39話目
何かの悲鳴がどんどん近づいてくる。
多分人ではないかと思う。
先程の悲鳴が人のものだったしね。
気配察知を使って調べると3人が何かから逃げているようだ。
何から逃げているのかは、気配察知の範囲に入っていないので分からない。
入ってても1度見た魔物でないと分からないのだが......
まぁ、ここらの魔物は大体見ているから分かるような気がする。
見ていないのが他にもいるのなら話は別だが......
クラウドが腕輪を付け、一旦クプレを帰還させて少しすると茂みから3人の男が現れた。
剣と小さい盾を持つ者が2人、もう1人は杖を持っている。
「...はぁはぁ、......お、お前...この奥に行くのは、辞めておいた方が...いいぞ!」
「何とか撒いてきたみたいだが......あれはダメだ。あんなのが街に来たら.........」
剣を持つ2人が息を整えながらそう言う。
剣士は大丈夫そうだが、後ろの魔法使いが瀕死だぞ。
ここに来たとたん倒れこみそのままだ。
あいつ、大丈夫なのかな...
ピクリともしてないが.........
「あの、何があったんですか?」
剣士2人が落ち着くまで待ってから、クラウドが何があったのか詳細を聞いた。
「俺達は森の魔物が増えていると聞いて、一攫千金とまではいかないが魔物を狩り、その素材を売ってお金を稼ごうとしたんだが、魔物が多くいると聞いていたのに全然見あたらなくてな。
つい奥へと進んでしまったんだ。
奥へ奥へと進んでいくうちに、なんだか肉の腐敗したような臭いがし出してな。
その臭いのもとを探るのに変更したんだ。
新人が殺した魔物を処理せず放置しているのかと思ってな。
ここ数日魔石だけ抜かれた死体が多く見つけられてるって聞いてからなそれかと思ったってわけだ。
お前は違うよな?グールやゾンビになるからちゃんと埋めるか火で燃やすかしろよ?」
............はい、たぶんそれ俺のせいですね。
すいません。
死体は埋めるか燃やすかしないといけないのか......
めんどうだなぁ。
火魔法が使えたら楽でいいんだろうが、俺の場合埋めるしかない。
穴堀りのレベルを上げた方がいいのか?
だが、穴堀りかーー.........
「っと、話がずれたな。それで臭いのもとを探してたらベチャベチャと変な音までし出して...
そっと茂みから除いてみたら......
ドロドロとした何の生物か分からないやつが魔物の肉を食ってたんだよ。
もう、それを見た瞬間、逃げなければ!って思って脇目も降らずここまで走ってきたってわけだ。」
「......あんな魔物は今まで見たことがありません...」
...うぉっ!びっくりした。
ピクリともしてなかった魔法使いらしき人物が、急に起き上がり話に加わってきたぞ!?
「おー、リオ。もう大丈夫なのか?」
リオと呼ばれた魔法使いは1つ頷き、
「あれは、ゼリー種のようでいてゼリー種ではないようです。犬・鳥・兎の頭を持っていました。」
「リオ、そこまで見てたのかよ。俺なんざドロドロしてたっていう位しか分からなかったぜ。」
剣士がそう言いつつリオの背をしばいている。
リオは痛そうな顔をしている。
......剣士よ、そんなにしばいていると魔法使いが倒れるぞ。
今も噎せてるし.........
そして、その変な魔物のことを報告するために3人は街に帰るということなので、俺達も一緒に帰ることにした。
帰ることにしたと言うよりは、3人に帰らされていると言った方がいいかもしれない。
3人曰く、召喚士でその年齢で2体も呼び出せるのは凄いが、それにおごると危険だと。
あの見た魔物がいつここに来るか分からないから、取り敢えずは街に帰ろうと。
要約すればこんな感じのことを言っていた。
だからクプレの紹介はまた宿になるだろうなと思う。
まぁ、今は落ち着いているし大丈夫だとは思うけど......
