィスバエナは一撃だし、クモの魔物は出てこないし......
それによく考えてみれば、クモの魔物がそこまで体力が多いとは思えない。
アンフィスバエナは体力の多い魔物っぽいのにそれが一撃。
それよりも体力が低いであろうクモの魔物が一撃でないはずがない。
ということで、俺は専ら索敵だけをしている。
ギルベルトは同ランクの中では、索敵をするのは苦手の方であるらしい。
だから、このパーティーの中で1番索敵のできるのは俺である。
.........いいんだ。
これも役に立ってはいるし......
ちょっと前にクラウドに言ったことがブーメランとなって帰ってくるとは思わなかった。
やっぱり、戦闘をしていないと役に立っている実感が薄い。
パーティーメンバーは戦闘をし命の危険に合っているというのに、自分はのんびりと安全にいるというのはどうも居心地が悪い。
「おっ!」
先頭を歩いていたギルベルトが声を上げた。
「どうしたんですか?」
「あぁ、この先に下に降りる階段が見えたんだ。」
「ということは次は地下6階ですね。」
「そうだが、今日は階段を確認したら一旦帰ろう。」
「どうしてですか?」
クラウドは役に立つことが出来ていると感じてから、意欲的になっている。
......いいなぁー。
「これから地下6階を探索し出すと、今日中に都市に帰ることが出来なくなってしまうだろう。
それにこの地下5階は運が良かったのか、結構な最短距離で来たっぽいからな。
他の道も見つつ帰りたいんだよ。
様々な道を知っておけば、何かと役に立つことが多いからな。」
「なるほど。
そうなんですね。」
「あぁ、だからここで引き返すぞ。
地図を書くのを任せっきりで悪いが.......」
「いえいえ、これぐらい何ともないですよ。」
クラウドはニコニコとそう答えている。
...俺せっかく進化してるのに、何も試せてないなぁ。
はははっ...............はぁーー.........
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いやー、今日はありがとうな。
やっぱり1人より断然楽だった。」
「いえいえ、僕らの方こそとても助かりました。
ずっとギルベルトさんに戦って貰ってたんでなんだか悪いです。
それに、素材も分けて貰っているし......」
「いやいや、クラウドも敵の妨害をしてくれていたし、地図も作っていてくれただろ?
とても楽だったよ。」
ギルベルトは倒した魔物の素材を半分づつにし、クラウドにくれたのだ。
最初クラウドは遠慮していたのだが、ギルベルトが押し切る感じで結局貰うことになった。
これで、宿代は大丈夫だな。
この前リーシアの服やら護身用のナイフを買って危うかったからな。
良かった良かった。
「......それでだな。
出来ればでいいんだが、明後日また俺と坑道に潜ってくれないか?
それも今度は地下10階までだ。
非常に申し訳ないと思っている。
長いこと拘束することになると思う。
だが、今日の感じがとても楽しかったし、いい感じがしたんだ。
ダメだろうか?」
クラウドは暫し考える。
そしてサファイアに触れ、
『皆はどう思う?
ギルベルトさんが一緒に坑道に潜ろうと言ってくれてるんだけど?』
『私はクラウドの思うようにしていいと思うよ?』
クプレがすぐさま返事をする。
クプレは今日ずっとクラウドに褒められていた為、とてもご機嫌そうだ。
『俺はどっちでもいい。』
気だるげに、心底気にしてないようにサファイアがそう答えた。
おっと、俺も答えなくては!
『俺もクラウドが思った方でいいぞ。』
『そっかー......
じゃあ、明後日はギルベルトさんと一緒に坑道だね。』
そう言うとサファイアから手を離し、
「ギルベルトさん、どうぞよろしくお願いします。」
そう言ってお辞儀をした。
「...本当にいいのか?
地下10階までということは坑道で寝泊まりしなくてはいけないぞ?
それに人が集まってきていると言っても、最高でCランクの奴等しか潜ってないから、今最深まで潜っていると言われているのでも地下8階だぞ。
それより下はどうなっているのか分からない。
だから、身の危険があるかもしれないんだぞ?
それでもいいのか?」
「大丈夫です。
皆で力を合わせれば何とかなると思います。
それに、勝手に期待して悪いんですが、ギルベルトさんはAランクなんですよね?
今日だって凄く強いなと思いましたし、そんなギルベルトさんが負けるわけないです。」
「...おっと、これはハードルを上げられたな。」
ギルベルトは少し笑いながらそう言った。
「...よし、戦闘は俺に任せてくれ。
それでは明後日はよろしく頼む。」
ギルベルトが右手を差し出す。
「はい。
僕達もギルベルトさんのサポートを頑張ります。
明後日はこちらこそよろしくお願いします。」
それを握り返しながら、クラウドはそう言った。
......よし、明後日こそは役に立つぞ!