58話目
ギルベルトに導かれるままについて歩いている。
「よし、着いたぞ。」
そう、ギルベルトが言うので建物を見ると緑の蔦で覆われた物があった。
覆われていると言っても、乱雑にただ這っているだけなのではなく、装飾されたかのように綺麗に覆われている。
看板もあるが、そこには縁の装飾として蔦が這っている。
あの看板なんて書いてあるんだろうか?
「精霊の泉と言う。
少し値段は高いかもしれないが、朝、昼、夜とご飯が出るぞ。
それにここのは旨い。
昼がいらない場合は最初に言っておけば、その分安くなる。
どうするんだ?」
「少し高いとは、どれくらいですか?」
「んー、そうだな。
1泊、銀貨1枚というところだな。」
「......結構するんですね...」
1泊銀貨1枚は高いな。
前泊まっていた宿で1泊銅貨10枚だったからな。
値段が10倍はきついだろう。
まぁ、きっちり10倍ではないがな。
前の宿はご飯の料金は別だったし...
「うーん......
どうしよ。
ずっとこの都市にいるわけでもないから、短期間だけここで泊まろうかな。
今から他の宿を探しても、空いてる保証はないし......
ブラン達もそれでいいかな?」
俺は頷いておく。
いざとなれば、俺がまた一人で魔物を狩りに行って稼ぐかな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
取り合えず宿では10日泊まることになった。
料金は銀貨8枚。
朝と昼のご飯は作ってもらわないことにすれば、1泊銅貨80枚になったので、朝と昼はどこかの露店等で済ませることになった。
その方が安いからね。
クプレはやはり部屋に入れることは無理だった。
そして、馬小屋の1スペースを借りることになった。
本当はこれに料金が発生するのだが、ギルベルトの紹介と言うことでタダになった。
そして、場所を借りたことで部屋に連れ込むことができなくなった。
居なくなってたらおかしいからな。
それなら馬小屋を借りなければいいのだが、ギルベルトにテイムした魔物だといっているため、借りなければ宿に泊まっている間クプレをどうするのかと言う謎が発生する。
仕方がないのでクプレを説得し、夜だけはクプレに我慢してもらうこととなった。
そのかわり朝になれば必ず会いに来、出掛けるのならば必ず連れていくと言う条件がついているが......
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今は鉱山の中にいる。
昨日少し早めに就寝し、朝ギルドで依頼を受けた。
お金を稼がないと宿代で手持ちが心もとないからな。
依頼の内容は鉱山内の魔物アシッドセンチピートを10体討伐である。
難易度はD、視界が悪いのと、坑道であるので道幅はあまりなく戦闘の行動に悪影響を与えるためである。
また、アシッドセンチピートは弱いが、防御が固く倒しづらいらしい。
昔鉱石を採掘していた為か道には所々灯りがあるが、薄暗い。
これで、敵は暗色ばかりと言うのだから見つけにくいだろう。
不意を突かれないようにしなければ...
この鉱山にはまだまだ鉱石を多く内包しているらしい。
しかし、現在はあまり採掘されていない。
理由は単純で、魔物が出るようになったから。
鉱山都市と言う名前でも分かるように特産物は鉱石である。
しかし、魔物のせいで採掘が困難になった。
その為ギルドの依頼表には鉱山の魔物討伐がところ狭しと貼られていた。
ここ1ヶ月そのような状態らしい。
そして、狩り尽くす勢いで討伐されていっているのにも関わらず、魔物の数が減っていかない。
また、誰も掘り進めていないはずであるのに道が伸びていたり、新しく部屋のようなものが出来ていたりするらしい。
この為冒険者の中の噂では鉱山がダンジョン化しているのではないか、と囁かれているらしい。
ダンジョンと言うものがどんなものなのかは、俺は知らない。
ここまでの情報はギルドに行ったとき、飲んだくれてる冒険者が話しているのを盗み聞きして獲たものである。
クラウドに全て話して、ダンジョンとは何か聞いてみたが、クラウドもあまり知らないらしい。
ただダンジョンには核となるものがあるか、居るかするらしい。
それを壊すか倒すかすればダンジョンの成長が止まり、安全な物になるのだとか...
それ以上詳しくは知らないので、また本を読んで調べてくれるそうだ。
ついでに言おう言おうと思っていた、文字を教えてもらうのを頼んだ結果、すぐに了承してくれた。
驚いてはいたけどね...
......おっと、とうとうお出ましになったようだ。
『クラウド、アシッドセンチピートがいたぞ。
道がカーブしているから見えないが、後6メートルで接触する。
こちらに向かってきてるぞ。』
『わかった。
じゃー、一旦後退して道が真っ直ぐのとこで戦おう。
クプレは動けないよう、蕀で拘束しちゃって。
僕とサファイアは魔法で攻撃するよ。
ブランは前衛でお願い。
アシッドセンチピートは固いらしいけど、甲殻の間は柔らかいらしいからそこを狙っていこう。』
そして、アシッドセンチピートが見えた。
すかさず鑑定。
。。。。。。。。。。。。。。。
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種族:アシッドセンチピート
Lv3/20 状態:健康
HP 66 MP 11
力 13
防御 42
魔力 5
俊敏 9
ランクE
[通常スキル]
噛みつくLv2 押し潰すLv1
酸Lv3
[特殊スキル]
斬撃耐性Lv4 気配察知Lv2
気配消去Lv2
。。。。。。。。。。。。。。。
うーむ、確かに防御が高いな。
斬撃耐性も持ってることだし、これは中々ダメージが通らなさそうだぞ。
だが、倒せないことはない。
クプレがアシッドセンチピートの周りから蕀を生やし、締め上げていく。
「ギチギチギチ」
ダメージは食らってないようであるが、元々動きを阻害するためであるので大丈夫だ。
アシッドセンチピートは拘束から逃れようと暴れている。
「ストーンアロー」
クラウドが甲殻の間を狙って石の矢が飛んでいく。
「ギシャーッ!」
見事隙間に刺さったようだ。
俺も攻撃すべく、走り出す。
アシッドセンチピートは自身に何かが迫ってきているのを感知したのか、此方をみた。
頭を後方に少し反らす。
嫌な予感がしたので、横っ飛びに避ける。
瞬間ジュワッ!と地面が溶けた。
ツーンとした嫌な臭いも漂う。
これが酸と言う攻撃か。
壁を蹴りアシッドセンチピートの背に着地。
すかさず爪を甲殻の間に突き立てる。
アシッドセンチピートが此方を向き噛みつこうとしてくるが、
そこでストーンアローがまた刺さる。
サファイアが俺の背から降り、嘴を突き刺す。
「ギシャーッ!?」
アシッドセンチピートが今までで一番のたうち回り始めた。
俺とサファイアは何とか振り落とされまいと必死に堪える。
蕀の本数が増え、さらに押さえつける。
最後はビクビクっと痙攣し、地面に倒れた。
『経験値を48得ました。』
『知性Lv._により経験値を40得ました。』
んん?
経験値の値が違う?
なんで......あぁ、そうか。
テイムの隠し要素か。
知性Lv._には反映されないんだな。