42話目
「おい!もっと火魔法が使える奴はいないのか!!!」
依頼板と依頼を受付するカウンターの間でそう叫んでいる人がいる。
他にも数人で固まり何かを話し合っていたり、カウンターの奥もあっち行ったりこっち行ったりと忙しそうだ。
そうこう見ていると男が1人此方に走ってきた。
何か用事だろうか?
「おい!退いてくれ!こんなに忙しい時にそんな入り口で突っ立てんじゃねー!!
ほらほら、退いた退いた!」
そう言いながらクラウドを押し退け何処かへと走っていった。
む......確かに入り口で立っていると邪魔になるな。
クラウドを伴って隅の方に行く。
「......ねぇー、ブランこれ、何が起こってると思う?」
いや、それは俺が聞きたいよ。
だがこれほど慌てているということは、何か大変なことが起こるのだろう。
最近のことを考えると、森に突如として現れたこの森ではあり得ない高いランクの魔物が、この街に迫っているのだろうか?
考えていると此方に男の人が歩いてきている。
入り口からは離れているし、俺達以外回りに人が居ないからクラウドに用があるのだろうか?
「おい、お前さっき来たばかりだよな!」
近づいてきて、いきなりそんなことを言う男性。
よく見れば先ほど叫んでいた人であることがわかった。
「...えっ、ええ。そうですが、何か「お前、火魔法は使えるか!!」
さらに近づき、叫んでいる。
そんなに大声でなくても、それだけ近づけば聞こえるって.........
クラウドは男性の迫力に圧されて少し後ずさっている。
返事に詰まっていると
「おい!どうなんだ!!使えるのか!使えないのか!!」
どんどん顔を近づけてくる。
クラウドは後ろに反るような格好になっていっている。
「......ぁあ、はい......使えます......」
「そうか!なら、2階の会議室で待っていろ!」
それだけ言うと男性は何処かに去っていった。
なんで火魔法が使えるやつを集めているのかとか、何も説明ないのね......
それにしても、このギルド2階なんかあったのか。
しかしこのギルド内に階段など見たことがないんだが、どうやって行くんだ?
「......おもわず、何も聞かずに答えちゃった......
大丈夫かなぁ......」
クラウドがため息をついている。
「まぁ、取り合えず行ってみる?
ギルド内で慌てている理由が分かるかもしれないし、2階の会議室?だっけ?
そこに行けば説明してくれるだろうしね......多分。」
『行くのはいいんだが、2階にはどうやって行くんだ?
階段が見当たらないんだが?』
『2階はギルドの奥の階段から行けるよ。
2階を使うにはそれなりにランクが高い人の話し合いや、今回みたいに大勢に徴集をかけたとき等だけなんだよ。
だから、受付の人に言って通してもらわないと2階には行けないようになってるんだ。』
ほー、2階では重要なことを話し合う場所になっているのか。
それに奥に階段があるんじゃ、見当たらないわけだ。
受付の所まで行き、火魔法が使え、2階の会議室に行けと言われた旨をクラウドが伝えた。
そして、受付の人に連れられギルドの奥に入っていく。
辺りには本棚のような物が沢山あり書類が入れられている。
何が書いてあるんだろうか?
キョロキョロしつつ進み、階段を登って右側にドアがある。
「ここが収集をかけていた会議室になります。
中の椅子に腰掛けお待ちください。」
そう言って受付の人は下に降りていった。
クラウドは少し躊躇いつつも扉を開け、中に入っていく。
俺はその後ろについて行く。
部屋の中を見ると、15人ほど人がいた。
1人でいるやつや、2~4人でグループになっているやつもいる。
皆がパッとこちらを見たが、収集をしていた人でないと分かると皆顔を戻した。
会議室と聞いていたが特に何もなく、机と椅子が沢山あるだけだった。
クラウドが近場にある椅子に腰掛けたので、俺もそのすぐ側で伏せて待った。
それから暫くして、やっと呼び掛けをしていた人が来た。
クラウドが来てから2人と3人のグループが追加できているから、この部屋に20人以上もいる。
それでもまだまだスペースがあるので、この会議室は大分広いんだなと思っていると
「よし、皆来てくれたな。
皆を収集した原因はほとんどの人が知っているだろうが、念のため説明しておく。
このミスルナの街に魔物の群れが近づいてきている。
姿は違うが、ここの森にいた魔物達だと思う。
そして、ここが一番の問題なんだが、倒しても倒せないというものだ。
切っても、潰しても、砕いても、何をしてももとの姿に戻り此方を襲ってくる」
「じゃー、どうやって倒すんですか!
僕はそんなに強い攻撃はまだ出来ません」
1人でいた魔法使いの装いをしている人がそう叫んだ。
確かに何をしても倒せないのなら、何故これだけの人に収集をかけたのか......
というか、これってまさかあの変な魔物のことじゃないか?
「1つだけ方法がある。
それが、燃やしてしまうことだ!
やつらは極端に火に弱い。
見た目もそうだがアンデット系統のようにな!
だから今回収集をかけたのは火魔法の使えるやつと、そいつといるパーティーだけとなっている。
ここまでで質問のあるやつはいるか?」
そう言って辺りを見回す男性。
うーん、性別で言ってると分かりにくいな。
あんまり他の人には鑑定かけたくなかったんだが、これは仕方ないか?
なんか個人情報を見てるみたいで悪い気がするが......
。。。。。。。。。。。。。。。
プルトリコ
種族:普人族
Lv18/50 状態:健康
HP89 MP10
力70
防御52
魔力5
俊敏38
[通常スキル]
二連撃Lv4 スラッシュLv2
カウンターLv1
。。。。。。。。。。。。。。。
何でどいつもこいつも強いんだよ......
俺が弱すぎるのか?
そうなのか?
......人を鑑定する度にこんなことを言ってる気がする。
俺が1人で頭を抱えている間も話はどんどん進んでいった。
「............よし、これで最後だ。
何か不満や、疑問はないか?
...無いようだな。
では、一時解散だ。」
そうプルトリコが言うと、パーティー内で話し合うもの、席を立ち出ていくものがいる。
「じゃー、僕達も準備しよっか。」
クラウドもそう言って席を立つ。
......うん、後半の話を全然聞いてなかったから、何をするのか全く分からん。