47話目
クラウドを街に帰して、俺は宿から鞄を持ち出し元来た道を駆ける。
着いた時クラウドが何か言っていたが余り聞き取れなかった。
たまに、大変、優しいのに、と聞き取れたが何の事だろう?
クプレはクラウドと一緒に街をウロウロするようだ。
まぁ、まず最初に宿に許可をとるらしいが...
クプレをそのまま上に上げるのは難しいと思うがな。
流石にクプレが大きすぎる。
もし無理となったら一瞬帰ってもらって、クラウドが部屋に着いたらまた出すという風にするとクラウドが笑いながら言っていた。
それを聞いてデクはひきつった笑みを浮かべてたがな......
そして、何故かやっぱりサファイアが俺の背中に乗ったまま付いてきている。
宿のベットに降りていろと言ったのに......
もうMP少ないよね?
何も出来ないよね?
何でついてこようと思ったんだよ...
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まぁ、何はともあれ鞄を引っ提げ、森の中を走る走る。
気配察知のおかげで敵に遭遇する事もなく、順調に進んでいく。
先程あんなに倒していたのにまだまだ沢山居るみたいだ。
いったい全体何処からこんなに湧いて出たのかね。
さて、もうそろそろこの辺りのはず......
......
...
.あっ、あった!
小山が3つ。
これで間違いない。
慎重に掘り出していく。
小さいから土に紛れて、分かりにくいからね。
トスッ
ん?なんの音だ?
音のした方を向くとサファイアが嘴を小山に突き刺していた。
いつの間に降りたんだ。
何をしようとしているのか、様子を見てみる。
突き刺して出来た穴を顔を動かして大きくし、嘴を引き抜いた。
そしてその穴を覗き、もう一度嘴を突っ込む。
今度は直ぐに引き抜いた。
嘴の先を見ると、魔石がくわえられている。
手伝ってくれてるのか?
くわえたまま上を向き、嘴を閉じた。
ゴクッ
と音がしそうな、良い飲み込みっぷりだ。
......って、そうじゃない!!
あいつ魔石飲んだぞ!
せっかく、集めて持って帰ろうとしてるのに!
何で飲み込むんだよ。
それは食べ物じゃない!
あれか?
鳥には砂嚢の中に小石や砂を入れておいて、それを使って消化するって聞いたことがあるぞ。
鳥に歯はないから細かく出来ないため、そこで小さくするとか......
あと、石に付いてるミネラルだとかも吸収するとかしないとか......
でも、全ての鳥がするわけではないし、サファイアが飲み込んだのは小石じゃない!
小さいけど、大きいから!
ちょっとおかしいな。
魔石としたら小さいけど、サファイアが砂嚢の中で使うには大きいから!
大体において、そこら辺のもっと小さいので良いじゃないか。
何故わざわざ魔石なんだよ......
俺がじっと見ていたのに気付いたのか、サファイアが此方を向いた。
『なんだ?何か用事か?』
『用事って、いうもんじゃないけど、何で魔石を食べるんだよ...』
サファイアの悪いことをしたと欠片も思っていない声に、何か脱力した。
そりゃ、サファイアにとってはただの石なのかもしれないけど、これを持って帰ればお金になるんだが......
まぁ、まだ1個だし今釘を差しておけばこれ以上食べられることはないだろう。
そして、サファイアに注意をするより先に
『ん?食べたらダメなのか?
いくらお前が足止めをしたからと言って全部持っていくのはずるいぞ。
確かに俺は燃やしただけだが、それでも3分の1は欲しいな。
魔石の欠片とは言え、今の俺にとってはそれなりの糧になる。』
と、サファイアが言ってきた。
......
...はい?
糧?
と言うことはサファイアは魔石を全部食べるつもりなのか?
まぁ、サファイアに手伝ってもらって倒したんだ。
分け前は半々でもいいけど......
これ食べるのか?
驚愕して固まっていると
『何故固まっている?
...あー、そうかこんなものが糧になると言うのに驚いているのか』
...そ、そうそう!
こんな石を食べて糧になるわけが......
『俺はまだ幼鳥だからな、こんなランクのものでも十分なんだ。
もうあと少しで大人に成れそうな感じがしてるんだよ。
3分の1がダメなら4分の1でもいいから。』
そっちの意味じゃない......
『......いや、サファイアの火で助けられてるからな、半々ずつでもいいんだが......』
サファイアは半々ずつと聞いて驚いていたが、だが...で、詰まったのを聞いて真面目な顔をした。
『なんだ?何か交換条件があるのか?
俺で出来ることならいいが、俺はあまり何も出来ないぞ。』
『いや、別にそんなのはない。
サファイアが成長できるのなら、その分あげてもいい。
だが、こんな魔石を食べて成長できるのか?』
『だから、こんなランクでも俺にとっては......』
『いや、そう言う意味じゃない。
ランクはどうでもいいんだ。
魔石を食べると成長できるのか?
と言う意味だ。』
それを聞いてサファイアは首をかしげている。
魔物には一般的なことなのだろうか?
考え込んでいるとサファイアが嘴を小山に突き刺し、魔石を取り出した。
そして此方の近くに置き、
『物は試しで食べて見ろよ。
魔物は皆食べてるから、食べるもんだと思ってた。
人間も食べてるだろ?』
『いや、人間は食べてないと思うぞ。』
サファイアはそれを聞いて凄く驚いていた。
そこから目を外し、足元に置かれた魔石を見る。
魔石......石を食べるのか......
狼になってから生肉や、カエルも食べた。
もう今さらかな...
サファイアは食べられると言ってるし、大丈夫なのだろう。
小さな石をくわえて拾い上げ、上を向いて飲み込む。
『魔石を吸収しました。』
『経験値を2得ました。』
『知性Lv_により経験値を2得ました。』
うおっ、何時もの声が聞こえた。
魔石って、食べると経験値を得られるのか......
なるほど。
『どうだ?
実感できたか?』
『あぁ、言ってることは分かったよ。
じゃー、俺は掘っていくからサファイアは食べてていいぞ。』
『本当にいいのか?』
『あぁ、だが半分は残しておいてくれよ。
鞄に入れて持って帰るからな。』
そう言い、小山を掘っていく。
魔石を横に避けていくとサファイアがそこに移動し、嬉々として魔石を飲み込んでいく。
黙々と掘り続けていると、ツンツンとつつかれた。
どうしたのだろうか?
まだ半分にはならない筈だが......
『何かもう進化できるみたいだ。』
おっ、意外と早かったな。
さて、どうなるのやら。
まぁ大人になるのだから、大きくなるくらいな気がするがな。