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
門に着いた。
着いたとたん、俺達はデクに呼び止められた。
なにか用事だろうか?
3人とは直ぐにギルドに伝える必要があるため別れた。
3人が見えなくなり、誰もいなくなると
「すまん!取り逃がした。」
デクが頭を下げてきた!?
な、なんだ?
取り逃がしたって、何を?
何か捕まえることになっていただろうか?
「大丈夫ですよ。頭を上げてください。」
クラウドは何のことか分かっているらしく、デクに頭を上げるよう説得している。
クラウドの説得にしぶしぶデクは頭を上げた。
「でも、どのようになったのか話してくれますか?」
デクは1つ頷き
「俺達はあの後ここの門と反対にある門両方に検問をかけた。
そして、俺を含めてごく数人で街の巡回ついでにカスパルを探し回った。
被害も未遂で終わってるし、一個人だからそんなに人を使えなくてな......
取り敢えず屋敷に行ってみたんだが、使用人たちがいるばかりでカスパルは居なかった。
だが、色々と聴き込みをしカスパルが通っていた酒屋が分かってな。
そこに乗り込んでみたんだが、そこもカスパルは居なかった。
ただ、2週間前ぐらいに黒のローブを被ったやつと何か取引をしていたらしい。
そいつが奴隷の首輪をカスパルに売り付けたんじゃないかと思う。
で、黒のローブも追ってみたが、そいつもさっぱり見つからなかった。
それで完全に手詰まりになってしまったってわけだ。」
......カスパル...あ!あの3人組か!!
忘れてた......
そして、今後も門で街から出てないか確認していくそうだが、探して居なかったのならもう外に出てしまっているかもしれないな。
「さて、ちょっと聞きたいんだがさっきの3人組は何をギルドへ報告に行ったんだ?」
デクがそう聞いてきたので、クラウドが3人から聞いた話をそのままデクに伝える。
デクは話を聞くと少し考えるような仕草をし、
「色んな頭が有ったということは、キメラか?
だが、この森にそんな強い魔物が入って来るか?」
ブツブツ言った後、
「分かった。そちらも注意しておこう。また何かあれば言ってくれ。」
そうして、やっと街の中に入り宿で落ち着こうとしたところで
「ブラン達は先に宿に帰ってる?
僕はさっきのやつの情報をギルドで聞いてくるよ。
他にも見ている人がいるかもしれないし、最近森の様子が変になってばかりだからそれと、繋がりがあるかもしれないし。」
ふむ、なるほど。
情報は大事だものな。
『それなら俺も付いていく』
『いや、ブラン達は来ない方がいいかも。
多分魔物が多くなったと言われてたときよりギルドの中が慌ててると思うんだ。
そんな所に行くと揉みくちゃにされちゃうよ?』
うーむ、揉みくちゃにされるのは嫌だが、それならクラウドも危ないのではないだろうか?
『それならクラウドも危ないのでは?』
『僕は出来るだけ人混みは避けるつもりだよ。
端にいても代表して誰かが詳細をのべてくれるから聞こえると思うんだ。
でもブランの場合、端に居ても体高が低いからどうなるか分からないよ?』
確かに......
ギルドにいる男どもは180,90とかざらにいる。
そんなのの中に入れば俺は潰されてしまうかもしれない。
それに俺の上にサファイアもいるしな。
それこそ押されて落ちたらひとたまりもない。
仕方ない、付いていくのは諦めよう。
『分かった。じゃー、俺はまた森に行って狩りをしてくる。』
『え、今は危ないよ。話にあった魔物に会うかもしれないし。』
『大丈夫だ。ちゃんと目撃したところからは離れたところに行くから。』
『そう?じゃー、気を付けてね?』
それで話は終わり、クラウドはギルドへ俺はまた森へ行くことになった。
サファイアの意見を聞いてないが、道連れだな......
俺の背に乗っているのだから仕方ないよな?