60話目
ニードルリザードはまだ頭を上下している。
......疲れないのだろうか。
ちょっと失礼して、鑑定。
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種族:ニードルリザード
Lv6/8 状態:健康
HP20 MP11
力13
防御7
魔力5
俊敏8
ランクF+
[通常スキル]
引っ掻くLv2 噛みつくLv2
体当たりLv2 針Lv3
[特殊スキル]
斬撃耐性Lv1 気配消去Lv1
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ふむふむ。
......ん?
名前がない?
まだつけられていないのだろうか?
『...あいつも大変そうだ』
サファイアが急にそんなことを言う。
あいつとはこのニードルリザードのことだろうか?
『あいつとはニードルリザードのことか?
何が大変なんだ?』
気になったので聞いてみる。
『あぁ、俺念話持ってるだろ?
そのせいか相手に伝えたいと思っていることは、何となく分かるんだよな。
それであいつはあの持ち主に一生懸命伝えようとしてるんだが、全然分かってくれないから怒ってるんだよ。
.........これがあいつにやれたらいいんだが......
まぁ、今は厄介なだけじゃないとは思えるようになってきたが......』
そうか、ニードルリザードは怒ってるのか...
そう言われても全然分からねぇ......
ただ頭を上下しているだけにしか見えん。
それと、サファイアの最後の2文。
微かにしか聞こえなかったが、その声音には憐れみと怒りとが感じられた。
憐れみは分かるが、何故に怒りなのだろうか?
......まぁ、取り合えずは
『ニードルリザードは何をあの少年に伝えたがってるんだ?』
『まず1つは名前をつけること。
2つ目は自分も戦えるから、もっと頼ってほしいこと。
3つ目は敵であるにも関わらず自分を救ってくれたから恩を返したいと...』
『そうなのか...
よし、クラウドに繋いでくれ。』
『何故そこで急に主に繋ぐんだ?』
『その事をクラウドに伝えて、あの少年に伝えてもらう。』
『そんなことをしたら、相手に怪しまれるだろう。
そんな細かなことまで、伝えられるはずがないんだから...』
『ん?どういうことだ?
......あ、クラウドと少年の話し合いが終わる!
とりあえずクラウドに繋いでくれ、頼む!
でないとあの主従が不憫だ。』
サファイアはため息を1つつき、クラウドに念話を繋いでくれた。
『クラウド、あのニードルリザードはまだ名前を貰えてないみたいなんだ。
それと、助けてもらったお礼に恩を返したくて、もっと頼って欲しくて、でも上手いことそれが伝わらなくて怒っているらしい。
その事をあの少年に伝えてくれないか?
でないと両方の思いがすれ違って悲しいことが起こるかもしれない。』
『分かったよ。
どうにか伝えてみるね。』
そう言うとクラウドは俺の頭をなで、少年と話しを再開した。
「あの、すいません。
ずっと自己紹介を言う機会を逃してました。
僕はクラウドって言います。
で、この狼がブラン、ブランの上にいるのがサファイア、
僕の左斜め後ろにいるのがクプレです。」
「あぁ、すまん。
俺も忘れていた。
俺はメイルって言うんだ。
で、このニードルリザードは......すまん。
まだ名前つけてないんだった。」
「名前まだないんですか?」
「あぁ。
もう1年一緒にいるのに今の今まで名前つけるの忘れてるって言うことを忘れてた。
何かとバタバタしていたからな。
......ごめんな。」
少年がニードルリザードに謝ると、ニードルリザードは頭を上下しなくなった。
「おっ、頭を振らなくなったな。」
「じゃー、覚えている今のうちにつけましょう。
名前をつけてあげた方がその子も喜ぶと思いますよ?」
「そうだな。
......ドルとか?
...うおっ!?
また頭、というかほぼ上半身を振って凄いことになってるぞ!?」
『全力でそんな名前は嫌だ、と言ってるな。』
あぁ、やっぱり怒ってるのね...
「えとえと、......うーん.........
じゃーヴィオラとかはどうだ?
そういう名前の植物があるんだ。
たしか、幸運を呼び寄せるみたいな意味があったと思うんだが...」
あっ、動きが止まった。
鑑定。
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ヴィオラ
種族:ニードルリザード
Lv6/8 状態:健康
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ふむ、ヴィオラという名前は気に入ったようだ。
「止まったってことは、名前はヴィオラで良かったのか?
というか、あの頭を上下しているのって、機嫌悪いときだったりするのか?」
「多分良かったんじゃないですか?
それと、魔物って言われているほど感情が無いということはないようです。
人一倍感情があるようです。
もしかしたら、ヴィオラも恩を感じてるかもしれませんよ?」
「......あぁ、そうかもしれない。
俺は命令って嫌だったから使役の方にしてるんだが、敵と戦うときこいつ......ヴィオラは必ず俺の前に出るんだ。
危ないし、俺は剣士だから前に出なくていいと言ってるのに...
それに、俺が前に出て怪我でもしようものならさっきみたいに頭を上下しているしな。
あの行動が怒っているものだというのが分かって、色々となっとくがいくよ。
俺を守ろうとしているのに俺がかってに飛び出して、それなのに怪我をしているから怒ってるんだな。」
ふむふむ。
ヴィオラはどうにか役に立とうと頑張っているんだな。
.......いいやつだなぁ。
ヴィオラが此方を見た。
クプレ、俺、サファイアと順に見て視線が止まる。
「いや、色々と話が聞けてよかった。
助けてもらったことも含めてありがとう。
そろそろ、俺らは帰るわ」
そういってメイルは歩き出した。それにつられてヴィオラも歩き出すが、一度此方に振り返り
『ありがとう。
あなたのお陰で彼に名前を貰うことが出来たわ。
それじゃあ、またどこかで...』
顔を前に戻すともう振り返ることはなく、見えなくなった。
......
............ヴィオラって、女の子だったのね。
見た目とか、行動で男かと思ってたよ。
まぁ、名前は女の子っぽいけどね。
だから、ドルとかは嫌だったのか......
......
............
...............というか念話!
念話繋いだのかよ!!
あんなに昔は嫌がってたのに!
『人が嫌なだけで魔物で必要なときは繋ぐぞ』
さよですか!!!
てか、思ってることを読むな!




